血斗のジャンゴ | B級パラダイス

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

 金曜深夜自宅ロードショーは久しぶりにマカロニをチョイス。
「ジャンゴ」のタイトルに惹かれて中学の頃かテレビで観てたけど途中で寝てしまった記憶があるこの1本だ。
image

血斗のジャンゴ(1967)FACCIA A FACCIA

監督・脚本:セルジオ・ソリーマ 製作:アルベルト・グリマルディ 脚本:セルジオ・ドナティ 撮影:ラファエル・パチェコ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジャン・マリア・ヴォロンテ、トーマス・ミリアン、ウィリアム・バーガー、ヨランダ・モディオ、ジャンニ・リッツォ、アルド・サムブレム

もうこっちもすれっからしのマカロニファンなんで、タイトルに「ジャンゴ」とついても、あのフランコ・ネロの棺桶&機関銃のオーナーであるDjangoの真の続編は1本だけ、他にはテレンス・ヒルが同じ役をやった「皆殺しのジャンゴ」以外は無いってことはもはや学習した。
まあ、大ヒットし、俺みたいに「ジャンゴ」って名前がカッコいいぜ!と思う輩が多かったのだろう。マカロニ全盛期にはやたら「主人公の名前は「ジャンゴ」」ってのが跋扈し(30本ほどあるそうだ)、西ドイツあたりじゃフランコ・ネロ主演作は全部「ジャンゴ」のタイトルが冠されていたなんてのも事実なのだ。
かつてのジャッキー・チェン映画でも日本公開またはテレビ放映の時にジャッキーの役名が軒並み「ジャッキー」または「ドラゴン」だったのにも似てるが(笑)、タイトルそのものを変えちゃうっていう商魂が凄いよね。

この「血斗のジャンゴ」も主演のトーマス・ミリアンが「情無用のジャンゴ」でジャンゴ名だったので、配給会社は違うけど、えいやってこの邦題にしちゃったんだろうなあ。物凄く味があってカッコいい邦題だとは認めるけどさ(でも一発変換しない 笑)。


東部はニューイングランドで歴史学の大学教授ブレット・フレッチャーが学生たちを前に大学を去ることを伝えるという、長年マカロニを観ているがかなり意表を突いた出だし。

この肺病持ちで気弱なブレット教授が療養にやってきたテキサスで、逮捕された悪党ボーレガード・ベネット(以下劇中字幕にならい「ボー」とする)に水を与えようとしてあっさり人質になり逃走に同行、そのまま彼と行動を共にしていくうちに、全く相容れない立場ながら、病気持ちとお尋ね者の「死と隣り合わせ同士」という共通項があるためか奇妙な連帯感で結ばれていく。

根城とする砦の住民にも好かれるボーは強盗団を再度旗揚げし犯行を重ねるが、ある時彼をを助けるためにブレットはついに銃で人を殺める。この時からブレットは悪の魅力に取りつかれ、進んで悪事に加担していくようになる。

ブレットは自分の頭脳と銃の力があれば何でもできると自信を深め、銀行強盗を計画するが、一味に潜り込んだシリンゴ(ピンカートン探偵社の保安官)に罠を張られ失敗。さらに非情になりきれず子供を撃つことをためらったボーは捕まり、辛うじて一人逃げたブレットが強盗団の新たなボスになる。

ボーは捕まえたのにブレットが更に悪事を働くことに手を焼いた街の実力者らは、強盗団の根城を根絶やしにするため、ボーの仲間ザカリーを懐柔し、荒くれ者集団と砦に向かわせる。

このままでは住民たちが襲われるしまう!とボーは脱走し、辛うじて襲撃を免れた住民と逃走するブレットと再会する。

裏切ったザカリーら追手と、虐殺を止めるため追ってきたシリンゴと対峙する2人。しかし、自分の「悪の理想」に燃えるブレットとボーの溝はすでに埋まることはなかった・・・。

とまあ、実はその前の追手集団との乱戦も無く、ラストはまったく「血斗」ではない。しかしバンバン撃ち合う痛快さはなくとも、ズシリとしたドラマは見応え十分の一本だった。

大学教授が無法者と知り合うあたり、先日観た「ガンマン大連合」でもあったが、あちらは「知識」に裏打ちされた「理想」の為に闘うということに無法者が感化されるのが微笑ましかったが、こちらは、大学教授が悪に目覚め、今まで押さえていた凶暴な獣性を発揮してしまう・・・というところがミソで、その分、明るくはならないドラマだった。
ちなみに冒頭の教授がこんな顔になっちゃう(笑)
ジャン・マリア・ヴォロンテは「荒野の用心棒」でのラモンや「夕陽のガンマン」のインディオなど、物凄い悪役のイメージがあったが、凄い俳優なんですな。気弱な大学教授が次第に目に野卑な獣性を帯びていく様などゾクゾクしましたわ。
冒頭、ブレットが学生たちに「これからの人生は選択の連続だろう。それを正しく判断するのは自分である」という言葉を残すのだが、彼の「選択」は今までとは正反対の方向を選び、そして無法者であるボーにまで警戒される「悪」そのものになっていくなんざ、皮肉が効いていて面白かったなあ。

対するトーマス・ミリアンは、アイアン・メイデンのブルース・ディキッソンのようなおかっぱ頭で(笑)
粗野だが住民には好かれる愛嬌さを持った「マイノリティーの無法者」が本当に良く似合うのだ。
彼の行う暴力はいつも仲間のためだったり身を守るため。だからその彼が、「力こそ正義」と非情な悪になってしまったフレッドに対して、「正義は俺の魂の中にある!」と怒りを爆発させるラストもまた良いものだった。

監督はレオーネ、コルブッチと並ぶ「3大セルジオ」の一人、セルジオ・ソマーリ。「顔と顔」という原題通り2人ががっぷり四つに組んだずしりとした男のドラマ、堪能させたいただきやした!モリコーネの音楽も派手さやカッコ良さは今一つながら、骨太なドラマを支えるにふさわしい迫力あるテーマ、劇伴で満足。

DVDでは「ジャンゴ」の名前一切出てこないけど(笑)、公開時はどうだったんでしょうね?

んでは、カッコイイ予告編をどうぞ