Sexual Healing (DR.SWING Remix "R&B Mix")制作解説
再アップして欲しいというお声を沢山頂いたのでブートレグリミックスシリーズ第一弾であるこの曲を再度サウンドクラウドにアップしました。
そしてこのリミックスの制作手順をメルマガedge http://www.dj-swing.net/mail-magazine/ のコラムにて書いたので抜粋して公開致します。
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1、「How to Make Music」 by DR.SWING
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今回からスタートします、このコーナー、どのようにして音楽が作られていくかを解説していきます。
音楽をつくると一言に言っても色々な方法があります。ピアニストはピアノを弾きながら曲のイメージを作り出すだろうし、ギタリストはギターを弾いて曲のコードを決めていったりもするでしょう。僕は和太鼓以外そんなに上手く楽器を演奏するスキルは持ち合わせていないので、PCとDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)と呼ばれる作曲編集ソフトを使って音楽を作っていきます。
DAWも登場して20年以上が経ち、昔なら夢のような便利なテクノロジーを駆使して僕のような楽器が弾けない人間でもメロディアスでコード感のある音楽を作ることができるようになりました。
では具体的にどのようにして作っていくか、先日サウンドクラウドにアップロードして5日間で2000再生回数に到達しようとしてた瞬間、ブートレグという理由で音雲に消されてしまったSexual Healing (DR.SWING) / Marvin Gayeを参考に解説していきたいと思います。
まずは僕が制作時に使うDAWソフトであるABLETON LIVEを立ち上げて、SEXUAL HEALINGのアカペラデータを読み込みます。
最初に行うのはBPMの設定。オリジナルの曲調を生かしたリミックスに仕上げたかったので、ほぼ変わらない95に設定し、ABLETON LIVEのWARPという機能を使って正確に95に合うように修正します。元のアカペラデータのBPMがいくつかをしらべるにはSERATO DJのANALYZE機能を使い、BPM欄をクリックすることによって小数点以下2桁まで表示してくれるので、それをWARPの部分に入力します。
BPM設定が完了したら、アカペラにマッチするサンプリングネタを探します。今回は大ネタですが同じく80's MELLOW GROOVE名曲、"CURIOUS - MIDNIGHT STAR"を選びました。
先ほどと同じように"CURIOUS"をABLETON LIVEに読み込み、BPMを揃えます。そしてイントロ終わりの上モノ、ベースが入っている8小節だけにリージョンをカットして、ABLETON LIVEの素晴らしい機能である"ハーモニーを新規MIDIトラックに変換"を使ってオーディオからMIDIを作成します。ここがかなり重要な部分なんですが、この時に作成されたMIDIに正しくない音が含まれてしまうことがあり、それを耳で聴きながら正しくなるように修正していきます。
その後、そのMIDIで上モノのアレンジを行う前に、僕はまずリズム隊を作り込んでいきます。僕の持論ですが、クラブミュージックやダンスミュージックは踊るための音楽なので、リズムは最も重要なパートです(2番目はベース)。ドラムのパターンやグルーブ、音色が微妙であれば他がどんなに良くても全体で聴いた時に何か垢抜けない感じになります。今回のSEXUAL HEALINGでは、オリジナルのイントロにあるキックとクラップをチョップして引用しつつも、現代的なパンチ感を出すために自分がストックしているサンプリングドラムキットからアタックを出す為のコンプの効いた固めのキックと、TRAPで多用されるスネア音を足して、近頃の新譜と並べてかけても鳴り負けしないようなドラム音に仕上げています。パターン的にはインパクトとキャッチーさを演出する為にイントロとフック部分にはAUDIO TWO - TOP BILLIN'のパターンを引用しています。ハイハットやシンバル、その他オカズもここである程度作り込んでしまいます。
ドラムが決まったら、それに合うようにベースを作っていきます。先程抽出したMIDIのハーモニーから一番低い部分を抜き取って新たなトラックにコピー&ペーストし、ドラムのグルーヴに合ったベースラインを作っていきます。ポイントはデュレーション(音の長さ)とベロシティ(音の強さ)をかなり細かく丁寧に調節することです。これが変われば別の曲になるって言うくらいグルーヴが変わるので音色選びと同じくらい、それなりに時間をかけて作り込みます。
ベースが決まれば今度は上モノ。先程のMIDIを使ってまずは音色選びをしていきます。上モノを選ぶ時はまずは役割分担を明確にして音色のジャンルを絞って決めていきます。具体的にはメインのフレーズとなるシンセ音やギター音、空間を広げたり埋めたりする為のアルペジオやパッド音、コード感を厚く演出するためのキーボード並びにピアノ音、そしてベースのローエンドを補強する為のサイン波といった分類でそれぞれ選んでいきます。音色が決まればそれぞれが機能するよう打ち込みをアレンジしていきます。
全ての音色が決まった段階で、ボリュームバランスをざっくりととり、その後それぞれの音が干渉しないようEQやサイドチェインを使って周波数帯域を棲み分けさせたり、コンプレッサーを使ってダイナミクスをコントロールしていきます。他には存在感を出したい音に歪を加えたり、リバーブやディレイといった空間系のエフェクトもここでしっかりと調整していきます。これらはミキシング、ミックスダウン、TD(トラックダウン)と呼ばれる行程になります。この作業を行う際は必ずラージモニターという低域が25Hzまで再生される大きな専用スピーカーとラジカセのようなエンドユーザーが使うコンパクトな環境とで交互に聴いて、どちらで聴いても問題の無いように仕上げていきます。クラブ等現場での鳴りを考えた時にラージモニターで低音を把握しながら調整することが重要なのは素人の方でも分かって頂けると思います。
CRYSTAL SOUNDで使用しているラージモニターは"MUSIK ELECTRONIC GEITHAIN RL901K"というドイツ製の高音質スピーカーのスペシャルカスタムで、オリジナルとは別次元の音(オリジナルはドンシャリだがカスタムによって中域がスポイルされず、よりハイスピードなローエンド、歪の少ない高域)が再生できる仕様になっています。ラジカセには絶版のSONY ZS-F1をこちらもカスタムで仕様しており、ウチに来たクライアントからは毎回「ラジカセとは思えない凄まじい音が鳴る」と驚かれます。このラジカセはバブル期を引きずる時代のソニーが世界最強のラジカセを作ると謳ってあり得ないコストをかけて開発された製作エンジニアの自己満のような製品。98,000円というラジカセとは思えない価格が災いして当時全く売れなかった伝説の激レアラジカセです。恐らく国内にある9割以上がスタジオで使用されていると思われます。笑
ミキシングが完了したらマスタリングに移行しますが、プラグインだけで仕上げようとすると何とも味気ない無機質かつインパクトの無い仕上がりになってしまうので、きちんとCRYSTAL SOUNDのハイエンドカスタムアウトボードを使ってマスタリングしていきます。インスタでも投稿しましたが、以前サウンドクラウドにアップした2 PAC - ChangesのリミックスはMac Book Pro内でプラグインのみを使ってマスタリングしたバージョンです。音圧レベルは現代の標準値に合わせたラウドネスになっていますが、昨日CRYSTAL SOUNDのアナログマスタリング機器を使用してマスタリングしたところ、ほとんど同じRMS値(音圧レベルを示す値)であるにも関わらず、曲のインパクトや音の抜け・押し出し感が遥かに優れている仕上がりになり改めてアウトボードでの作業の重要性に気付かされました。なのでこちらのリマスタリングバージョンもアップロードしたので是非違いを聴いてみてください。https://soundcloud.com/dj_swing_jpn
この"2 Pac - Changes (DR.SWING Remix)"はメルマガ読者限定で両バージョンをプレゼント致します。(最後のコーナー"edge of this week"にリンクを載せています)
というわけで、今回はリミックス作品を題材にしたコラムだったので、主に打ち込みとミキシング、マスタリングがメインの解説になってしまいましたが、本来はこれにレコーディングという行程が加わり、そこもかなり奥が深い作業になります。
また別の機会にレコーディングについても解説したいと思います。
