T-34 レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版 (2018年)
T-34
監督・脚本 : アレクセイ・シドロフ 製作 : レン・ブラヴァトニック、ルーベン・ディシュディシュヤン、ネリ・ヤラローヴァ、アントン・ズラトポルスキー、ニキータ・ミハルコフ、レオニド・ヴェレシュチャギン 製作総指揮 : ミハエル・キタエフ 撮影 : ミハイル・ミラシン
出演 : アレクサンドル・ペトロフ、イリーナ・スタルシェンバウム、ヴィツェンツ・キーファー、ヴィクトル・ドブロンラヴォフ、アントン・ボグダノフ、ユーリー・ボリソフ、ピョートル・スコヴォルツォフ、アルチョム・ビストローフ、セミョン・トレスクノフ
いやあ、面白かったなあ。戦争映画はどうやっても人の生き死にがついて回るので、かつてほど「楽しく」見れることは減ってしまったのだが、これは別物。
最近だと真面目に「戦争」の虚しさも描きつつ圧倒的な迫力だった「フューリー」という戦車映画の名作もあったが、むしろ「大脱走」だったり、「眼下の敵」だったりの「史実」をベースに「戦争」を描きつつも、しっかり「娯楽作」として滅法面白かった作品群を想いだしてしまった。
第二次世界大戦下、独ソ戦の最前線。ナチス戦車に発見され、その砲撃を振り切って、前線基地に帰還する主人公ニコライ・イヴシュキン。その度胸と現場での判断力の片鱗を見せるこの冒頭が効いている。
腕を見込まれ、いきなり戦車長として部隊の撤退の援護=迫るナチス戦車隊への攻撃を命じられるイヴシュキン。農村で待ち伏せしてのナチス戦車隊への奇襲攻撃はスリリングかつ最高なのだ。
最初は彼の実力を訝っていた部下共々、次々と敵戦車を撃破するイヴシュキンの的確な作戦は見ているこちらも胸がすく。しかしナチスのエリート将校イェーガー大佐を相手に大健闘するも最後は敗れて捕虜となってしまうのだった。
その後ナチスの収容所で「死にたがり」として屈服しない姿勢を見せるも過酷な捕虜生活を送るイヴシュキンだったが、彼の前にあのイェーガー大佐が現れ、ナチスの戦車戦演習の訓練相手に無理やり指名される。
捕虜の戦車兵から部下の選抜と、ナチスが奪ったソ連の最強戦車T-34を与えられ、演習用の整備を任される。
しかし実弾の装備も許されず演習に参加するということは、若いナチス兵士の的となれということ、すなわち死を意味している。
イヴシュキンたちは戦車に残されていた実弾を見つけ、演習に乗じての脱走計画を思いつく…。
「4人の捕虜、1両のT-34、6発の砲弾」という無いないづくしの状況からナチスに一泡吹かせる物語の構造も含め、前半の農村と後半の街中と舞台は変えれど「宿敵イェーガーとの闘い」をきっちり物語の中心に置いてくれているのがまず心地良い。何にしても戦車だ。農村でも市街地でも、物陰に隠れての狙撃から、接近戦となり、最後は一騎打ちという迫力と緊迫感がとにかくいいのだ。
なんでもソ連の戦車「T-34」は全て本物だそうで。ミリタリーファンではないので画面を見てすぐわかるわけではないのだが最初の奇襲ではT-34-76対パンター(Ⅲ号戦車)、収容所でイヴシュキンが与えられた時も「なんだこれは?」と言っていた新型のT-34-85は、映画の終盤ではパンター(Ⅴ号戦車)の戦いと、分けているのがまた憎いよね。
狭い車内に小型カメラを取り付け撮影し、本物を役者自ら操縦していたそうだ。
その臨場感に、CGも駆使された戦闘場面の面白さは予想以上だったなあ。
イヴシュキンVSイエーガーの対決図式に加え、戦いを共にする戦車隊の他3人のキャラもいい。
だから通訳の女性アーニャが途中に加わっても「男たちの物語」がブレないのがまた好みなのだ。
(この女優さん好みだけど(笑))
被弾すると、爆発や貫通しなくてもく物凄い音や衝撃があったり、同じ砲撃でも狙うところを変えたり、使う砲弾を変えるなど、そんなアクション娯楽作として「わかってる」リアルな演出がとにかく気持ちいい。
戦車操縦の凄さを「白鳥の湖」でみせるなんて最高だね。
いやあ3ヶ月ぶりに劇場で観る映画としては大正解だったなあ(笑)。
最初の公開版(インターナショナル版)より26分長いというこの139分のデラックス完全版もあっという間。面白さにディレクターズカット191分も観たくなってしまったぞ(笑)。未見の方は是非であります!