WBC総括−5 | スポーツを語ろう-ZE!!

WBC総括−5

呆れた情報が入ってきていたので一つ紹介しよう。日本ハム・ダルビッシュ有が帰国して投球練習を始めるなり「軽すぎる」といったそうだ。それは何かというとボールのことである。
ある評論家によれば「これでは日本でホームランが乱れ飛ぶのは当然」ということだが、WBC使用球と日本製の球で7グラムも違うそうだ。これでは確かに極端過ぎる。その評論家は「ローリングス社(WBC使用球の製造元?)を使うべきなのになぜ使わない」とまで言っていた。メーカーをどこにするかはともかくこれだけ違っていては確かに問題である。その人は各球団が話合えば使用球の部分的統一ぐらいは可能ではないか、というニュアンスで話していたが、もう遅くても来シーズンには各球団が足並みを揃え、WBC使用球にほぼ近いモデルの球を使わなければ国際試合の度に諸問題が生じることになる。
ところで、決勝戦で韓国の林昌勇がイチローに痛恨の決勝タイムリーを打たれたことについて韓国の監督が「作戦失敗だった。なぜ(林は)勝負に行ったのか」みたいなことを口にしていたようだが私は正直気分が悪くなった。もっとも韓国の監督がどういう意図でそれを口にしたのかがわからないし、彼が口にしたことについても私自身は小耳に挟んだ程度で正確なところは正直知らない。だがそれを聞いたときの第一印象が「何をこの期に及んで負け惜しみみたいなことを」というものだった。監督というポジションゆえの悔恨の念は察するに余りあるが、(不調のイチローを舐めていた?という考え方も確かにあるものの)堂々と勝負に出た林昌勇をねぎらうコメントがもう少しあってもいいのではないかと思う。
何より日本には、どこかのボヤキの名手の語録にもあるとおり(笑)「敗軍の将、兵を語らず」という言葉がある。人間だから何を悔いてもそれはそれで恥ずかしいことでも何でもない。だが口にすれば内容によっては謗りを免れられないことも覚悟すべきである。まして監督たるものは何があったって毅然としてなければならない。
似たようなケースが70年前後の日本シリーズにもあった。巨人-阪急の日本シリーズで巨人を完璧に抑えていた阪急先発山田久志がピンチを迎えたあと王貞治と勝負して逆転アーチを打たれた。しかし当時の阪急・西本幸雄監督は山田の肩を叩いて二言(「ヤマ、帰ろう」とも「ご苦労、いい勝負だった」とも聞いている)声をかけただけだという。八回も日本シリーズに出ながらついに勝てなかった西本監督だが、この人の口から言い訳がましい言葉が出たのを聞いたことがない。しかし山田久志投手コーチは皮肉なほど当時と似たようなシチュエーションを目の当たりにして一体何を思ったのだろう。
それにしても第2ラウンドで日本に勝ったときにマウンド付近に旗を立てるなどという侮辱行為を行ったことといい、野球はできてもそういうところで国民意識が低いことを露呈してしまった。そういう意味で韓国はまだまだだと思う。ある方が申していたが、あれでは敵対心を煽るだけでああいう行為が世界に、特に野球の普及しきっていない地域に受け入れられるはずがないということにも気づくことである。野球の世界規模での普及と認知、それがWBCの存在意義の一つなのにそれと相反する行為である。
林昌勇については、私だったら逆に評価したい。
あそこで彼が韓国の監督の言うようにイチローを敬遠したりせず堂々と攻めたからこそあの場面が名勝負として高い価値を構築できたのだ。もしあれが敬遠だったら結果がどう転ぼうがあれほどの感動はない。また敬遠をしてイチローを歩かせても延長での満塁ということでさらに不利になる。それで結果的に日本が勝ったとしてもあんなに大きな反響は出なかったと思う。
だから私はあの勝負のあと勝った日本はもちろん、敗れた韓国に対しても「林昌勇をはじめ、韓国もよくやった」という気になれたのだ。なのに韓国の監督のあの言葉は興ざめを招きかねない。そればかりか「あ~あやはり韓国は韓国だな」実際私はそう思いかけたのだが、そういう印象をもたれることをチームのトップが口にすべきではないだろう。
さて、話はかわるが、周知の通り国内外でプロリーグのレギュラーシーズンが始まった。それを見ていて思ったこと。結論からいえば改めてこのイベントはシーズンオフにやるべきだということである。というのもお気づきの方も多いと思うが、疲労や調整の不具合などでWBCでの悪影響を受けている選手が目立つからである。
昨夜ナイターを見ていて解説陣の話を聞いたらなるほどと思った。WBC出場組のほとんどにとっては大会終了後すぐにレギュラーシーズンが始まる。と、ここでまず問題となってくるのが極度の緊張の中で戦っていたWBCがひとまず終わり、ホッとしたいところでシーズン開始となる点だ。しかも巨人の亀井などはWBCではさほど活躍していないためせっかく晴れの舞台でベンチ入りしてもかえって調整面に影響が出やすかったという。亀井以外にもいたらしいが帰国後すぐにバットを振った途端マメができた、という人もいたくらいである。
もう一つは日本人と他国のチームでプレーのリズムが違うため、まるで軽い時差ボケのように自分のプレーするペースに若干のズレが生じることだそうだ。ヤクルトの青木宣親によれば「他国のチームを相手にするときは1、2、3で振ればよいが、日本のピッチャーは1、2“の”3で振らないといけない」という。この“の”の影響の大きさは実際に青木の立場を想定して考えてみればだいたいの見当はつくだろう。
そして先に述べた、ダルビッシュの驚嘆した使用球などに見られる環境の違いだ。このイベントをシーズン開幕前にやることにメリットがないとは思わないが、こういった弊害を考えると、やはりシーズンオフでの実行の方がその弊害を考慮に入れなくてすみそうな分時期的に適しているように思う。特に開催国のアメリカにおいてシーズンへの影響を考慮するあまり出場選手の派遣を制限するようなチームが続出するようであればなおさらだろう。
最後にもう一つ。敗者復活システムは今回で打ち切りにした方がよさそうだ。
それには興行上の問題もある。なぜなら自国の敗北を想定して敗者復活戦のチケットを買うものなど考えられないからである。
こうして、わずか2大会にして数々の興味と興奮を呼び込んだ一方でこれまた数々の課題もやはり噴出したWBC。しかし逆の見方をすれば今後さらに充実した大会にするためのデータがたくさん集まったということでもある。野球というスポーツは素晴らしい。だからこそ本気で取り組めば取り組むほどいいものができる。事実オランダの健闘はヨーロッパ諸国をはじめとする野球後進国に勇気を与えるばかりでなく、オランダで野球への関心が高まっていることの証明にもなっているのではないか。そうしたところにも広がりを感じる。そんな野球のよさをいかすためにも、WBCは今後も大事に運営してほしいイベントに十分なりうるだろう。(完)