Rocky's fighting reportー28年前のこの日…
あれからもう28年たつのか・・
28年前のこの日、私は両国国技館の二階席にいた。そしていまだに語り継がれる壮絶な闘いの証人の一人となっていた・・
その闘いは組まれたときから煽られていたー
「四年半の間、このカードは黄金になった・・」
関係者によればこのカードこそが両者の所属団体の今後の浮沈すら左右しかねない、いわば大博打だったという。プレッシャーも相当なものだったはず・・まして「この闘いにかけていた」というからには、大凡戦にでも終わろうものなら大ダメージ・・凋落すら免れられない。だがリアルファイトを謳い文句にしてなおかつ実際にそのスタイルを貫いている以上、関係者はもちろん、ファンまで含めて皆が満足、納得のいく結果になるとも限らない。そういったことがすべて重なりあっていただけにこの闘いを取り巻く状況には様々な葛藤や足枷があった・・そんな中理想の闘いを終了まで貫き通すことは本当に困難なのだ・・それだけに期待が大きい反面、心配や不安も尽きなかったのだが・・
試合タイムは1分51秒・・今から話すのは男と男の1対1の果たし合い・・
1分51秒というのは男同士の闘いとしては決して長くない。
まして実力の開いているもの同士がやるならともかく、この時点でともにトップアスリートとして登り詰めた男同士の"殺り合い"だ・・もっともこれが相撲だったられっきとした長丁場の闘いだったかも知れない。だが両国でやっていたとはいえ、これは相撲の取り組み合いのタイムではない・・となると、長丁場どころか当時なら大ばやりだった「秒殺」という言葉に括られる類いのものになる。
だが・・「1分51秒」もあれば十分だった・・
そして、今もこれを超える「大一番」にはそうそうお目にかからない。なぜならその"たかが"と言ってもいいような「1分51秒」という短い時間の中に闘う男たちが醸し出す"色気"=闘争心、意地、プライド、勝って得るもの・・負けて失うもの・・そのすべてが凝縮され、それらのすべてを目の当たりにすることができたからだ・・・
先に入場してきた男は・・・中村あゆみの曲に乗って出てきたのはいつも通り・・だがこの日に限ってはそれはそこまで。
いつもなら頭からすっぽり被る黒いタオルがこの日はこの男の両肩にかかっていた。湘南暴走族を思わせるリーゼントが会場を見渡す・・そう、この男はこの日、会場のファンの顔を全て見たかったのだ・・
直後にもう一人の男がリングへ・・
観客を全て見渡す程・・その意味である部分余裕を持っていたとも言えるリーゼントの男に対して、奇しくもその男と同じ黒一色のコスチュームに身を包んだ長髪の男は物凄い形相で闘いの輪=リング=へ・・
長髪の男はリーゼントの男が登場したとき・・いや彼の入場テーマソングを聞いた段階でその男の殺気をビンビンに感じていたという・・「これで思う存分闘える、やれる!!」そう思ったら喜びで涙すら流れそうになったという・・
試合が始まったー
とその途端、長髪の男がいきなりスライディングキック!
と、仕掛けられたリーゼントの"風"は・・一瞬たじろぎながらもすぐに凄まじい飛びげりにー
アクションが大きすぎてヒットしなかったが、これだけで会場は完全にヒートアップし、戦士たちと観客がひとつになった。
男達は闘いの手綱を緩めない。いやそれどころか、さらに攻め方が激しくなった。掌打の打ち合い、激しい打撃のぶつけ合い、魂のぶつけ合い、意地の通し合い・・
リーゼントが馬乗りになろうとしたところで長髪の男が下から両足で蹴りあげた。"猪木ーアリ状態"といわれる態勢に・・
そこで攻めあぐんだリーゼントが吠えた「うぁあああ~ こいオラ、オラこいオラァ~~」
長髪の男も負けていない。さらに激しい形相でリーゼントを潰しに向かっていく・・この間にして1分もかかっていない・・まさしく目まぐるしい、凄まじい攻防・・
ようやく両者が組みついた。グラップリングの攻防となり、両者が密着したのはこの試合初めて。
そういえばいつもなら得意の寝技を中心に冷静に試合を組み立てるリーゼントの男がこの日は完全に"肉食獣"と化していた。いつもなら余裕を持ってじっくりと獲物を"料理"するこの男が・・この日は完全に相手の命を"食いちぎろう"としていた・・
開始直後のスライディングキックでペースを乱されたのだろう・・いや、そう見る向きも多いものの、やはり団体のトップを意識するこの男にとってその長髪の男は脅威であり、だからこそ潰さなければならない・・この男を潰さずして今後の自分の栄光はあり得ないー
だからこそ本気で牙を剥いた・・そしてそれを迎え撃つ長髪の野獣・・
その状態が少し続いたあとリーゼントが長髪獣を投げようとするも、失敗・・
リーゼントは上の位置をとられた・・やはりこの短時間でもこれだけ動けば消耗は激しかったか・・
一方、長髪の男にはチャンス到来!
必死に顔面を中心にガードするリーゼントの男・・
これに対して空いたボディーに長髪の男がパンチを炸裂。一発、二発・・リーゼントの男がたまらず背中を向ける・・
そこに一瞬のスキがー
そして長髪の男はそのチャンスをものにしたー
一気に首を締め上げるー
裸絞めが完全に極まったー
もう時間の問題だー
リーゼントの男は絶対にギブアップをしないー
だがとうとう白目を剥きはじめたー
危険を察知した立会人=レフェリーが
試合を止めたー
敗者は気絶して落ちていたー
一方勝者は感極まって泣いていた・・
レフェリーが勝った長髪の男の右手を上げたー
試合前の期待、そしてそれと背中合わせの懸念ーそれらは全て大きな感動となって観客のーいや会場の雰囲気全てに跳ね返って来たのだった。
今日はちょうどその28年後となったのである。本当に早いものだ。
そしてあの日の大きな・・魂の震動ーそれはいまだに私の中で大きく生き続けている・・・
PANCRASE "ROAD TO THE CHANPIONSHIP" 94年10月15日=両国国技館
メインイベント=30分一本勝負
船木誠勝ー鈴木みのる
1分51秒 TKO 勝者 船木誠勝
※決まり手は胴締めチョークスリーパー
レフェリーのストップ宣告によりTKO決着。