誠に痛ましいと言いますか…
もはや言葉にすらならない 知床遊覧船事故 が発生してから、早くも半年が経過してしまいました。
ご承知のように、生存者が皆無という未曽有の大惨事でありましたが、後に報道された遺族の方々の証言の中で、個人的に特に気になったのは、北海道幕別町に住む 7歳の男の子 のことでした。
後の報道を拝見してみますと、訪問した知床では観光船に乗船する前に同行したお母さんが撮った画像が、ラインでお父さんに送られましたが、それがこの子にとって生前の最期の姿だったことは、遺族としては受け入れることのできない現実でしょう…?
そして、後に遺品として彼のナップサックが発見され、後に公表されるに至った訳ですが、これは 新幹線はやぶさ&こまち の連結を俯瞰した図柄であって、このことから彼は鉄道好きの少年であったことが想像できました。
年齢からすると恐らく小学校2年生だと思うのですが、お父さんが話すには、自宅近くを走る根室本線の時刻表を読み解き、特急の通過に合わせて踏切まで出向いたり…
はたまた、生きていれば5月に ふるさと銀河線りくべつ鉄道 に連れて行く予定であったらしいので、もはや 筋金入りの鉄ちゃん (鉄ちゃん=鉄道好き)に成長する道を、彼は歩み始めていたのでしょうが、その前途は一人のバカ経営者によって無残にも絶たれてしまったのです。
ところで、彼はともかくとしてご両親も鉄道が好きだったのかどうなのか?
実は、鉄道でも釣りでもモータースポーツでも、趣味というのは周りにそれを導く先輩と言いますか、師匠のような方がいらっしゃれば大きく伸びるのですが、かく言う私も 鉄ちゃん歴50年 を裕に越えますから、彼へのレクイエムの意味も込めて、ここで図らずも旅立ってしまった彼への 鉄道の旅プラン を進呈しようと思います。
※以下、決して故人を冒涜したり揶揄するものではありません。
今、君はお母さんとご一緒されていると思いますが、あちらの世界には時刻表なんて無いんでしょうね…?
ですから、君にオススメする時刻を記したプランをご提案しますが、所々に鉄ちゃんスパイスを混ぜていますので、そのまま進んでいけばきっと楽しい鉄道の旅になるでしょう!
さて、まずは君のご実家から出発していただくので、一番近い 幕別駅 から始発の6時05分発の普通列車に乗車しましょう。
帯広駅が6時19分着。
ここで当駅始発6時45分発の とかち2号 に乗り換えて…
南千歳駅が9時01分着。
ここで9時16分発 北斗6号 函館行に乗車します。
まあ、今のJR北海道の特急列車は、どれも同じ作りで趣味的な魅力には欠けるのですが、ここはひとつお母さんと一緒に車窓を楽しむ方向で進んでまいりましょう!
さて、普通ならばこれに乗って 新函館北斗駅で新幹線に乗り換える のですが、君は鉄ちゃんですから一旦終点の函館まで入るのが良いですね!
12時34分に到着するので昼食をとってもらい、約2時間の自由時間を設けましたので、青函連絡船 摩周丸 をサクッと見学しても良し、函館市電に乗るのも良しなのです。
次は、函館15時44分発「はこだてライナー」に乗車し、
新函館北斗で16時20分発 はやぶさ40号 に乗り換え、あとは一路東京を目指していただきましょう。
途中の盛岡駅には18時10分着いて6分停まるので、最後尾に急いでください。
後からやってきた「こまち40号」との併結シーンは、君の持っているナップサックの図柄の実写版ですから、しっかりとその目に焼き付けておきましょう!
例え真夏であっても車窓が真っ暗になってしまう20時32分に東京駅に降り立つのですが、ここで1時間の乗り継ぎ時間がありますから、在来線ホームに出て撮影するのも良いのですが、遅めの夕食のために駅弁を買うこともお忘れなきようにお願いします!
さて、ここからからは今回の旅のメインデッシュてもある、21時50分発 寝台特急サンライズ瀬戸 に乗車していただきましょう!
成金趣味まるだしのボッタクリ何ちゃってクルーズトレインとは一線を画す「サンライズ」は、鉄ちゃんなら誰しも知る 生粋で唯一の寝台特急 ですので、これより車内で駅弁を食べながら、しばし夜行列車の旅を堪能していただきます。
少し値が張るのですが、君と同室の方がお母さんも安心できますし、別料金でシャワーも浴びれますから、まずはB個室寝台でぐっりとお休みください…
そして、目覚めると列車は早朝の 瀬戸大橋 を渡っていますよ!
君が住む北海道とはトンネルで、そして四国へは橋で本土と繋がっているのですが、世界的に見ても小さな島国である我が国も、こうして列車を乗り継いで旅をしてみれば、案外広くて各々で趣のある車窓が楽しめることに気付くはずです。
さて、君にとっては東京以西に出向くのは初体験のようですから、ここ四国の高松駅には7時27分に着きますので、朝食は名物 讃岐うどん を召し上がっていただきましょう!
美味しいですよ!
次は、8時24分発の高徳線 うずしお5号 に乗車してください。
君の住んでいた北海道でも、高速運転が自慢の気動車特急はいくらか有りますが、こちら四国の列車も同等以上にバンバン飛ばしますから、その乗り心地の違いも体感してみてください。
徳島駅には9時36分に着くので、ここから市バス⑥のりばへ移動し、9時45分または10時15分発に乗車してください。
港に着けばそこがフェリー乗り場ですから、ここから10時55分発の 南海フェリー に乗船します。
実は、この先の和歌山港では乗船口と鉄道の駅が隣接しているため、今は我が国唯一の 鉄道連絡船 として健在な航路でして、かつての国鉄青函や宇高ほどの賑わいは無いにせよ、船内には桟敷席もあるので、往時を偲ぶ要素はいくぶん残っているのです。
しばしゆるりと横になったり、はたまた甲板に出て海風を浴びたりすれば、2時間ほどで和歌山港に着岸します。
で、連絡橋を数分歩けば和歌山市行きの列車に連絡していますので、終点の和歌山市で13時30分発の 特急サザン に乗り換えてください。
君はまだ知らないと思いますが、特急サザンという列車は通勤電車まんまの自由席と、+520円(大人)でリクライニングシートが並ぶ指定席を一緒に連結した変わった列車ですので、その料金差で生じる格差もその目で確かめてください。
※名鉄にも同じような列車があります。
さて、終点の難波駅に着きますと、 特急ラピート や こうや号 など、色んな電車がやって来ますから見ているだけでも楽しいのに加え、少し歩けば道頓堀界隈も散策できるのですが…
ここは長旅ゆえお母さんもお疲れモードですから、早めに宿に入りましょう!
大阪の鉄道は、東京や名古屋と違って私鉄が路線網を張り巡らせていますから、翌日は阪急や阪神、はたまた近鉄や京阪に乗るのもひとつですし、少し足を伸ばせば モノレール やケーブルカーに乗ることも出来ますし…
130km/hで爆走するJR西日本ご自慢の 新快速 に乗って京都まで約30分、そこから山陰線でひと駅乗れば 京都鉄道博物館 もありますので、古い車両から新幹線、はたまた実際に動く蒸気機関車にも乗れますから、これも君にとっては外せないスポットでしょうが、後は君なりの行程を組んで大阪を満喫してください…。
どうでしたか?
十分楽しめましたか?
楽しい思い出が出来たでしょうか?
私はまだ現世というところに居て、あとしばらくは君の居る場所には行けないけれど…
実は、君が将来なりたかった 車掌 という職種にかつて私は就いていたこともあるので、もしも後々君とお会いすることが出来るのなら、 鉄道のお話し をいっぱい出来ますから楽しみにしておいてください。
約束ですね!
あっ!
その頃の君は二十歳を越えているでしょうから、あの世に居酒屋があるのなら、そこで鉄道談義に花を咲かせても良いかも知れませんね?
乾杯しましょう!
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