二十年近くも前のことです。
PLには、劇団カッパ座というぬいぐるみ劇団があり、毎年全国公演を行っております。私がいた岡山の教会でも毎年行っており、会員さんが中心になってボランティアで、チケット販売からありとあらゆる準備をしていました。
その前の年は、活動も定着してきたということもあり、チケット発売と同時に売れて、二週間後には、完売してしまいました。
それで、今回はと、二回公演に臨んだのでした。去年の調子で売れれば問題ないと考えていました。
ところが、どうも、去年とは調子が違うのです。おかしい、おかしいと思いながら時はすぎていきました。
これだけみんな頑張っているのになぜ、結果に結びつかないのだろう?
そんなことを思う日々でもありました。
とうとう、公演一ヶ月前になりました。私の心の中には、無理してでもやるほうがいいのか、撤退したほうがいいのか迷っていました。
毎日の祈りも、「ベストの決断が最善のタイミングでできますように」という内容に変化していました。
そのとき、私が考えていたのは、どちらが意欲になるかということでした。ですから、やることでみんなの意欲が出るのなら続行、やめることで意欲が出るのなら撤退です。
そんな思いを持って、会議に臨みました。
みんなの発言を聞いていました。一回の公演は、60パーセントの入りで、もう一回に関しましては、200席くらいしか埋まっていませんでした。これ以上、必死で頑張るという戦意も感じませんでしたので、「これは、撤退がいい」と腹を決めました。
しかし、あのときの状況では、続行も大変ですが、撤退も大変でした。
そして、提案しました。
それまで、重い雰囲気がありましたが、会議の雰囲気が変わりました。
結局、チケットを買われた人には、連絡をして、もう一回の公演に変更していただくか、お預かりしているチケット代金を返還するということにしました。
その結果、一回の公演は、成功いたしました。
あのとき、ターニングポイントを迎えたのは事実です。
なかなか、撤退をするということは、難しさもあります。やはり、捨てる勇気を持たないとできなかったと思います。PLの教えで「捨てて勝つ」という心境を学ばせていただいていたから決断できたとも言えます。
しかし、不思議なもので、この一件は、これで終わりではありませんでした。
それから、数ヵ月後、少し離れた総社市に住む踊りの師範の会員さんから「はじめての踊りの会を市民会館で行うので見に来てほしい」とお誘いを受けました。
とても、立派で格式のある踊りに感動を覚えましたが、もう一つ、思ったことがありました。それは、この会館、席数も1000席あり、カッパ座公演をするにはぴったりということでした。
すぐ、スタッフになりそうな方7、8人にその話をしました。
「先生、また冗談を」
本気にはしてもらえませんでした。それで、前の年、この市から公演に参加された人の数を調べましたら14名、成功ラインを下げて、「去年は、14名の参加だったのだから、あの会館でして15名集まったら成功じゃないですか」と詭弁だったかもしれませんが、話しました。
でも、みんなの気持ちが和らいで、「それでいいのならやりましょう」ということになりました。
その後、スタッフ会議でみんなの話を聞きますと、
「15名でカッパ座に来てもらうのは申し訳ない」という話になり、目一杯頑張られ、満席になったのを覚えています。
あれから毎年続いていて、今年も総社公演が行われたことを風の便りで耳にいたしましたが、この展開は、撤退する決断から生まれたものだと思います。「捨てるということは、新たに何かが生まれることでもある」そのときに、身を持って教えられた教訓でした。
「この撤退が岡山のカッパ座公演にとって良いことになるように」
そんなことを祈っておりました。
もしも、そんな思いがなかったら、あの会館を見ても公演をするのにピッタリとは、思わなかったでしょうから。