正しい呼吸と姿勢の話32 エロンゲーションって何?脊柱(背骨)のS字カーブの重要性 | 姿勢改善トレーニングSTUDIO BE FREE  パーソナルトレーナー 吉田昇平

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東急東横線学芸大学駅徒歩5分の姿勢改善トレーニング『STUDIO BE FREE』の吉田です。

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前回の『正しい呼吸と姿勢の話31』では「足裏アーチを改善するためのエクササイズ」をご紹介しました。

まだ読んでいない!という方はこちらからどうぞ( ^-^)_旦~https://ameblo.jp/dmjg-0722/entry-12448670610.html


ここまでポッコリお腹の原因となる「脊柱前彎症(せきちゅうぜんわんしょう)」のお話、


また、正しい姿勢に欠かせない3つのアーチについてのお話などをしてきました。


しかし、「そもそも正しい姿勢の基準って何ぞや?」と気になる方も多いのではないでしょうか?


正しい姿勢の定義についてはずいぶん前になってしまうのですが、『正しい呼吸と姿勢の話1』でお話しをしてきました。

※詳細はこちらからどうぞ( ^-^)_旦~https://ameblo.jp/dmjg-0722/entry-12421360348.html

その中で、「正しい姿勢の基準」として


・力学的視点:重心線と支持基底面(構造的な安定性)

・生理的視点:疲労しにくい(機能的安定性)

・心理学的視点:心理的に安定している

・作業効率的視点:作業効率が良い状態

・美学的視点:見た目に美しい

を挙げました。

また、この正しい姿勢を保つためには脳の中にある姿勢や運動の渋滞を司るプログラム「ボディスキーマ(身体図式)」や自分で意識的に描いている自分自身の姿である「ボディイメージ(身体イメージ)」を正常に保つこと
※ボディスキーマとボディイメージについてはこちらの記事を参照ください。

そして、前回までお話ししてきた3つのアーチ(舌、横隔膜、足裏のアーチ)が正常に保たれ、それによって正しい呼吸とコアマッスル(横隔膜、骨盤底筋、腹横筋、多裂筋)が働く事が必要である!というお話でした。

※3つのアーチについてはこちらの記事を参照ください。https://ameblo.jp/dmjg-0722/entry-12431407348.html





※ボディスキーマとボディイメージについてはまた機会を改めて詳しくお話ししていきたいと思います。


では、これらが全て揃った姿勢とはどんなものなのでしょうか?

簡単に言えば「窮屈に感じず、長時間自然にいられて、いつでもパッと色々な方向に動ける姿勢」です。

ちょっと漠然としていますね^_^;


具体的に考えていくために、まず最初は「脊柱(せきちゅう/背骨)」については詳しく見ていきましょう!


●抗重力伸展:エロンゲーションってなんだ!?

小学生の頃、理科室で骨格模型(骸骨)をご覧になったことがある方は多いかと思います。

ぜひ、それを想像しながら読んでいただきたいと思います。

脊柱は横から見たとき、縦一直線ではなく「S字のカーブ」を描くような形になっています。

もちろん、服を着た人の姿を横から見たときにぱっと見では分からないと思いますが、体の中で背骨はこのようなS字の形をしているのです。

私たちは普段二本の足で立って、歩いて生活しています。毎日当たり前のように行っているのであまり意識することはありませんが、常に二足歩行で生活している生物は地球上では私たちは人間だけ。

脊柱のS字ラインはそんな私たち人間が二本足で歩くために最適な形状として手に入れたものなのです。

なぜか?


その理由はまさに2本の足で立っている皆さんの姿そのものにあります。僕も含めてですが^_^;

人は直立で立った時に頭の位置が脊柱の真上に来ます。


脊柱は7本の頸椎、12本の胸椎、5本の腰椎、そしてその下に仙骨、尾骨が続いています。これらの骨を軸として、肋骨や骨盤が付いて体の枠組みが作られています。

このうち頸椎と腰椎は前方に彎曲(前彎)、胸椎が後方に彎曲(後彎)するようにS字を描いています。この3つの彎曲が存在することで脊柱に頭部を支えたり、運動時の衝撃を吸収する「力の吸収力」と頭を含めた体の重さを支える「抵抗力」を生み出しているのです。

S字カーブを描き、「衝撃を吸収し重さに抵抗できる」状態を「エロンゲーション(抗重力伸展)」といいます。




●ニュートンの運動法則と脊柱の支持性

脊柱はS字ラインを描くようにカーブすることで頭部を支えたり、運動時の衝撃を吸収すると言いましたが、ここではシンプルに「脊柱のカーブの数と頭部の関係」について見てみましょう。

ここでキーポイントとなるのが「ニュートンの運動法則」の中の第3の法則・「作用ー反作用の法則」です。


うわー物理は苦手だぁ!

という方、大丈夫です!僕も学生時代は物理や化学は大っ嫌いでした^_^;

「作用ー反作用の法則」とは「力のエネルギーには作用する力のエネルギーに対して等しく、かつ反対向きの反作用のエネルギーが存在する」という法則です。


具体的に言うと、体重60㎏の人が固い床に上に立っていると、床に対して60㎏分の重さがかかります。この力を「作用力」

すると同時に床から体重60㎏を吸収するマイナスの力60㎏分が返ってきます。これを「反作用力」と言います(この場合、床反力とも呼ばれます)。


この2つを足すと

(体重60㎏床にかかる/作用力)+(床から返ってくるマイナス60㎏/反作用力)=0

となり、体重60㎏の人は床の上に立つことができるわけです。


ちなみに、もし床から反作用力が返ってこなければ床板を突き破って落ちてしまいます。


話を脊柱のエロンゲーションに戻します。

エロンゲーションを保つことにより、脊柱が持つ抵抗力はそのまま衝撃を吸収できる力と同じになります。この2つの力をまとめて「脊柱の支持力」としましょう。

先ほどの「作用ー反作用の法則」であれば、脊柱にかかる重さや衝撃が「作用力」を吸収する「反作用力」に相当します。

「脊柱の支持力」は以下の公式で求めることができます。

脊柱の支持力=(脊柱のカーブ数)の2乗+1


エロンゲーションが保たれている場合、脊柱はS字なのでカーブ数は3つですから

脊柱の支持力=3の2乗+1=10

となります。

●脊柱のカーブが1つ少なくなると支持力は半分になる!?

では、仮に不良姿勢によって脊柱のエロンゲーションが崩れてしまうと脊柱の支持力はどうなるのでしょうか?


たとえば、「脊柱後彎症(せきちゅうこうわんしょう)」いわゆる「猫背」と呼ばれる姿勢の場合、脊柱のS字ラインは崩れてカーブは2つになってしまいます。

これを先ほどの公式に当てはめると、

脊柱の支持力=2の2乗+1=5


なんと脊柱のカーブ数が1つ減るだけで支持力(重さを支えたり衝撃を吸収する力)は半減してしまうのです!


ちなみに、脊柱のカーブ数が0の場合だと

脊柱の支持力=0の2乗+1=0

となります。


「ストレートネック」と呼ばれる症状にお悩みの人の中には、脊柱のS字ラインがほとんどない!というケースもあります。

ちなみにカーブがない脊柱は単体でどのくらいの重さに耐えられるかと言いますと、2㎏と言われています。

そして人間の頭部の重さは5~8㎏と言われています。

つまり「背骨がピーンと真っ直ぐ伸びていると、頭の重さすら支えることができない」ということです(°°;)


●脊柱のカーブ数が少ないと、腕や脚への負担が大きくなる

実際には私たちは脊柱だけで頭部の重みや運動時の衝撃から体を守っているわけではありません。

体幹だけを見ても筋肉や靭帯など様々な組織で体を支えています。


そもそも脊柱のエロンゲーション自体、脊柱だけで保っているわけではなく立っているときには足の裏が、

座っている時には坐骨と足の裏が椅子の座面と床に触れています。

これら座面や床に触れている体の部位から足首、膝、股関節と「骨と骨の繋がり」を通して脊柱の位置が決まってくるのです。

逆に言うとエロンゲーションが崩れて脊柱の支持力が低下すれば、その分を体幹部の筋肉や手足の関節でカバーすることになってしまいます。

その結果

・首や肩周りの筋肉の凝り

・腰痛

・肩や肘、手首の痛み

・股関節や膝、足首周りの痛みや怪我

・慢性的な疲労感

といった様々な不調を引き起こす原因にもなってしまうのです。

●エロンゲーションを保つには正しい呼吸と3つのアーチが不可欠

エロンゲーションすなわち脊柱の正常なS字カーブを保つには、前回の記事まででお話ししてきた「舌、横隔膜、足裏」の3つのアーチが必要です。

・舌のアーチの喪失=フォワードヘッドの発生➡背中が丸まり脊柱が後彎

・横隔膜のアーチの喪失=呼吸機能の低下により、呼吸機能とコアマッスルの機能が低下➡リブフレア型呼吸や努力型呼吸とそれに伴う様々な不良姿勢の発生➡S字カーブの乱れ

・足裏のアーチの喪失➡偏平足とそれに伴う骨連鎖による姿勢の悪化と呼吸機能の低下、ハイアーチによる体の慢性的な過緊張とそれに伴う姿勢の悪化と呼吸の低下

・・・・

こうした事例の積み重ねによって脊柱のカーブが失われていくのです。


改めて「正しい呼吸と姿勢の関係」を意識していきたいとものですね。


次回は『ダイエットをするなら知っておきたい話シリーズ』をお送りします!


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