智弁和歌山・高嶋野球の今後を憂う。 | スポーツを語ろう-ZE!!

智弁和歌山・高嶋野球の今後を憂う。

沖縄・興南高が初優勝を果たした今年の選抜高校野球。かつて何度も最後の決勝まで甲子園を沸かせた智弁和歌山がこの大会でも興南高を向こうにまわし、敗れはしたもののそこそこの健闘をして意地をみせた。
とはいえ、今年も昨年夏に続き準々決勝進出を逃した。くじ運などの問題もあるとはいえ、2回戦、3回戦どまりで終わるのと準々決勝(以上)にまで進出するのとではその印象はかなり違ってくる。
その、俗に“ベスト8”“8強”と言われる準々決勝に甲子園では優勝経験も豊富なあの智弁和歌山が長らく進出できないでいる。正確なところは調べていないが、おそらく2000年夏に全国優勝を果たして以来上位進出は果たしていまいし、語り継がれるような名勝負を演じたという話もない。何よりあの智弁和歌山にしては少し影の薄いイメージすら否めない気がする。それは一体どのあたりからくるのだろうか。
それでは、まず高嶋仁監督の智弁和歌山野球の特色から考えてみよう。とにかく智弁和歌山といえばあの「打棒」。これまでどれだけの好投手がこの手のつけられない打棒の前に屈してきたことか…94年横浜高・矢野英司(元横浜他)、97年平安高・川口智哉(元オリックス)、2000年柳川高・香月良太(オリックス)…とにかくその打線の破壊力は特筆ものだ。そして今例として挙げた年にはいずれも全国優勝を果たしているのだから大したものだ。
だが、私には一つ気にかかることもあった。なぜならそれだけの実績を修めていながら、その割にはプロで活躍する人材が少ない。少なくとも各球団のレギュラーを張っている人間が意外なほど少ないことにお気づきだろうか?全体的な人数でもPL学園や横浜高のOBあたりだと籍を置いているというだけで20人以上いるという。しかもうち何人かはレギュラー。さらにメジャーに籍を置いた者さえあまたなのだ。それに比べれば智弁和歌山出身のプロ野球でパッと名前の出てくる選手って誰がいる?そうはいまいだろう。
なぜかくも違うのか、ここで結論を言ってしまうと高嶋監督は打撃面ばかりを重点的に強化したツケがきたのではないかということである。
昨年夏、私はアメーバブログの自身のブログにて「今後の高校野球においては投攻守全てにおいて満遍なく標準以上の力がないと勝てないのでは、という思いを強く抱いた」といった内容のことを書き記した覚えがある。実際昨年夏のケースであれば準々決勝に残ったチームは全て投攻守穴のないチームであり、とりわけ決勝に進出した愛知・中京大中京と新潟・日本文理などは決勝進出を果たすにふさわしい実力を有していたばかりでなく、実際の試合でも過去のどの試合と比較しても見ている者に最後までその結末を予感させないだけのスリルを演じきってみせた。とりわけ大差をつけられていながら1点差にまで迫った最終回の日本文理の猛追には凄まじいものがあり、最後のサードライナーなどは抜けていれば間違いなくその後の展開が変わっていただけに、それを阻んで本当に寸でのところで逃げ切った中京の鉄壁の守備には感服するものがあった。この「ノーサイド(ラグビーでいうところの試合終了)」のシーンなどはこんな壮絶な試合の中でも誇張抜きで象徴的ですらある。それほどまでにみていた人間にとってこの最終回はかなりの痺れを禁じ得ないものがあったはずだ。
だがそれも両チームの投攻守のバランスのよい完成度が織りなしたものである。
対照的に、投攻守のバランスを欠いたチーム…特に守備の破綻をみせたチームはたとえ伝統のある実力校であっても上位進出は果たせなかった。PL学園が守備の破綻から県岐阜商にリベンジを食らい上位進出を阻まれたのはPLの全盛期を知る私にとっては衝撃的ですらあったが、智弁和歌山も札幌第一を相手にザル守備ぶりを発揮し(しかも記録に現れない失策も多かった)好投手岡田(中日入団)を擁していながらベスト8入りを果たせなかった。
毎年投手陣を含めたディフェンス面に脆さがあるのもこのチームの特徴だがそれを補って余りある打力でカバーすることでその底力を遺憾なく発揮してきた。
荒削り、大味とも言えるスタイルだが、そこがまた高嶋監督の大らかさ、スケールの大きさを感じるところがあるだけにそんなスタイルがあってもいいと思う。ただこの2大会ではお粗末すぎるほど守備面での拙さが響いているだけに、そこに高嶋野球の転換期がちらつくような気がする。相変わらず打棒には目をみはるものがあるだけにあまりにも雑な守備の破綻ぶりで試合を落とし続けるようではもったいなさ過ぎる。また、先に述べた甲子園での実績の割にプロでの人材という部分でのインパクトがもう一つ足りないのもそうしたことが響いていないとは限らないのではないだろうか?よく“守りのリズムから攻撃に繋げる”ということが言われるが、必ずしもそれに当てはまる選手ばかりではないにしてもプロのステージではやはり守りのいいプレイヤーには打撃への対応にもより一層の確実性を身につけている者が目につく。
いわば「プロへ人材を送り込む」という意味でもディフェンス面の強化はこの学校の場合、せめてもう少し考えなければならないように思う。
はたして高嶋監督はこういった部分に着手するのだろうか。
そこが智弁和歌山・高嶋野球の今後を大きく左右するような気がしてならない。たとえ完璧でなくても墓穴を掘るような守備面の雑さを防がないと、今のままでは単なる“バッティングバカ”で終わってしまう。