“世界一性格の悪い男”の意地と反骨心 −4《神戸での決戦》(前編)
93年11月8日神戸、いざ決戦のリングへ―
白いコスチューム…白いレガース…ニーパットがついてない点を除けばあのときと同じだ…
そして白いタオルを頭からかぶってリングイン…手には“大事な人からもらった”というバンダナを握っていた…その様はこれから死地に赴く戦士が持つかのような悲壮感すら漂っていた…そしてその両腕にはグローブが装着された。
そして、モーリス・スミスが入場。こちらはパープルの派手なガウンにサングラスの出で立ち。余裕綽々の振る舞いはみのると対照的ですらある。
モーリスの入場を確認するやみのるの目の輝きが変わった。
その目は…まさにこの世のものとは思えないほどぞっとするものだった…この視線ではモーリスが嫌悪感を抱くのも頷ける…そしてみのるはそのおぞましい視線をモーリスから離そうとしない。これだけでもみのるの“打倒モーリス”への執着心が半端ではないことが伺われる。ルール面で絶望的に不利な立場に立たされているにも関わらず、である。ただ、嫌悪感を隠せないながらもモーリスにはそれが単なるこけら脅しにしか見えないようである。だからモーリスはモーリスでみのるの目の前で“眼中なし”のポーズ…開始のゴングはそんな中で鳴らされた。
案の定、みのるは苦戦を強いられる。開始直後にモーリスのワンツーでみのるはダウン。
その後は、モーリスが組みしやすしと感じて余裕を持ったのかみのるが健闘したのか、大きな変動もなく2Rが終了。だがやはりみのるの敗色は徐々に濃くなっていく…
と…
「俺はプロレスラーなんだよ!!」
突然みのるが客席に向かって怒鳴りつけた…
どうも観客から、「プロレスラーのくせに弱いなぁ…」という声があったようだ…
みのるは自分がプロレスラーであることに並々ならぬ誇りを持っていた―
エースの船木誠勝をはじめパンクラスが徐々に格闘路線に走っても「パンクラスでプロレスラーは俺だけだ」と言い放ってまでレスラーとしてのこだわりを持ち続ける男である。もちろん格闘路線に走った船木らが間違っているわけではない。それは価値観の置き所の違いでしかない。ただ、この頑固なまでのこだわり。これはなかなか持てるものではない。
そんなみのるにとって「プロレスラーのくせに…」といわれる…それはレスラーとして自分が否定された、そういう感情が走ったのだろう。
それほどまでにみのるには、トップレスラーを目指す人間としての誇りが満ち溢れていたのだ。そしてそれを大事にしてきたからこそ、今があるのかもしれない―
3R。モーリスのパンチが勢いを増した。
もちろん、このラウンドに勝負をかけた、といったこともあったことだとは思うが、それにも伏線があった。
2R終盤にみのるの“秘策”のバックブローがモーリスの顔面に火を噴いたのだ。
これで目が覚めたのか、はたまたみのるにこれまで感じなかった何かを感じたからなのか、あるいはその両方か…3R、モーリスは開始直後からたたみかけてきたのだ。
結局3R序盤にして3度のダウンを立て続けに喫してまたしてもマットに沈んでしまった。
ただ、前回と違うのは10カウント数える前に心の方が折れてしまったのに対し、今回は倒されても倒されても向かっていった点だ。とはいえ負けは負け。みのるはモーリスに敬意を払いながらも悔しさを隠しきれない。
だが一方でモーリスのみのるに対する接し方にも変化があった。みのるによれば「ありがとう」といったそうだ。
(続く)
白いコスチューム…白いレガース…ニーパットがついてない点を除けばあのときと同じだ…
そして白いタオルを頭からかぶってリングイン…手には“大事な人からもらった”というバンダナを握っていた…その様はこれから死地に赴く戦士が持つかのような悲壮感すら漂っていた…そしてその両腕にはグローブが装着された。
そして、モーリス・スミスが入場。こちらはパープルの派手なガウンにサングラスの出で立ち。余裕綽々の振る舞いはみのると対照的ですらある。
モーリスの入場を確認するやみのるの目の輝きが変わった。
その目は…まさにこの世のものとは思えないほどぞっとするものだった…この視線ではモーリスが嫌悪感を抱くのも頷ける…そしてみのるはそのおぞましい視線をモーリスから離そうとしない。これだけでもみのるの“打倒モーリス”への執着心が半端ではないことが伺われる。ルール面で絶望的に不利な立場に立たされているにも関わらず、である。ただ、嫌悪感を隠せないながらもモーリスにはそれが単なるこけら脅しにしか見えないようである。だからモーリスはモーリスでみのるの目の前で“眼中なし”のポーズ…開始のゴングはそんな中で鳴らされた。
案の定、みのるは苦戦を強いられる。開始直後にモーリスのワンツーでみのるはダウン。
その後は、モーリスが組みしやすしと感じて余裕を持ったのかみのるが健闘したのか、大きな変動もなく2Rが終了。だがやはりみのるの敗色は徐々に濃くなっていく…
と…
「俺はプロレスラーなんだよ!!」
突然みのるが客席に向かって怒鳴りつけた…
どうも観客から、「プロレスラーのくせに弱いなぁ…」という声があったようだ…
みのるは自分がプロレスラーであることに並々ならぬ誇りを持っていた―
エースの船木誠勝をはじめパンクラスが徐々に格闘路線に走っても「パンクラスでプロレスラーは俺だけだ」と言い放ってまでレスラーとしてのこだわりを持ち続ける男である。もちろん格闘路線に走った船木らが間違っているわけではない。それは価値観の置き所の違いでしかない。ただ、この頑固なまでのこだわり。これはなかなか持てるものではない。
そんなみのるにとって「プロレスラーのくせに…」といわれる…それはレスラーとして自分が否定された、そういう感情が走ったのだろう。
それほどまでにみのるには、トップレスラーを目指す人間としての誇りが満ち溢れていたのだ。そしてそれを大事にしてきたからこそ、今があるのかもしれない―
3R。モーリスのパンチが勢いを増した。
もちろん、このラウンドに勝負をかけた、といったこともあったことだとは思うが、それにも伏線があった。
2R終盤にみのるの“秘策”のバックブローがモーリスの顔面に火を噴いたのだ。
これで目が覚めたのか、はたまたみのるにこれまで感じなかった何かを感じたからなのか、あるいはその両方か…3R、モーリスは開始直後からたたみかけてきたのだ。
結局3R序盤にして3度のダウンを立て続けに喫してまたしてもマットに沈んでしまった。
ただ、前回と違うのは10カウント数える前に心の方が折れてしまったのに対し、今回は倒されても倒されても向かっていった点だ。とはいえ負けは負け。みのるはモーリスに敬意を払いながらも悔しさを隠しきれない。
だが一方でモーリスのみのるに対する接し方にも変化があった。みのるによれば「ありがとう」といったそうだ。
(続く)
