向かい風に逆らって、地面にへばりつく1匹の蛾を見掛けた。

誰かが悪戯でもしたのか、その両肩に羽はなく、

飛ばずに地面を、歩いていた。

一心不乱に、歩いていた。


素敵だろう?

風に流されるだけの蝶々より、何倍だって素敵だろう。

流されるだけの存在に、価値が見出せるというのかい?


私達は、決して飛ぶことは出来ないけれど。

両肩には最初から、翼など付いていなかったけれど。

この足で確かに、

地面に立っている。

自分の意思の有無に関わらず、

私達は立っている。


羽はもう、必要ない。

へばりついてみせるさ。誰よりもみっともなく。

それが私の誇りと勲章になるだろうから。