アルジェリアの人質 | わたしのしらなかったこと

アルジェリアの人質

アルジェリアで現在も起こっている、武装勢力による人質立てこもり事件の展開は、とても予想できないものであった。

1月16日に武装勢力がガスプラントを襲撃して、そこで働いている多国籍の人質をとり、わずか一日後の17日に、軍が出動して人質救出の名目で空爆が行われた。

その結果、武装勢力、人質ともに多数の死者を出した。

多国籍の人質に対する処置としては、考えられないものだと思う。

各国に対する配慮もあるのだから、作戦も慎重になるだろうし、また、各国に援助を仰ぎやすい状況でもある。

しかし、実際に行った行動は、その全く逆の内容であった。


まだ事件が発生しているさなかであるためあまり断定的な事は言えないが、事件が起こった翌日に、空爆という最終手段に近い方法を採るのは、どうしてだったのだろう。

普通の人質事件であれば、犯人側との交渉を繰り返し、その度に譲歩を引き出していく。

そして、人的被害を最も抑える事を目的として行動を行う。

しかし、今回は人質ごと空爆するという、全く人命を軽視した作戦を採った。

周囲をアルジェリア軍で包囲しているのであれば、犯人を逃がす事も無いのに、焦りと思われる行動を採る必要は無かっただろう。


結局この事件は、人質襲撃事件と言いながら、国は内戦に近い考え方だったのだろう。

20年程前の軍事クーデター及びその後に続く内戦のため、未だ事件に対しては、武力を行使することを真っ先に考えてしまうのだろう。

そして、内戦が続いている紛争地域なのであるから、民間人の安全は保障できないという考え方をしているのではないだろうか。

さらに、多国籍の人質が取られている分、逆に各国から干渉されることを恐れて早期に解決しようとして、この様な結果となってしまったと考えられる。


しかし、人質事件が発生したときに、警察ではなく、まず軍が動いた事にも少し驚いた。

こうした事件には、日本でもアメリカでも警察がまず対処を行い、武力が必要になった段階で軍を呼ぶものだろう。

事件の規模にもよるだろうが、他国からのアプローチ以外で自衛隊が出動したというニュースを見た事が無い。

あさま山荘事件の規模になっても、警察が解決しているし。


こうした事からも、アルジェリアが今回の事件をもはや「事件」ではなく、「紛争・内戦」というレベルで考えている事が伺える。

そして、それは非常に恐ろしい考え方であり、国の治め方としては未熟であると思う。

日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、世界中で軍事力が警察の機能を果たしていた歴史は長い。

ただ、これらが軍隊と警察にはっきりと分かれる事になったのは、国が安定すればする程、国内に目を向ける警察と、国外に対処する軍では必要とされるものが異なっていくから。

日本の警察は、交通違反や窃盗、人権侵害、著作権違反など、暴力とは無関係の問題も多い。

しかし自衛隊は、こうした国内事情はともかく、外国からの武力行使に対抗する事が一番の役割なので、警察と自衛隊でかぶる機能はほとんど無いと言って良い。


しかし、アルジェリアは国内の事件に軍隊をいきなり派遣すると言う事で、現在の国のあり様を世界に示してしまった。

未だ、問題は力で押さえ込むものという遅れた考え方をしていて、非民主的な国家だという事を。