とあるベテラン敏腕デカの事件簿〜第1話 | きーぽんオフィシャルブログ「Keep on lovin' you」Powered by Ameba

とあるベテラン敏腕デカの事件簿〜第1話

またもや連続事件が起きた。



場所は都内某所。若者に人気の路線にある、駅にほど近い住宅地だ。

事件は先週未明に発覚した。被害者が昨年からの三国志ブームの先駆けとなる【レッドクリフ】なる映画を観ようとした時だ。




音が出ない。
だがセンタースピーカーからノイズは聞こえる。ウーファーからは遠くで空爆が起きているような音がたまに聞こえる。


被害者はその晩、朝までアンプと格闘し結局翌日にパソコンで観るという、屈辱的な見方をした。



またか…。
昨年の「電化製品連続殺人事件」を彷彿とさせる。

あの時は被害者が断腸の思いで金で解決させた。俺の脳裏に忌々しい記憶が蘇る。
確かその調書は資料室の1つ「DJきーぽん旧ブログ」に、解決済み事件として保管されているはずだ。




俺は事件調書を読みながら煙草に火をつけた。
最近女房から健康をとやかく云われ、仕方なくセブンスターからセーラムピアニッシモに替えたばかりだ。煙草の吹い口が細くなり、まだ口に違和感を感じる。



それにしても…何かがおかしい。
今回は新品のアンプが相手である。



更に調書を読み進めることにする。




被害者は30代女性。職業・芸人。氏名・DJきーぽん。



おや?
昨年の電化製品連続殺人事件の被害者と同一人物ではないか。


被害者はその後、アンプメーカーに連絡し、業者が自宅まで点検にくる。
その業者は、アンプが悪いのではなくスピーカーとDVDプレイヤーが故障しているのではないか。うちのせいにするな!
けどもしかして…という場合もあるから、アンプは故障点検に持ってくぞ!ばかやろー。
と、被害者に不安を煽るような物言いでアンプを持ち去る。



不安になった被害者はすぐさまスピーカーメーカーに連絡。


電話口で「保証期間を過ぎているから、修理代は多額だぜ。へへへ。お前に払えるかな。それに故障しているかどうかは見てみないと分からないからな。スピーカーの命が惜しければ今すぐこっちに送ってこい!」ガチャッ。



DVDプレイヤーメーカーに至っては、凄惨を極めた。

問い合わせたところ、
「あーオレオレ!今使ってるの古いよ。だって8年モノでしょ?今はブルーレイ対応もあるからさー、それを手に入れた方が早いかもしんないよ。え、だからオレだって!
とにかくブルーレイ買っちゃいなよ。でもさ~オレにその古いの送ってくれたら診るだけ診てみるよ。故障してるかどうか診るだけでも金はかかるよー。保証切れてるから仕方ないよ。うちはそうゆうルールなんだよ。
だからさー、とりあえずお金振り込みつつ、ブルーレイ製品検討しつつで……




そこまで読み、俺はセーラムピアニッシモをもみ消した。
被害者の普段の屈託ない笑顔を思い出した。それがこの事件によって奪われたかと思うと胸が締め付けられる。



現在は、被害者宅にはアンプもスピーカーもDVDプレイヤーもない。


残るのは、まだ払い終わってないアンプとテレビのローンだ。



「壊れる時、電化製品は連続して叫び声をあげる」という都市伝説のような伝承は、本当かもしれない。




この事件はまだ未解決だ。


円満解決を願っているが…



また俺がここに登場しなくてはいけなくなるだろう。
まずは何が原因で音が出なくなったのか…その聞き込みからやるとするか。



(続く。…かも。)


※この話は事実を元に構成されていますが、一部登場人物に脚色があります。