日本肥満学会市民公開講座「日本食と肥満症美味しく健康に暮らすために」
2012年10月13日(土)、一般社団法人日本肥満学会主催の「日本食と肥満症 美味しく健康に暮らすために」というテーマの市民公開講座が京都市中京区の京都烏丸コンベンションホールにて開かれました。
肥満は大人だけの病気ではなく、今は小学生や中学生にも増えている現代病です。
その肥満症と日本食はどのように関係があるのでしょうか。
日本肥満学会は1980年肥満研究会として発足し、1984年には国際肥満学会議の要望を受け日本肥満学会として発展。肥満に関する様々な研究の他、肥満に対する正しい理解を一般医師、メディカル関係者(看護師・薬剤師・栄養士)や一般市民に普及するため広報や教育活動を行っています。
今回の目的は、肥満に関する研究を紹介するとともに、日々の生活における日本食の重要性を再確認していただくというものです。
講師は3名の先生方。
京都大学大学院農学研究科 食の未来戦略講座 准教授 近藤高史氏
「だしのおいしさと健康機能」
懐石・近又 七代目主人・総料理長 鵜飼治二氏
「食育の真の目的とおもてなし」
京都医療センター 予防医学研究室長 坂根直樹氏
「ストレスをためずにダイエットに成功するコツ」
会場は、30代~60代まで幅広い年齢層の方々が来られていました。
私は近藤先生と鵜飼先生の講座を受講。食に関する仕事をさせていただく上で、とても興味がありました。
近藤先生は、日本食・京料理には欠かせない「だし」についてのお話でした。だしは日本だけの独特の食文化。脂質が少なくカロリーの低い日本食にだしを使うことで、美味しさだけではなく、健康にも良いこと。
だしは多くの旨み物質を含み、昆布はグルタミン酸・かつおぶしや煮干しはイノシン酸・干し椎茸はグアニン酸。これらの旨み成分は、栄養と嗜好性を含み、そして健康や体・心に良いという実験結果が出ていました。
近藤先生は、かつおだしが大嫌いなマウスを、大好きに変える実験をされたそうです。マウスに3日間、かつおだしを飲ませると、繰り返し飲むことで、マウスはだしを欲しがり、大好きになったそうです。それは、かつおだしには元々嗜好性があり繰り返し飲むことで次第に美味しく感じるようになり、脳に刷り込まれていくそう。満腹感を促進する効果があることもわかり、メタボに効く可能性があることも注目されています。
さらに、かつおだしが心にどのような影響を及ぼすのかマウスで実験したところ、攻撃性の強いマウスに繰り返しかつおだしを飲ませることで、攻撃性が減少したそうです。
満腹感を感じ、心が落ち着き、イライラしなくなるというだしの効果は、我々人間においても生活習慣病や子供の食育にもとても通用する事例であると思いました。
その他の実験をまとめると、
・食後の胃の運動を促進する(消化に良い)
・腹持ちを良くする
・空腹感を抑制し、満腹感を増加させる
・唾液分泌を促進する
これらの事がわかっており、結果かつおだしは体に良いことを示しています。
昔、ある京都の老舗料亭のご主人が言っていた言葉があったそうです。
「だしは飲まなければ美味しくならない、繰り返し飲んでください。」まさに、近藤先生が伝えたい事とでした。しかし、忙しい現代で、一からだしを取ることは難しいと思います。信頼できる企業の商品や通販を上手く利用し、食生活に取り入れていけばいいのではと思います。
鵜飼先生は、「食育の真の目的とおもてなし」というテーマでした。主に、子供にとって、食事がどれだけ大事かというお話でした。また、食育とは「食を通じて何かを育むこと」。先生は定期的に京都市内の小学校を回り、子供達の食育教育に力を入れているそうです。魚や肉は生き物から命をいただいていること、お箸の持ち方やマナー、そして、最も大事なことは、親が子供達に正しい生活リズム、食生活をさせること。朝は早起きして朝日を浴びさせることで、脳内がリセットされます。そして、食べ物に好き嫌いがあって当たり前という気持ちで、嫌いな物でも食べさせる。親が美味しそうに食べる姿を見て、嫌いな食べ物を克服できることだってあります。親が積極的に食育に取り組むことで子供のイライラや集中力の低下などを防ぎ、心の安定した子供に育てなければいけないと強く仰っていました。
また、本物の料理とは言えないファーストフード店の増加、女性の社会進出による手抜きの料理、家族のコミュニケーション不足。たくさんの問題を抱える中、学校や家庭で子供に食の経験を増やしてあげて、食べることの意味や楽しさを繰り返し伝えていかなければいけません。
最後に少しだけ「おもてなし」についてお話をしてくださいました。
おもてなしとは、もの(お花を飾る・お掃除をする等目に見えるもの)、事(美しい所作や言葉遣い等)そして、お客様に満足・感動、余韻を与えること。おもてなしの大事な要素です。先生はお客様に、一週間、一か月、一年立っても「あの時のお料理は良かったな」と言っていただけるように日々おもてなしをされているそうです。
今回の講座を通じて、あまり知られていなかっただしの美味しさや健康に与える素晴らしい効用などを知ることができました。また、子供の成長には学校や家庭内での食育は不可欠だということです。とても勉強になりました。
まずは、家族や友人などと楽しく食事をすることを心がけ、足りない部分は通販を上手く手料理に活かし、日々の食事やおもてなしを楽しもうと思います。
ビジネスチャレンジ編集長
㈱コーデ 代表取締役
占部恵子


