吸血怪獣 チュパカブラ (2011年)
A NOITE DO CHUPACABRAS
監督・脚本 : ホドリゴ・アラガォン 製作 : キカ・オリヴェイラ、マイラ・アラルコン 製作総指揮 : ヘルマン・ピドネル 撮影 : セクンド・ヘゼンヂ
出演 : ワルデラマ・ドス・サントス、ジョエル・カエターノ、ペッテル・バイエストルフ
前作と比べると予算が少しアップしている気がしないでもない第2作。調べたら一作目が5万レアル(約230万円)、この二作目が16万レアルだから730万くらいにはアップしたようですな(笑)。
撮影は流石に別の方に任せたアラガォン監督だけど、このジャンルへの愛情溢れる自主制作系スプラッターのスタイルは良くも悪くも変わらず(笑)。CGはおそらく皆無、ある意味時代逆行的な手作り感いっぱいの泥臭さが微笑ましいのだ。
しかしゾンビに続いて有名UMAを題材にどんな感じかと思えば、こちらの予想の斜め上を行くストーリーだった(笑)。
妊婦の妻マリアと共に帰郷したドゥグラスを出迎える母親と兄弟たち。最近家畜が殺される事件が頻発、愛犬も死んでしまった父親は「チュパカブラの仕業に違いねえ!」と言うが、皆は昔から因縁のあるカルバーリョ家の仕業ではないかと思っている。
ドゥグラスらシルヴァ家はカルバーリョ家とは土地を巡って以前から犬猿の中。
肉を売りに行った店で飲んでいると
まるで昔観た「ロリ・マドンナ戦争」のように徹底的な殺し合いに発展する一編。
(「ロリ・マドンナ戦争」わかる方いらっしゃるかな?もう一回観たいなあ)
え?チュパカブラ?ああ、出てきますよ(笑)。
両家の兄弟どもが、よくぞまあの揃いも揃っての短気なボンクラ揃いなんで、当然のことながら血みどろの殺し合いになるわ、インテリのドゥグラスが暴力に目覚めるわの「わらの犬」的な(って褒めすぎだな(笑))転がり具合の話は、チュパカブラ無しでも成立するくらい濃厚なんだけど、兄弟たちが殺し合ってる間に、父親を亡くし悲嘆に暮れる母親がチュパカブラに襲われ、マリアと兄嫁も逃げだすのだ!
カルバーリョ家との抗争は旗色悪く、一人敗走するドゥグラスを追いかけるカルバーリョ家の末っ子。ところがここから訳がわからないのが(笑)、あわやというところで山の中で暮らす男に拉致される。
こいつがなんと人喰い男で、殺した末っ子の内臓を喰らい、黒魔術的な呪文を唱えると脱皮して若返るという、全く本筋に関係ないシークエンスがどんと用意されている(笑)。
全く訳がわからないが、末っ子を殺されたカルヴァーリョ家の連中が人食い男を始末している間に逃げ出すドゥグラス。ああ、一体あの男はなんだったのだ?!(笑)
再びカルヴァーリョ兄弟たちに追い詰められたところに今度はチュパカブラが登場!カルヴァーリョ兄弟たちも一人また一人と血祭りに。
生き残った長兄とドゥグラスは共闘しチュパカブラに立ち向かうも、イカれた長兄はチュパカブラに殺される。
ドゥグラスは必死で抵抗。下の写真の通り、最初の写真のインテリドゥグラスも悪鬼のような形相で、チュパカブラを石で滅多打ちに!頭部は原型を止めないくらいにグチャグチャにされ漸く倒されるのだった。
翌朝。何とか逃げ延びていたマリアはドゥグラスに声をかけるが、振り返った顔は、なんと、チュパカブラに変異している…え?噛まれるとチュパカブラになっちゃうんだっけ?とこちらが驚いているうちに終わっちゃう、投げっぱなしジャーマンのような一作でした(笑)
前作『デス・マングローヴ ゾンビ沼』と次作の『シー・オブ・ザ・デッド』は同じ舞台を共有する三部作で、登場人物の一部も重なっているとのことだったが、少なくとも「デス・マングローブ」と出てくる役者は同じでも役柄的には重なってなかったような(笑)。
冒頭で死んでしまうシルヴァ家の父親は、前作で男気を見せたガイドのおっさんだったし、何よりびっくりだったのは騒動のきっかけになった店で一人酒を飲んでいて退席する男が前作の主役のルイス役だった男優とわかっていたが、YouTubeでたまたま見つけたメイキング映像を観ると、なんとその彼がチュパカブラの着ぐるみに入っているではないか!
ウルトラマンのスーツアクターだった古谷敏が次作のウルトラセブンでアマギ隊員を演じたのと逆転した関わり方をしていたのも微笑ましい限り!(笑)
かように前作から3年経っても和気あいあいと作っていたであろうことがわかる本作。せっかくのUMAネタなのに、このモンスター退治ではなく、家族間闘争に物語の軸足を置いているのが新鮮と見るかかったるいと見るかは微妙なところだが、景気良い血糊の量と、相変わらずの手作り感にとりあえずまた点数は甘くなってしまうのでした(笑)。