「祝!100万食突破 それゆけ大阪ラーメン 開発ストーリー」
年間900億食と言われるカップ麺の世界市場。平成23年5月、産経新聞大阪社会部の若手記者達が、大阪のご当地ラーメン作りを目指し、「それゆけ!大阪ラーメン」の開発に挑みました。
今や国民食と呼ばれるラーメンですが、大阪ではお好み焼きやたこ焼きといった「粉もん」のほうが好まれる傾向があり、大阪にはご当地ラーメンと呼ばれるものがありませんでした。
そこで、産経新聞の若手記者が意気投合し、「大阪ラーメン部」を結成。
また、新聞社の想いとして、ラーメン企画をメインに据えた若手記者プロデュースの紙面を掲載することによって、若者に新聞へ関心を持って欲しいという意味も込められていました。
共同開発のメンバーに、即席麺大手、エースコック(株)の社員も加わり、大阪の食文化を探りながら、大阪人に愛されるラーメン作りがスタート。
コンセプトの設定から、カップ麺作りにおける苦悩、パッケージ作成や市場調査まで、大阪本社発行の夕刊特集「ゆうsankei」面に掲載されました。(平成23年6月から計13回の連載)
「それゆけ!大阪ラーメン」のコンセプトは、「甘辛」と「始末」。「甘辛」は、味が濃いと感じる一歩手前のうまいと感じる味。「始末」は、食材を無駄なく使い切り、最高の味を引き出す心のこと。
具材はねぎ・メンマ・ナルトの王道具材にとろろ昆布と玉ねぎを加え、味わいの一つに加えました。しかし、鶏ガラ醤油をベースに、甘辛感を出すのは至難の業。また、開発の中で最も苦労したのが「始末の心をカップ麺でどう表現するか」。大量生産の即席麺で始末を表現するという難題は高い壁となって部員に立ちはだかりました。しかし、部員の何気ない一言がその流れを変えました。それは、「バイプロ」。バイプロとは、日本語で副産物を意味するバイプロダクトのこと。即席麺で使用するフレーバーは、香味野菜や魚介類、香辛料などの食材をじっくりと時間をかけて油で炒めて風味を引き出します。
通常の工程では、スープとオイルを分離してオイルだけを使いますが、残ったスープは捨てられます。この旨みが凝縮されたスープの正体がバイプロです。これの利用こそがまさに、「食材を無駄なく使い切り、最高の味わいを引き出す」始末の心でした。
また、大阪ラーメンのパッケージデザインには、個人的にとても興味を引かれました。
大阪ラーメンのコンセプトである「甘辛」と「始末」を記事に見立てて説明していて、新聞社のオリジナルラーメンであることがすぐに認識でき、かっこ良さと斬新さのあるユニークなデザインです。
そしてもう一つ、大阪ラーメンの第2弾として、大阪産の食材を取り入れることにも成功。大阪府の協力を得て、「大阪産(もん)」としてPRする府内産の泉州玉ねぎを取り入れることになりました。
産経新聞大阪ラーメンのブランディングが、より一層高められたのではないでしょうか。さらに部員に朗報が。平成25年10月「大阪産(もん)」の普及啓発に貢献した活動を表彰する、「大阪産五つの星大賞」に、「それゆけ!大阪ラーメン」の取り組みが選ばれました。競争の激しい業界に挑んだ部員の方々のチャレンジ精神が、賞という形でも認められた瞬間でした。
平成23年12月、「それゆけ!大阪ラーメン」は全国発売にこぎつけました。
全国のコンビニや量販店の店頭に並び、わずか3週間で何と100万食を突破。業界内で大ヒットの目安となる100万食を掲げることができました。
今年は10月に第3弾が全国発売され、益々勢いにのる大阪ラーメン。
部員達の情熱とチャレンジ精神が大阪にご当地ラーメンを誕生させ、大阪の食文化
を全国に広めることができたのではないでしょうか。
個人的には九州出身ということで豚骨ベースのラーメンが好みですが、
大阪のご当地ラーメンを聞かれたら、自信を持って紹介することができます。
一つの商品開発にとことん取り組み、工夫と知恵で理想のラーメン作りに成功した部員の活動は、同じ商品開発に携わる人たちへの励みになるのではないでしょうか。
ビジネスチャレンジ編集長
㈱コーデ 代表取締役
日本ソムリエ協会認定 ワインエキスパート
占部恵子