毒母に、年がら年中、いつもいつも、せかされていた。


早く!早く!!は、や、く!!!

モタモタしない!

ぐずぐずするな!

さっさとやれ!

グス、ノロマ…


なぜ、そんなに急いでるのか?

ちっとも待ってもらえなかった。


娘のペースに合わせることができない毒母。


少しでも、くつろぐことは許されない。

ゆっくり、楽しむことも許されない。


おかげで、今でも、常に焦っている。

何をしていても、早くしないと、って、焦る。


義母もなかなかの強烈キャラだったが、毒母ではないと思う出来事があった。


子供の保育園の運動会。

双方の祖父母が応援に来てくれた。


私が作ったお弁当をみんなで食べたが、私は子供たちのお世話に追われて、食べ始めるのが遅くなってしまった。

慌ててかきこんで食べる。

もちろん、毒母からの、早く!の呪いのせいである。

義父母の手前、さすがに言葉でせかされはしなかったが、私が食べ始めてから間もなく、片付け始めた。

いつものことである。

まばらになったお弁当箱の中のおかずを手際よく一つにまとめたり、ゴミを片付け出したのだ。


そして、無言の圧を感じ、いつものように、焦ってよく噛まずにかき込む。


それを見ていた義母が、


「りささんにゆっくり食べさせてあげなさいよ」


と、バシッと言ってくれたのだ。


危うく泣きそうになった。


こんなことは産まれて初めてだった。


待ってもらえるんだ。私のペースで食べてもいいんだ。

迷惑かけても、いいんだ…


涙をこらえて、少しペースを落として食べた。


しかし、次の瞬間、決まり悪そうな毒母の顔が目に入り、感涙に浸る間もなく、毒母を傷つけてしまった、私のせいだ、という思いで頭がいっぱいになり、意識は毒母へ…

再びペースを上げて、食べ終えた。


せっかく庇ってもらえたのに、それを素直に喜ぶ隙を与えない毒母。


義母は、おせっかいで、話が長くて、時々ヤレヤレって思ってたけど。

イヤな思いもしたけれど。


それでも、本当のお母さんより、かわいがってくれた。優しくしてくれた。

それだけで、十分である。

他のことなんて、全然大したことではない。

それぐらい、愛情というものに飢えていたのだ。