自慢する男 | きーぽんオフィシャルブログ「Keep on lovin' you」Powered by Ameba

自慢する男

カフェでの話。



時刻は22時ごろだと記憶している。




私は1人でDS片手に斜め前から聞こえてくる男女の会話に耳を傾けていた。

盗み聞きをしていたわけではない。男の声がでかいのだ。




『そうなんだよ~。アメリカ留学の後は、ロンドンに行ってさ~、その時はもう英語余裕で話せたからロンドンで就職しないかなんてロンドンの会社でスカウトされてさ~ははは』



その男は自慢話をしていた。

いや、それしかしていなかった。



最後の『ははは』というのは、毎回自慢話の終わりに自分で笑っているのだ。

本人は気づいているかどうかは不明だが、恐らく長年培われた癖なのだろう。


こっちからすると、



その笑い声が『はい、ぼく自慢話しましたよ~』というブリッジに聞こえる。



【ブリッジ】・・・お笑い用語でショートコントなどの連続したネタの間にはさむ言葉や動作のこと。

ギャグの一種だが、複数回使用されるのが特徴である。(ウィキペディア参照)




その男の自慢話を覚えている限り羅列しよう。


★アメリカに数年留学。国際感覚に優れている。らしい。

★今はたかが・・・そのへんの、一部上場企業に勤めている。と「その辺のだよ~」を強調。

★入社3年目でたかが・・・年収700万しかない。・・・しかない!と二度言っていた。

★どの国に旅行しても、日本人に見られない。くらい日本人離れしてると云いたいようだ。

★趣味はサーフィン。サーフィン仲間に某有名人がいる。誰かは言えないがすごい人だと豪語。

★俺、モテルけど、今の俺にないのは彼女くらいかな。・・・第二の押尾先生になりうる発言。

★俺は要領いいから、仕事は何をやらせても早く終わる。なら、お願いだからその自慰行為(自慢)も早く終わらせてくれ。



皆さん、数々の自慢にお付き合いいただいてありがとう。

この自慢には必ず「はははブリッジ」がついてくる。



この男女、カップルでないのは確かだ。

男が口説いているのかもしれない。




だが、その正面にいるであろう女性の口から発する言葉は、



「へ~」

「すごいね~」



の2つだけ。

しかも感情ゼロ。



男がこんなに話してるのに!!!



早く気づけ!!!



いかに無駄な口説き方をしているかを!!!





チラッと男を何気なく見てみると・・・見た目は、20代半ば~後半。どうみても日本人。





そんなことより、相手の女性が可哀相だわ。言っとくが、こんな男性久しぶりに見た。私の周りにはいないタイプだし、二度は会いたくない。





時計を見たら23時近く。




うわ。あいつ、少なくとも1時間はずっと話してるよ。

あーあたしはもう帰るか。。。でもなんか後味悪いな。これで家帰るのって。。。





『そういえばさ、○○ちゃんは海外旅行とか行かないの?』




お。

やっと質問することを覚えた。




女性

『最近は忙しくて全然』





『マジでアメリカとかロンドンなら俺、色々案内できるよ。友達沢山いるしさ、俺英語も話せるしさ、ははは』




あぁ、そういうことか。

一緒に旅しませんかパターンね。





女性

『アメリカは前住んでたから大丈夫』




『え・・・・マジで?』





うん?いい流れだぞ。




『え~どこどこどこ?どこに留学してたの?』





女性

『家族と10年ちょっと住んでた』




いいねー。いいねー。




『なんだ~!早く言ってよ~』




お前が言わせるタイミング与えなかったんだぞ。

まぁ、恐らく女性側からしたら自分のプライベートは面倒だから隠しとこうと思ってたパターンかも。




『そしたら話早いじゃん!なんか気が合いそうだな~って思ってたのはそういうところか』





女性

『合わないよ』




きったねー!すっぱりと!




『人間だからね~合わないところもあるだろうけど、でも』




女性

『だって合わないもの。あたしそういう自分の生まれた国(日本)を小さく見てる人嫌いだし』




よく言った!

さすがアメリカ育ち!NOと言えるアメリカ!


いや、ここまで耐え抜いてからの「帰国子女です」発言はサヨナラ逆転ホームランに値する。




『別に小さくは見てないよ~ははは』






この『ははは』は、






いつものとは全く違う響きの『ははは』に変わっていた。

もはや自慢をするテンションは失われた時の『ははは』だ。





それを聞いて、私はなぜかスッキリした気分になった。





席を立ち上がり、





相手の女性に軽く畏敬の念を抱きながら、





彼女の後姿を相手に目礼をし、家路についた。





恐らく彼らも別々の家路についたことだろう。