やっとのことで入手したギミックだらけのこの革ジャン。ごつくてヘビーで着るの大変といわれるが、FPW-1ハードステアと比べればはるかに楽なもん。肩回りがゆったりしたバブルの頃によくみられたブルゾンのようで、着るだけであのころを彷彿とさせた。FPW-1と異なり、購入後すぐにバイク乗っても全く支障がなかった。しかしながら許せないところがあったので、その修正ついでに見てわかる通り若干の手直しを加えてある。

 

 前傾の強いバイクだと、ごつい裾ゴムが悪さして背中が出やすい。しかしながら、佐藤信也氏が当時の愛車、V-maxの殿様乗りなら無問題だったはず。実際、ギャングパーツのハンドル付けて殿様ポジション化したCB1300なら全く問題なし。ハーレーやクルーザーにも合うと思う。ただし風を受けるとゆったり目の肩回りが風をはらんでふくらんで、まるで空調服のようになる。同社のROIDのような背抜きをつけると良いかもしれない。

 

 オリジナルの佐藤信哉氏の首が細いのか僕の首が太いのかはともかく、首元のフラップが閉じられず、全く機能しなかった。大きめのフラップをつくるか釦の位置変更か、カドヤさんにおまかせとすることとなった。

 

 その結果、釦増設と相成った。ただ縫い付ければ良いというものでなく、オリジナルの釦縫製同様、襟の内側に針を貫通した縫い跡が無い。なんと襟の縫い合わせを一度ほどいてから縫い付けたとの事。大き目フラップをつくる方が楽な気がしていたのに、なんたる職人根性!

 襟にはなんと針金が入っていて、襟の変形や走行風でのバタつき防止になっている。襟がヘンな形になっていても自然には直らないので、文字通り常に襟を正して着用すべしということなのでしょう。

 襟の針金は経年で折れる事があって、その修理にはやはり襟の縫い合わせをほどく必要があるはず。カドヤの職人にとってはこの辺をいじるのはむしろ造作ない事だったのかもしれない。

 

 左胸にはサングラスをかけるポケット。

 

 腹まわりには腹巻というか、べスト様のベルトがある。この名称はそのものズバリ「ハラマキー」と呼んでいたはず。左に小さなポケットがある。

 

 ハラマキーの締め具合は、内側のベルクロで調整可能。吊るしのFPW-1

は韓国製だったが、これはしっかりMade in Japan。

 

 右手側のポケットは2つあって、外側はハンドウォーマー、内側はベルクロポケットとなっている。

 

 左手側も左右対称な処理をされているが、こちらは釦とベルクロを併用したグローブホルダとなっている。

 

グローブをはさむとごらんの通り。

 

 

 グローブホルダと共に面白いギミックがこれ、左袖口の時計ホルダ。セイコースピードマスターにしたいところだったが、革ブレスでないとだめなので、中国製SEALANEの斜め文字盤。

 

 時計の革ブレスを3か所のベルクロで止めるだけ。1か所はかなり幅広で、ベルクロは周辺部のみ。こんなホルダでも意外としっかり取りつけられ、100キロ出しても時計が風で飛ぶ気配はなかった。ベルクロが経年で張り付きが悪くなる事が考えられるので、実用にするなら飛んでも惜しげのない軽いプラ製の安い腕時計にした方が良い。これをバイク乗車で使う場合、グローブは袖のなかに入れることになる。ウインターグローブを使う時期は、このギミックは使えない。

 

 ゴッドスピードさいだいのギミックは、ヘンな位置にあるエポレット、いや、全開クレてもここ握ればタンデムの彼女無問題革ハンドル。鋲打と縫い付けの2段構えのうえに、この裏にプロテクターかと思うような分厚い革が一本通っていて、確かにVブーストが動作してもここを握ればハンドルが引きちぎれる事は絶対にない程の強度を確保している。むしろそれをやられちゃうと、運転している彼氏のアクセルが閉じられなくなる弊害が考えられる。

 また、万が一の時に救出するためのハンドルとしても十二分に機能すると思う。そんな目には遭いたくないが。

 

 タンデムの彼女用?ポケット。しかしここにあまりものを入れてふくらんでいるとかっこ悪いかも?

 

 

 首まわりの修正のついでにやけくそで盛ったギミック。ある古着で見かけたものをパクらせてリスペクトさせて頂いた。左袖のコインポケットのサイズは特に指定しなかったものの、袖から外した腕時計を収納するスペースがある。ここのファスナーは、通常ボールチェーンが多いが、背の彼女ポケットと同じものにした。これはチャラチャラせず大正解だった。その上のタバコ入れ兼ペンホルダは、僕はタバコ吸わないので今のところ使い道がない。これもスマホ入れられるようなサイズに指定することは可能だったが、デカいとかっこ悪そうだったので、タバコサイズにしといた。

 こういったカスタムを新品注文のついでに付けようとしても、カドヤとしては出来ない相談だ。あくまでもカタログ通りの品を引き渡すしか出来ない。プロデュースした佐藤信哉氏に対するメーカーとしての矜持だと受け取った。これはツバサコーポレーションの一件を知ればその気持ちは分かる気がする。今回のような取って付けるような手直しは出来ても、革全体の色指定はまず無理。ワンポイント程度の部分的にしか出来ない。今回、首回りとともに左袖のカスタマイズ、いや手直しはあくまでも使用における傷が許せない故のやむを得ない仕儀なのである(汗)。

 

 若い頃憧れていたとうじの値段は78000円プラス消費税3%。これでもあのころの安月給では手が出なかった。それが今や14~15万プラス消費税10%。

 

 …、と思いきや、19万?しかしながら、カドヤのHP上では、14~15万。これはサイズオーダの値段という事なのでしょう。今までサイズオーダーすら出来なかったのが出来るようになった模様。僕の体型だと吊るしサイズMで首以外はドンピシャリだった。人によっては袖が短い為、街ジャンとしてしか使えないなんて聞いたことがある。袖を短くしたり足したりするような手直しは一応可能だが、足すと継ぎ足しの縫い目が出来てしまう。サイズオーダーならそのような事がない。

 14~15万、19万というと、ショットやルイスレザーのホースハイド茶芯と良い勝負。それらに比べて縫製がはるかに面倒くさそうなこの革ジャン、今や19万でもバーゲンだとすら感じる。特にあの時として問題になる裾ゴムシャーリング様の縫製や出来具合は、みているだけで惚れ惚れする。

 

 このような革ジャン、デビュー当時からは値上がりしたとはいえ今でも注文出来、修理やある程度のカスタムを受け付けてくれるカドヤ様に、深く敬意を払いたい。