村上春樹さんの書き方
村上春樹さんの自伝的エッセイ。著者がどのような経緯で小説を書き始め、職業的小説家になったかを知ることができます。そして、かなり具体的にどのように小説を書いているか、またどのような考え方を持っているかという著者の内側を見ることができます。
普段、小説家の方々の作品には多数触れる事がありますが、このようにかなり具体的な書き方や考え方が公開されているものは私は初めて触れました。特に長編小説がどのような段階を経て仕上がっていくのかという手順を知れたのは感激しました。何度も読み返され書き直され修正され、最後には寝かせる（養生する）という場面を知れたのが感激です。
書くことと読まれること
村上春樹さんと言えば新作の発売がニュースになり、新刊は書店で山積みの平積みで日本で一番本が売れる・読まれる作家さんです。そんな売れっ子作家さんは順風満帆な作家人生を送っているのかと思っていました。
しかし、本作全体でところどころ繰り返し語られる”批判”について。デビューから今まで、読者はもちろん、批評家、さらには編集社からも批判を受けてきた事が書かれています。相当数の批判を浴びてきたことがうかがえるとともにその受け止め方と対処方法への記述に興味を引かれました。ただ無視するのではない。特に興味深かったのは制作中の作品への批判（意見）への対処。批判・意見もしっかり作品を磨き上げる材料にしているのは圧巻です。
文学賞について
芥川賞・文学賞についての記載も面白い部分でした。ノーベル文学賞を含め、文学賞の意味合いや、著者から見た文学賞、著者の文学賞との距離感は興味深い記述でした。今までは「芥川賞受賞」という言葉に私は盲目的な信頼をおいていましたが、一旦立ち止まるきっかけになりました。
小説家村上春樹さん
小説家になる経緯や様々な（長編・短編・エッセイ・翻訳）作品の具体的な書き方、そして物事に対する考え方が一冊に詰まっていて小説家を目指す人、小説を書いてみたい人にとってはこの本を読むことは貴重な経験になると思いますし、表現者の内側を見られるという点では小説をあまり読まない人にも表現者の内側を見られるという点でオススメしたい一冊です。
オススメの方
１．村上春樹さんが好きな方。
２．より深く小説・本について知りたい方。
３．小説家を目指す方。
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