ブログ管理人が都内に住んでいたとき、何回も使ったとても便利な羽田空港。
飛行機で西から羽田空港に戻るとき、太平洋側の千葉県房総半島まで回って戻るいつもの景色を見て、「帰ってきた」とホッと安堵していた。
いつも太平洋側から遠回りして羽田空港に着陸するのは、空港周辺の住民への騒音配慮だと思っていたけれども、後で、「横田領域」が約70年続いていることを知る。
戦後、約70年にわたり1都8県に跨る「空域」が占領されていると、元防衛事務次官の守屋武昌氏が解説。
今でも、米軍にとって横田空域の価値は薄れていない。1983年、総理大臣の職にあった中曽根康弘氏が日本列島を「不沈空母」に譬え、物議を醸した。冷戦下のソ連の脅威に対し、日本が米国を守る位置関係にあることを指した言葉だったが、米国にとっての日本列島の戦略的価値は現在も変わっていない。
現在では厚木および横田基地からB52のような空軍所属の爆撃機が朝鮮半島に出撃した場合、給油せずに北朝鮮上空まで行ける。しかし、軽量化で燃料容積をぎりぎりまで抑えているF15などの海軍の戦闘機は、そこまでの飛行距離はない。空中給油という手段はあるが、利便性を考えれば、日本海を航行する空母上で給油するのが最適となる。
横田空域は、1都8県に跨り、東京、埼玉、栃木、群馬、新潟、神奈川、静岡、長野、山梨。東京では、世田谷区・杉並区・練馬区の西域より西は米軍機専用の空域なので、米軍横田基地航空管制官の許可がなければ、日本の航空機は飛行出来ない。
埼玉県、群馬県では、上空のほぼ全域が横田空域。関東から新潟、長野にかけての広域に巨大な柱が連なっているようなもので、その高さは最高で7,000mあり、低いところでも2,450メートルある。
今回、政府は、東京五輪やパラリンピックに向けた羽田空港の国際線増便のために、横田空域を一部通過する新たな飛行ルートについて、米国と基本合意したと発表。新ルートで横田空域を通過する際は日本側が管制するという。
TBS News
横田領域内で、もしもオスプレイが墜落して、死者が出ても、事故の原因が日本側に公表されることはないという。
40年前(1977年9月27日)に横田空域内で起きた横浜市緑区(現青葉区)の米軍ファントム機墜落事件のときは、死者2名、重軽傷者6名、家屋全焼1棟、損壊3棟の大事故であったが、パラシュートで脱出した米兵2名は、現場へ急行した自衛隊機によって厚木基地に運ばれて、いつのまにかアメリカへ帰国。裁判で事故の調査報告書の公表を求めた被害者たちには、日付も作成者の名前もない報告書の要旨が示されただけ。
日本の航空法特例法の条文には、
航空法特例法 第3項
「前項の航空機〔=米軍機と国連軍機〕(略)については、航空法第6章の規定は(略)適用しない」と書かれている。「航空法第6章」とは、航空機の安全な運行について定めた法律で、「離着陸する場所」「飛行禁止区域」「最低高度」「制限速度」「飛行計画の通報と承認」など、航空機が安全に運行するための43ヵ条(第57~99条)の条文が、米軍機には適用されない。
羽田空港から西日本に向かう空路でも、離陸後に旅客機は急上昇して東京湾に出て、大きく上空を旋回し続け、西日本から羽田に向かう旅客機では、太平洋側の伊豆大島のあたりを通過して、千葉県房総半島上空まで迂回し、羽田に引き返すあの不思議な飛び方は、横田空域を避けて飛んでいたからだった。
[参考・引用]
「東京上空は半分、米軍のものー西から羽田に向かう旅客機が房総半島まで遠回りするワケ」デイリー新潮、2018.9
「米軍横田空域の通過、日本が管制 新羽田ルート、五輪前に増便へ」東京新聞Web、2019.1.30
矢部宏治:知らなきゃよかったー日本の空は「実はアメリカのもの」だった、現代ビジネス、2017.9.5