静岡に戻っての二週間足らず。新しい仕事が取れたり、以前の客先に行ったり、行政はかつて一緒に仕事した方が少し偉くなって訪問先にいたりで5年半ぶりの再会を皆さん懐かしんでくださり、何とかやっていけそうな感触ながら、やはりコロナの影響で状況は厳しいまま。
ゴールデンウィーク前後にはうちの会社もリモートワークの方向なんだが、ルートセールスでもない広告の営業なんで、新しい客先や新しい仕事の為に人に会ってなんぼ。いったいどうなることやらと不安でもありますな。
そんな中、昨日は床屋に行ってさっぱりしてきてから、金曜夜からの雨で駅近くの自転車置き場に置きっぱなしの自転車を取りに行き、まっすぐ家に戻る生活。なあに、観ていないDVDが山ほどあるのだから不便はしないのだが、何となく軽い映画を見たくなり再見したのはやはりマカロニウエスタンなのだ(笑)
風来坊 花と夕日とライフルと…(1970年)
LO CHIAMAVANO TRINITA
THEY CALL ME TRINITY
CONTNUAVANO A CHIAMARLO TRINITA
MY NAME IS TRINITY [米]
監督・脚本 : E.B.クラッチャー(エンツォ・バルボーニ) 撮影 : アルド・ジョルダーニ 音楽 : フランコ・ミカリッツィ、エンゾ・ブルガレリ
出演: テレンス・ヒル、バッド・スペンサー、ファーリー・グレンジャー、ステファン・ザカリアス、ダン・スターキー、ジゼラ・ハーン、エレナ・ペデモンテ、エツィオ・マラノ、ルチアーノ・ロッシ、ミケーレ・チマローサ、レモ・キャピターニ、ウーゴ・サッソ、リカルド・ピズッツィ、パオロ・マガロッティ、ルイジ・ボノス
マカロニウエスタンと言えば派手な銃撃と、うわわとのけぞるような残酷描写を売り物にしてきたわけなんだが、そんなのに期待して当時テレビ放映を観たら、今で言う脱力系コメディだったので、びっくりしながらも大笑いした記憶がある本作。
冒頭、馬車にくくりつけた担架のような荷台に裸足で寝そべったまま引きづられている主人公トリニティ(テレンス・ヒル)。
記憶している限りマカロニ史上最も汚い、埃だらけの姿で、全くやる気なしの登場だ(笑)。
宿屋で鍋いっぱいの豆料理を全て食い尽くしゲップを一つ(笑)。
こんな彼だが、店に居合わせた賞金稼ぎが捕らえているメキシコ人を助けるかのように横取りして、後ろから撃ってくる賞金稼ぎ2人を一瞥もしないで後ろ向きに撃って倒す。
人を食ったようなすっとぼけた男なのに、実は「悪魔の右手」と呼ばれる凄腕ガンマンなのだ。
メキシコ人を連れて町に行くと、何と保安官バッジをつけた兄のバンビーノ(B・スペンサー)と再会。
右手がいれば左手もいるわけで、「悪魔の左手」バンビーノも凄腕ガンマンながら、本職は馬泥棒(笑)。たまたま人を襲ったところ、それがこの町に赴任してくる途中の保安官で、そのまま馬泥棒仲間が来るまでの間、保安官に成り済ましているというのだ(笑)。
バンビーノはトリニティを成り行きで保安官助手にするものの、トラブルメイカーの彼を歓迎しない(笑)。
町の有力者“少佐”と呼ばれる男が所有する馬をバンビーノは狙っているのでヘタなトラブルを避けたいのだ。
加えて町から離れた土地に、敬虔なモルモン教徒の開拓移民が集落を作っているのだが、この肥沃な土地を少佐がならず者を集めて力づくで奪おうとしているという図式。
トリニティ兄弟は、そんなことはどうでもよかったが、事あるごとに少佐の手下のならず者とトリニティが小競り合いをするわ、モルモン教徒のカワイコちゃん(に見えるがそれほど清楚にも見えない(笑))に何癖つけているならず者を蹴散らすわで、何となく二人はモルモン教徒側へついてしまう。
少佐は、近くの野盗の首領(当然単細胞(笑))と組んで、トリニティ兄弟と対決することになるのだが…。
なんせ開拓移民の皆様は神の教えに忠実で右の頬を打たれても左の頬を差し出す非暴力主義者。それでも神のための戦いということで立ち上がるのだが、クライマックスは壮絶な銃撃戦とは対極の、殴り合い掴み合いの大喧嘩で決着という微笑ましい作りなのだ。
とにかく主人公トリニティはやる気はないわ、バンビーノは落ち着いているようで意外に頭は悪いわ、主役コンビはこれでもかというくらい汚いわ、二人を狙う殺し屋との対決も拍子抜けするくらいの省力描写(笑)。
敵側もこちらが素手でとなれば素直に従うというのんびりしたムード。
凄腕なのにほとんど銃撃戦は無く、代わりに炸裂するのはバッド・スペンサーの代名詞ともいえる脳天パンチ(笑)
自分もレビューした「ガンマン無頼」「ガンクレイジー」「皆殺しのジャンゴ 」などの撮影監督として名を馳せてきたエンツォ・バルボーニ がE・B・クラッチャー名で撮った初監督作なのだが、テレンス・ヒルとバッドスペンサーの黄金コンビの出世作でもあるんだな。
これ以降、飄々としたヒルと、お人好しでバカ力のスペンサーのコンビが時にいがみ合いながらも悪い奴をやっつける数々の作品が作られている。
コンビが現代で警官を装うことになる同じような設定の「笑う大捜査線」や「笑激のダブルトラブル」もE・B・クラッチャーが監督している。他にも「サンドバギー/ドカンと3発」とかあったが「笑激のギャンブルマン」「笑激のボンゴボンゴ島」などは、あのセルジオ・コルブッチが晩年監督していたりするのだ。
とまあ、設定こそ違えど、ほぼ同じノリのアクションコメディでなんと15作も共演しているので、二人の人気の程が伺えるというもの(笑)。
そう言えばテレンス・ヒル単独の「レッドオメガ追撃作戦」なんてのを劇場で見た記憶が蘇ってきたぞ(笑)。
まずはこの「風来坊」のヒットがきっかけとして、70年代に入り末期となったマカロニウエスタンはやたらコメディ仕立ての作品が増えていくし、何より主役のテレンス・ヒルはフランコ・ネロのバッタもん的扱いから、飄々としたキャラクターが愛され、レオーネがこの作品に刺激を受けて、この雰囲気を発展させたかのようなキャラクターのまま、彼の『ミスター・ノーボディ』に抜擢したのだから侮れないのだ。
そんなわけでこんな昨今、人がバタバタ死ぬ映画が苦手なあなたにこそお勧め。哀愁ありながらもどこかとぼけた主題歌同様、本作の雰囲気がわかるオープニングをどうぞ!