男達よ戦いの荒野に死ね | 佐原敏剛文学塾

佐原敏剛文学塾

日本文学、海外文学を多角的に分析、批評する。名作といえど問題点は容赦なく批判する。

生涯青春という。実際、最近会った相当な年齢に達した男性はジープを駆って服装も革ジャンパーにサングラスといういでたちで若い夢を捨てていなかった。ジープは非常に値が張る代物で、若造がいくら背伸びしようと手が届かない。男はいつまでも夢を追い続ける。一体、夢を追わずに生きているなどと本当に言えるのか。私は友人と一緒にジープに乗せて貰い、初めて会ったばかりの男性がどんな人生を歩んで来たかが手に取るように見える気がした。大藪春彦に熱中し、女に夢中になり、いつか拳銃を手にしたいと夢見た青春は終わった訳ではないのだ。男がいて女がいる。男が荒野に立つ時、その目には最早女は影も形もない。見えるのはただ戦場のみである。戦いだけが男を奮い立たせるのだ。砂漠のキツネと呼ばれたロンメル元帥がエル・アラメインの戦いに身を投じた時、その目に何が映っていたか。男が男である以上逃げることが不可能な運命がある。塹壕の中で交わされる命懸けの友情がある。過ぎ去った青春の輝きは人それぞれであろう。ハードな男の生き様に血をたぎらせた野獣達よ。今もお前達には荒野が見えるか。機銃掃射が吼える戦場に今も立っているか。