真昼の用心棒 | B級パラダイス

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床での目覚めとはいえ早起きしたのに、午前中はうつらうつら。かなり涼しい一日だったが天気は今一つ。
午後は少しだけ出かけたが、先日の「ガンマン無頼」がちょいと今一つだったので、お気に入りの1本を再見した。

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真昼の用心棒 (1966) TEMPO DI MASSACRO (MASSACRE TIME)

監督:ルチオ・フルチ   製作:フェルナンド・ディ・レオ、オレステ・コルテラツィ 脚本:フェルナンド・ディ・レオ 撮影:リカルド・パロッティーニ 音楽:ラッロ・ゴーリ 主題歌:セルジオ・エンドリゴ
出演:フランコ・ネロ、ジョージ・ヒルトン、ニーノ・カステルヌォーヴォ、ジョン・マクダグラス、リナ・フランケッティ、リン・シェイン

当時のマカロニウエスタンの邦題は配給会社ごとに「用心棒」やら「ガンマン」やらつけられていたので、本作の主人公もまったく「用心棒」では無いのだが、そんなことも気にならない1本だ。

俺が映画の楽しさに目覚めた中学生の頃、つまりは今から40年前なんだが、当時静岡では民放がまだ2局しかなく、故荻昌宏さんが解説やってた「月曜ロードショー」と金曜には高島忠夫が解説の「ゴールデン洋画劇場」の映画枠の他にも、深夜や土曜や日曜の昼間に結構な数のマカロニウエスタンを放映していたのであった。

レオーネ&ウーストウッドの「荒野の用心棒」とコルブッチ&ネロの「続 荒野の用心棒」は月曜ロードショーでいつも2週連続で放映していた記憶がある。ビデオなど無かったあの頃、テレビの前にラジカセ置いて、一生懸命録音したものだったなあ(笑)。

で、この2本にノックアウトされて、西部劇もさることながら、面白いのはマカロニウエスタンだぜ!と、モデルガン手に入れたり、バスタオルをポンチョのように羽織ってみたりするところなぞ、いかにもアホな中学生らしいところで(笑)。

このマカロニにはまったのが、今にして思えば元々の怪獣映画好きに加えて、エクソシストでの恐怖映画、ブルース・リーでのカンフー映画に続き、上品な映画から道を踏み外した最初の3点セットみたいなものだったな(笑)。

サントラではない、なんとかオーケストラが演奏する「西部劇&マカロニテーマ集」的なレコードも買ったのもこの頃だ。収録されていたまだ見ぬマカロニウエスタンの放映を心待ちにしていたものだった。
2枚組で1枚が西部劇20曲、もう1枚がマカロニ20曲入りのこのレコードはお気に入りだったのだが、当然音楽はマカロニの方が断然カッコイイこともあって、マカロニ篇ばかり聞いていた気がする。思えば俺の音楽の好みもこの頃形成したようなものなのだ。

で、この「真昼の用心棒」もレコードで聞いていた「疾走する哀愁のメロディ」が大好きだったので、放映時には歓んで観たのだが、初めて観た中学生の時も「うわ、何か痛いシーンが多いなあ」と思っていたものだった。

「続 荒野の用心棒」でも神父の耳を切って口に押し込むなんていうエグいシーンがあり、うぇ~とか思いながらも「西部劇とは全然違う暗い空気感」に魅了されてはいたが、本作は冒頭の犬による人間狩り(その血で染まる川にかぶさるカッコイイ主題曲で一気に持って行かれたのは確か)に、敵もさることながら主人公たちも必要以上に弾丸をぶち込んだり、血糊が生々しかったりと、原題の「虐殺の時」が全編に渡る一編であった。

監督は言わずと知れたイタリアンホラーの帝王ルチオ・フルチ。当然当時はまったく知らなかったが、こうして見直すと残酷な光景が(邦題の通り)真昼間に展開される、マカロニの中でも結構異様な一編であるのがよく分かる。

そのある種の「異様さ」は、敵役であるニーノ・カステルヌォーヴォのキャラ、ジェイソン・スコット・ジュニアに集約されている。

白づくめの服で首をかしげてニタニタ笑い、何の躊躇も無く人をぶっ殺し、オルガン弾いてパパに甘えるわ、もうしつこいくらいサディスティックに鞭をふるってフランコ・ネロ演ずるトムをいたぶるわ、最期の最後まで卑怯だわで、マカロニ仇役の中でもマイベスト5に入る憎々しさ&基地外具合が凄いのだ(笑)!

で、対するフランコ・ネロはジュニアと対照的な、荒野の用心棒のイーストウッドが着ていたようなチョッキ姿も汚く(笑)、徹底的に鞭でしばかれ、出生の秘密(また出た! 笑)に驚きながらも、意地を貫き復讐に向かう姿がカッコいいことこの上なし。

加えて快作「荒野の無頼漢」(これも「無頼」だったな。でも映画は無茶苦茶面白い!)のジョージ・ヒルトンが演じるトムの兄、ジェフリーがまた良いのよ。
いったい何があった?のアル中での登場から、乳母を殺されてからの表情の変わり方、そしてピンチのネロを軽口叩きながら助けるところなんて、カッコ良さはネロに譲って、美味しいところいただきました!って感じで、最高なのである。
(左がヒルトン、右がネロ 。似てないのは訳がある  笑)

と、いう訳で、一捻りあるストーリーながら非常にテンポの良いドラマ。豊富な銃撃戦はフルチ印が垣間見える残虐性がスパイスとなって飽きさせない。最高にカッコイイ主題曲と共に、異様だけどマカロニらしいおススメの1本であります。
あ、ちっとも用心棒じゃないけど、気にしない気にしない(笑)。