松坂大輔の再起の鍵となりそうな彼のある一面と傾向 | スポーツを語ろう-ZE!!

松坂大輔の再起の鍵となりそうな彼のある一面と傾向

ボストン・レッドソックスの松坂大輔が日本時間10日のインターリーグのワシントン・ナショナルズ戦に先発登板することが決まったことは先刻述べたとおり。

手術前から不振続きだった松坂だったが、改めてさかのぼると1年目にして15勝(13敗)、2年目にも18勝(3敗)と、防御率が悪く不安定で味方の援護に恵まれた部分もあったりはしたものの元々それなりの結果を出しており、ある程度の条件を揃えて持ち味をフルに出せればそれなりの数字が残せることはこの結果からでも十分証明できているのである。

何より節目節目の試合では実は抜群の勝負強さを発揮している。とりわけ鳴り物入りで騒がれながら登場した甲子園初戦ではそのプレッシャーをものともせずに持ち味を遺憾なく発揮して当時スピードガン導入後では史上最高時速をマークするなどネット裏のスカウトを驚かせた。その後の甲子園での活躍などここで詳しく語るまでもあるまいが、プロ入りしてからもオープン戦こそ打たれたものの本番のレギュラーシーズンデビューでここでもいきなり時速155キロのファストボールで当時脂の乗っていた日本ハム・片岡の胸元に堂々とのけぞらせるなど新人らしからぬふてぶてしさをみせてその試合で初勝利をあげるとシーズン終了までに16個の勝ち星(5敗)を積み上げこれまた堂々の新人王…しかも新人であったことなど忘れられていてもおかしくないほど文句なしの内容だった。そしてメジャーデビューも白星…
さらにつけ加えれば、イチローとの初対決でも何と、いきなり3三振を奪い完全に牛耳った。何しろあのイチローが初対決にして一目置くのだから。以来ライバル関係も続いている。

こうしてみると、松坂は必ずと言っていいほど大事なシリーズの"初戦"をモノにしていることがわかる。そうそう、思えば松坂はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも二大会連続MVPに輝いているが、全米にとってはもっとも身近だったこのときの活躍が後年のメジャー移籍の伏線となったといってもいいほどで、そこで米球界関係者の目に留まったことがあの高い評価でのレ軍入りの決め手の一つとなったことを考えると松坂はこの時点でもメジャー移籍への"先制点"を叩き出していた、ともいえるだろう。私が松坂を「節目節目では勝負強さを発揮できる投手」と評するのもそこに原因がある。デビュー戦という誰もがそれまで経験したことのない緊張と独特の雰囲気に幾分飲まれるような試合ほど地に足をつけてしっかり自分の実力をアピールできる投手などそうそういるはずもないのだから、その数少ない初戦の違和感をエネルギーにできるピッチャーとして松坂の存在はかなり稀有なものだと感じている。

今では押しも押されもしない、日本人投手代表というべきあのダルビッシュ有でさえシーズン初戦は不本意なピッチングしかできず、そのせいもあってファンからはスロースターターという見られ方をされている。私は…松坂とダルビッシュではおそらく試合に取り組む上での気の持ち方に違いがあるのではと感じている。
あくまで個人的な印象だが、ダルビッシュという男は勝敗よりも自身のパフォーマンスにより精度の高いものをひたすら追求するうちに気がついたら今の姿になった、という気がしてならない。とにかくまず自分のベストパフォーマンスをしっかり演じきることが第一義で、それさえできれば勝ち星は勝手についてくる…そう思って試合に臨んでいるようなイメージがある。そうだとすれば典型的な"求道型タイプ"だと思う。
私がみた限りという条件はつくが、ダルビッシュは過去試合に負けてもそれ自体あまりに悔しい感情を出していたのをさほどみた覚えがない。もちろん実際の心中は知らないが、3年夏の甲子園での準々決勝で千葉経大付に松本啓二朗(現啓二朗のち横浜入り)に三振に切ってとられて最後の打者になっていたと記憶しているが、実に清々しい笑顔…
あのときも「力は出し切れた…」という手応えがあったからそういう表情になったんだと思うが、これ一つをみても、もちろんチームの勝利も意識してはいることだろうが、ダルビッシュの場合まずは「自分がイメージ通りのプレーをしっかりできること」がありきで、それができさえすれば勝利の方がついてくるし、それで負ければ仕方ない、という考え方のように見受けられる。ただ、そのために日頃の努力はもちろん、技術の向上のための研究などからきた進化が不可欠で、勝敗以上にそれを試合で出せなければたまたま味方の援護などで運良く勝てても「バックに救われた勝利」であるに過ぎず、同じ勝ち方でもどこかバツの悪い勝ち方…となってしまうのだろう。メジャーでのデビュー戦での降板時のファンの歓声に応えられなかったことにもそうしたことが背景の一つにあったからなのかもしれない。そうだとすればダルビッシュをみていてますます「勝敗も大事だけど、それ以上にプロセス」…そう考えるのが自然なようにも思えるのである。

これに対し、松坂はどうか。
例えば身だしなみ。いや、いい悪いではない。ただここでも二人のカラーの違いを正直感じている。
髪型など、ダルビッシュが茶髪にして伸ばしている以外特に特徴的なものや大きな変化を感じないのに対し松坂の方は私がみる限り適当なサイクルで髪型に大きな変化が多々確認できる。髪の毛の色をかえたかと思えばみるときによっては長さに至るまでがガラッと違う。数字より質という感じのダルビッシュに対して松坂はよくも悪くも"いいかっこしい"。そしてこの"いいかっこしい"の一面こそが松坂の勝負強さを形作る重要な要素の一つのようにも思える。常に高みを目指すダルビッシュが「初戦はとりあえず試運転レベルでそれなりのものがでればいい」といったようなスタートからシリーズが進むにつれてドンドン加速するような形であるのに対し松坂の投球には落ち着きは感じるものの初戦以降は比較的マイペース。だが先に述べたとおりその初戦がべらんぼうに強い。
つまりこういうことではないだろうか。「初戦で思い切り相手に威圧感を見せつけてやろう」それさえできればその威圧感は当然後々の試合にも生きる。だから初戦での松坂は特にリキが違ったピッチングを披露するのであり、しかも周囲にのムードにも動じないからまんまと自分のパフォーマンスをやりたいだけ演じきって初勝利をものにしてしまうのである。
もっともおそらくそこでホッとするのか変な達成感でもあるのかその後は緊張感のなさが災いする部分もあるのだろう。プロ入りしてからの松坂は1勝したあと連敗し、「そろそろ勝てないとヤバいな…」という頃になってまたしっかり勝って体勢を立て直し、それを糸口にそこから勝ち続けるという傾向が見られるように思う。ここで結論。松坂はこれまで挙げてきた「最初からオレの持ち味を見せつけていいカッコしてやろう」「さぁそろそろ勝てないとヤバいし、本気モードでいくか」というケースを含め、本人が勝ちにいくべきと判断した試合(もしくはその相手)には無類の勝負強さを発揮するということだ。いい例がこれも既に紹介したイチローとの初対決ではないかといえば納得してもらえるだろう。

要するに、復帰戦となる6月10日の登板に向けて、「絶対に勝ちにいく」という気持ちをどれほどの高いレベルで意識できるかというのが最重要ポイントになるのではということである。いうまでもないことだが、その意欲が強ければ強いほど、少々の障害があっても冷静に対処し抜いて最後まで投げ抜くのではないかというのが第一だろう。もちろん失敗すれば次の仕切り直しをどう考えるか、あるいは残念ながらそのまま落ち続けるか、だが…
そして付加的要素として、長いこと悩まされてきたメジャー特有の固いマウンドや滑るボールの皮、さらにここ数年乱れがちだった制球面についてどういった対応の変化のあとが見られるかだと思う。後はバカの一つ覚えのように球数制限に固執したマニュアルボケした前任者と違って日本野球を知り尽くしたボビー・バレンタインの采配をどう生かすか…などもある程度は左右するかだろう。
だが、一番の条件は、いかに松坂がこの試合で「いいかっこをしてそれを周囲にみせたがるか」だと思う。
だからあまり変に大人になりすぎず、とにかく自分の「いいカッコ」を印象づけるためにひたすら勝つこと、そこにどれだけ固執しきれるかだろう。それには必要以上に大人になってはいけない。大人になりすぎてはそういうピッチングはできない。あくまで「いいかっこしい」のやんちゃな松坂に徹しきること。それがどれほどできるかが最大のポイントとなるのではないかということだ。