2001年6月に小泉内閣が「貯蓄から投資へ」を政府方針として明確に取り上げた。

日本人B層への耳障りの良いワンフレーズ・ポリテックス(小泉劇場)「聖域なき構造改革」といえば、思い出す人もいるだろう☟。

具体的には、閣議決定された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針概要(いわゆる「骨ぶと方針第1弾」)の「構造改革のための7つの改革プログラム」のひとつに明記。

「頑張りがいのある社会システム」を構築するため、従来の預貯金中心の貯蓄優遇から株式投資などの投資優遇へという金融のあり方の切り替えや起業・創業の重要性を踏まえ、税制を含めた諸制度のあり方を検討する

この後、金融庁が2001年8月に「証券市場の構造改革プログラム」を取りまとめる。

証券市場を活性化し、直接金融(含む市場型間接金融)の機能を高めることが喫緊の課題であるとされ、個人投資家の「貯蓄から投資への転換」を推進する。

2016年には、「貯蓄から資産形成へ」に言い換えられた。

これは、日本人B層が「投資」と「投機」の違いを理解していない可能性があり、「投資」を資産を積立てて長期的に増やすというイメージの「資産形成」に言い換えたと思われる☟。

現在の「NISA」や「つみたてNISA」「iDeCo」なども、この課題の解決策のひとつ。


では、どれだけ「貯蓄から資産形成へ」投資されたのかをみてみる。

家庭の金融資産構成  1992年   ⇨   2017年
現金・預金 ・・・・54.0%            51.1%
債券・・・・・・・   5.3%             1.3%
投資信託・・・・・・2.3%             5.8%
株式・・・・・・・・8.1%           11.2%
保険・年金 ・・・・26.4%            27.7%
その他・・・・・・・3.9%             2.9%
欧米主要国の資金循環統計(2000年11月日本銀行調査統計局)、2017年第4四半期の資金循環(速報)(2018年3月日本銀行調査統計局)

それほど「貯蓄から資産形成へ」は浸透していない。


金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2018年)でも、

元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる株などの金融商品の保有について
「そうした商品を保有しようとは全く思わない」・・・80.5%


2014年4月に民主党の安住純氏と自民党の麻生太郎氏が日本の60歳以上の金融資産のタンス預金化について話している☟。


「貯蓄から資産形成へ」というスローガンの下、NISAやiDeCoなどの投資非課税制度を国が充実させている背景には、「社会保障制度を今まで以上に充実させるのはもう無理なので、資産形成をサポートする非課税制度を充実させるので、皆さんも自分たちで頑張って資産を殖やしましょう」という意味があるだろう。