神宮大会制覇に相応しかった「慶応の勝負強さ」 | スポーツを語ろう-ZE!!

神宮大会制覇に相応しかった「慶応の勝負強さ」

記念大会でもあると言われる今年の明治神宮野球大会は慶應義塾大学が全国制覇を果たした。私自身も準決勝を生観戦し、決勝戦もネットで経過を追っていた。2試合のみしか見ておらず、あくまでその2試合を見た限りでの考察ではあるが、なぜこの大会での慶応が強かったのかがはっきり見えた気がする。この大会の参加チームに限らず、勝てるチームは「チャンスを確実に生かせる」、そこで差がつくということだ。議論にして簡単明瞭だが、これがなかなかできないチームが多い。

この大会をみていても、1点は確実にとれる、だがそのあとが続かない、1点をとってなおも得点圏に走者がいるなど優位に立っているのに、その後あと一本が出ず安易に同点、逆転を許してしまったチームも多々あった。とれる点は確実にとる、しかしそれは決して簡単なことではない。作戦に工夫がみられなかったり自滅に近い拙攻を繰り返したりと言うのでは論外だが、攻撃側に気負いや重圧があったり、また強い気持ちをもっていてもディフェンスサイドが技術や執念で勝っていればチャンスでもそうそう点がとれないことはよくある。しかしその点今回の慶応は見事だった。準決勝でも着々と加点してはスムーズに試合を運んでいたが、象徴的だったのは決勝戦ではなかったかと思われる。

初回、下山が一死からヒットで出塁していたものの三振を二つとられて二死一塁。関大先発・森の好調ぶりが球場全体を支配していたと思われるが、そこへ4番郡司の先制の一発。自軍の先発高橋佑樹にとっては登板前から大きな援護点になったに違いないが、その後7回一死まで失策と四球の走者が2人ずつ出ただけで無安打に抑え込まれていただけにこの2点だけでも気持ちの上ではかなり違ったはずである。

そして8回。関大先発森に疲労が出始めたか、それとも森の球に目が慣れたのか慶応は無死からの連打で森を攻略すると代わった肥後から郡司のタイムリーで待望の2点を追加。しかし問題はここからだ。

その後もツーアウト二、三塁。2点を追加した時点で4-0とリードは広がっている。だがこの時点ではおそらくまだ慶応のペースは絶対的ではあるまい。とりわけ援護点をもらったことでその裏の味方の先発・高橋のピッチングにいくぶんかの変化が出ることは十分に考えられる。しかも高橋も8イニングス目に入るからこちらも疲労や相手打者の対応力が懸念されるところ。決して4点リードがセーフティリードとは限らない。それに点をとったあとの更なる追加点。これがとれるかどうかは結構大きな問題だ。傾向的にチャンスでとれなければ逃したチャンスのあとは大概ピンチが来て、しかもそのうちのいくつかは最悪逆転か、あるいは数イニングス後の逆転の呼び水となるかのような追撃点をとられることも多々ある。実際この大会でも前の試合での関大vs東海大の試合で終盤7回に6-4と逆転に成功した関大がその後8回には1点差に迫られ、9回に追いつかれてタイブレークに持ち込まれた、というケースもある。
だからとれるときには着実にとる。これができるかできないかはかくも大きいのである。このケースにおいてもその後をきっちり抑えれば故障上がりの肥後の調子も前日までは悪くなかっただけに、関大にしてみれば「肥後さえ踏ん張ってくれればまだまだいける!」かえってムードが高まった可能性だってある。

二死二、三塁。バッターは瀬戸西。
4-0のままで次の関大の攻撃か、それとも慶応に追加点か?チャンスが大きければ大きいほど試合の行方も相当違ってくる。攻撃する慶応、守る関大双方に襲ってくる重圧だってその分重くのしかかってくる。両者にとって一番困難な局面だろう…

答えを出したのは、慶応だった。
瀬戸西の打球はセンターオーバーの三塁打!
残り2イニング、慶応先発の高橋の出来を考えればまだまだ不可能な点差ではないにしても逆転には相当厳しい…2点差と違いワンチャンスで覆せる点差ではない…

チャンスをことごとく生かした慶応に対してその裏関大もついにそれまでパーフェクトピッチングを披露していた高橋をとらえて連打で無死一、二塁。流れを呼び戻すには絶好のチャンス。
ところがこのチャンスが次打者の併殺で潰えてしまった。攻撃側が功を焦ったのかディフェンス側がピンチにも冷静に対応したのかは知らないが結局関大はこの回無得点。それまでリードこそ許しながら互角に戦っていたようだが、ここで初めて慶応との明確な差が出てしまった。直後の9回表、まさしくピンチのあとはチャンスあり。二死からヒットと四球でまたしてもチャンスを掴んだ慶応は代走から5番に入っていた渡部のタイムリーツーベースでダメ押しの2点追加。試合を決定づけた。

チャンスを生かせるかどうかというのは状況にもよる。先に述べたように、相手のメンタリティーの強さやディフェンスの堅さとの兼ね合いもあり、チャンスを逸したからといって必ずしも勝負弱いとか、拙攻であるとかとは限るまい。ピンチに追い詰められた守備側には当然大きな危機感がつきまとうが、攻撃側にも半端ならぬ重圧が襲う。
しかしそれだけに、そのチャンスを生かせる、ピンチを凌げるというのは大きく、強いのである。
これを決勝戦にして実践して見せた慶応。
王者に相応しい勝利で、大久保監督の同校での最後の采配となるこの試合をまさしく最高の形で締めくくり、有終の美を描き抜いて見せた。

Rocky