昨年に続き、今年もまた幼い命が失われた 通園バスの置き去り事件 は、多くの方々の悲しみを誘いました…。

 

     

 

しかしながら、このような事故が起きますと決まって、「二度と同じことがあってはならない…」と、毎度毎度の うどん屋の釜→湯だけ→言うだけ の繰り返しであって、抜本的に改善を施さなければ一向に事故は減らないのです!

 

     

 

 

 

 

ただ、今回の園児置き去りのあった当該バスの画像が公開されますと、一部で 窓のラッピング が無ければ、園児の命が救えたのではという意見もありましたので、今回はこのようなラッピング施工をしたことのある 看板屋の私 から、これに至った経緯などを書いてみようと思います。

 

     

 

 

 

 

元々看板屋という商売は、筆で文字を書くか塗るという手法が永らく続いていたのですが、昭和50年代頃に カッティングシールで貼る (以下シールと略す)という工法が出来たのでした!

 

まあ、1枚のパネルがあったとして…

このパネルに刷毛で黄色いペンキを塗るには、塗りムラが出ないように技術が必要だったのですが、黄色いシールを貼れば誰でも同じ仕上がりになりますし、ムラも無くてペンキを乾かす時間も不要になったのです。

 

     

※イメージ

     

そして、これが鉄道やバス車両のラッピングへと発展していくのですが、まだこの当時のシールは 屋外対侯性に乏しかった ので、単に塗装工程の簡素化として使用されていました。

 

 

 

 

こちらは、今は無き飯田線を走る119系という電車ですが、以前の塗料吹き付け作業では青を吹いて乾かして、養生をして再び白い帯の塗料を吹き付けるという工程が必要だったのです!

 

     

 

しかし、当時の国鉄がこのシールの便利さに飛び付いて、要は白い帯の部分をシールに置き換えたため、吹き付け工程とコストが大幅に削減できたのですが…

 

前述のように、当時はシールの対候性と粘着力も乏しかったので、下記のように手で簡単に剥がせるシロモノだったため、すぐさま醜態を晒すことになってしまいました。

 

     

 

 

 

そこで、シールメーカーが試行錯誤を重ねた結果、後に屋外で長期の使用にも耐えうるシールが開発され普及したおかげで、現在のJR西日本の普通電車などの帯は、ほとんどがこのシールでラッピングしたものになりました。

 

     

 

 

    

 

ところが、このようなシール工法ですと、単色での表現しか出来ないという欠点があったのですが、だったらと後に登場したのが、白いシールにインクを吹き付ける インクジェットという工法 (以下ジェットと略す)で、これが件のバスにラッピングされたものでした!

 

     

 

 

 

わかりやすく言えば、屋外での使用に耐えうる 大判糊付きポスター なのですが、要はデータさえ作ってしまえば、どんな文字や写真でも1枚のジェットとして製作し、車体などにもラッピングできるというものなのです。

 

ただ、賛否両論あるとは思うのですが、例えばジェットでラッピングされた車体でも、こんな仕上がりであればまだ許せるのですが…?

 

     

 

こんなんとか…

 

     

 

こんなんとか、 キッショ くありませんか?

 

     

 

夜中に踏切待ちや、交差点で横に並んだとすれば不気味ですし、小さい子供さんだったらトラウマになるんとちゃいますかね?

 

 

 

 

ただね…

例えば合法では無いんだけれど、個人の 痛車 とかですとアホちゃう?と流せるんだけれど、よしんば公共の乗り物とか、企業や学校の送迎車であった場合は、その内容が 広告物 と見なされるため、行政の許可が必要になってくるのです。

 

     

 

 

 

 

車体に社名などを入れた車などが公道を走った場合、これは宣伝になるので 銭出したら許可したる という考えであって、逆に言うと銭さえ払えば、よほどエゲツナイ表現で無ければキッショてもグーということなんです。

 

     

 

もちろん、各々の都道府県での対応差はあるのですが、送迎用などのバスであれば、フロントガラスと運転席、助手席のガラス、及び後部ガラスを覆うラッピングは禁止されていまして、その他であれば 好きにせいや~ という解釈なのです!

 

     

 

 

 

 

そして、肝心要のガラスへのラッピングなのですが、ジェットには透過率の高い商品もありまして、一例で言いますと パンチング加工 と言って、要はブツブツの穴が無数に開いているジェットもあるんですな…。

 

     

 

ぶっちゃけた話しがこんな感じでありまして、外から見ると何かデザインしてあるように見えるのですが、裏から見るとこんな感じなのです。↓↓↓

 

     

 

すなわち、これと同じ工法でラッピングしている鉄道車両では、 泉北ライナー というのがあるのですが、あくまで全体のデザイン性を優先したものであって、今回のような 置き去り があった場合は、外から発見することはほぼ無理ということなのです!

 

     

 

 

 

 

看板という業界は、俗に建築の一部として認識されているため、例えばこのようなガラスへのラッピングを申請したとしても、 剥がれないか? 落下しないか? ある程度透過するか? と言う品質の観点だけでしか判断しないので、その先にある万一の事態のことなど、とうてい考えるオツムはサラサラ備わっていないのです。

 

同じく、業者側としてもデザイン性を優先するたけけでなく、他よりも もっと目立つ というラッピングを勧めれば単価も上がりますし、それに乗っかった施主側も同じ穴のムジナと言えましょう!

 

 

 

 

全ての業界が飽和状態にある現在、他よりも目新しくて斬新ナモノを求めがちですし、それは決して間違いでは無いんだけれど、これほど立て続けに 置き去り事故 が発生する現状を顧みれば、おのずと方向性は見えてきたんとちゃいますか?

 

もう一度当該バスをご覧ください…

 

     

 

もしもガラス部分にラッピングが無くて、置き去りにされた園児が不安になってガラスを叩くなどしていれば、ひょっとして誰かが気づいて 救えたはずの命 だったと返す返すも思いますし、もうこの際デザイン云々という口実は止めにしませんか!

 

 

 

もちろん、車内に監視カメラを設置したり、はたまたクラクションを鳴らす練習をさせるのもひとつの打開策かも知れませんが、外から車内が見えないという最大の問題点を解決しない限りは、全てが水泡に帰すのです。

 

     

 

今からでも決して遅くはありません!

無念だったであろう園児を気持ち悼み、行政の指示で全国の通園バスから ガラスラッピング全廃 の号令を出してくれれば、少なくとも同じような事故は大きく減るはずなのです!