同世代の道中 | 佐原敏剛文学塾

佐原敏剛文学塾

日本文学、海外文学を多角的に分析、批評する。名作といえど問題点は容赦なく批判する。

十九歳の時「ああ、もう人生の四分の一は過ぎてしまった」と早くも人生の短さを嘆いていた。しかし振り返ってみると四十を過ぎて人生の短さを嘆くのと、十九歳で嘆くのとでは感受性が豊かである分だけ十九歳の嘆きの方が暗く、重く、悲しく、孤独で、そして限りない希望に彩られていた。青春の絶望とは常にそうであると思う。対するに四十を過ぎた嘆きの方は虚無感に満たされて何とも沈鬱なものである。同世代を見ても大体同じように感じているらしく思われる。死への一本道が眼前に現れる。孤独にそこを辿るしかない道が続いている。道はいつか絶えるのだ。人生は登山に喩えられる。若い時代は頂上を目指していた。今はひたすら下ってゆくだけだ。二十歳はまだ五合目にやっと着いたばかりである。これから多くの出会いや別れが待ち受けている。勿論、ハードである。しかし頂上で同世代は一緒になる。そこからは仲間達の人生を自分の人生と重ね合わせながら一歩一歩を踏みしめて下山する。人生の厳粛さを思いながら。若い諸君は激しい劇のただ中にいる。笑い、泣き、怒り、楽しみ、精一杯生きている。成功も失敗も無い。人生は多様であり、それぞれに価値
がある。