原作が評判となり、アニメ化で大ブレイクを果たした本作。
原作を我が家に持ち込んだのは俺なのだが、その時点では喜んでついてきたのは上の娘のみ(笑)。
グロ及び血糊苦手な下の娘は、原作よりアニメで辛うじて追走できたくらい。
かみさんに至っては原作の絵に拒絶反応で(笑)2巻以降は多分読んでないという布陣での実写版鑑賞である。
そんな原作&アニメファンが二人もいる我が家では、この実写は観る前から話題ではあった。
タダ券貰ったから行こうぜ!と伝えていたのに、どうもネットの評価が低いと案じる上の娘に、
「原作にインスパイアされた別物だと思え!」「考えるな!感じるんだ!」と諭しながら自らにも言い聞かせ(笑)、久々の家族4人揃っての映画鑑賞であった。
進撃の巨人 ATTACK ON TITAN (2015)
監督:樋口真嗣 製作:市川南、鈴木伸育原作:諫山創 脚本:渡辺雄介、町山智浩撮影:江原祥二
特撮監督:尾上克郎 美術:清水剛 VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀、ツジノミナミ 編集:石田雄介 音響効果:柴崎憲治 音楽:鷺巣詩郎
出演:三浦春馬、長谷川博己、水原希子、本郷奏多、三浦貴大、桜庭ななみ、松尾諭、渡部秀、水崎綾女、武田梨奈、石原さとみ、ピエール瀧、國村隼
テレビアニメシリーズは、決して上手ではない原作の画を補う綺麗な「絵」でキャラクターの判別もしやすくなり(笑)、加えて立体機動の躍動感に、恐ろしい線で描かれた巨人の気色悪さを失うことなく、
且つ原作の時系列を少しずらしたり、言葉足らずの部分をしっかり表現したりで、ある意味原作を補完できているくらいの良作だったと思う。
紅白でも歌われていた主題歌のカッコ良さも含め、原作の世界観をいじらず、解りやすさ、カッコ良さをグレードアップし、原作以上に仕上げられていたものだったと評価したい。
アニメ鑑賞時は原作でストーリーを知っているのに何度も悶絶し、上の娘に至っては女形の巨人討伐で全滅したリヴァイ班の面々に涙していたくらいなのだ。
そんなコアなファン二人&そうでもない二人での実写版鑑賞後の感想は・・・
「巨人は最高!だが、うううむむむ」「後篇の方が面白いのかなあ」&「気持悪ー」「こわ~」であった(笑)
うむ、無類の怪獣好き、ホラー好きの俺としては、信頼している町山大将が脚本に参加しているという点で期待値が上がったのは、正直ある。巨人オーディションがあったらしいとか、CGだけじゃなくて「特撮」としてもこだわって作っているらしいという話も耳に入っていた。
そういう意味では、俺らがガキの時の「大魔神」もしくは「サンダ対ガイラ」鑑賞時に食らったトラウマを、今回観にきたガキに与えるくらいやってくれよな!という勝手な期待をしていたが、この点については期待以上であった。
原作通りの超大型巨人の出現シーンの圧倒感。その後にゾロゾロやってくる微妙に顔や身体のバランスが狂った禍々しい容姿の巨人たちも、15m級が殆どながら小さいのがいたりと良い具合に気色悪いのがまずいい。
この青白い身体のいい顔した連中の姿に、今更ながら「巨人ってでっかいゾンビなんだよな」って気づいたくらい無表情のままの容赦ない食いっぷり。
この「容赦ない」前提が無いと、巨人への恐怖が半減すると思っていたから、これには拍手!
貪るように喰らう!かじる!引っ張りあって千切る!潰す!血、ドヴァ~!(笑)。
まあ結構食われる場面が巨人との対比が多くロングショット中心だったりするんで、もっと食われる側の恐怖の表情とか食いちぎられて血ヘド吐くところとかのアップショットも欲しかったけど、まあ良しとしましょう。
現に上映前の予告編から本編始まってまでしゃべくってた馬鹿中学生女子がいて、いい加減黙らないとおじさん注意しちゃおうかと思っていたら、巨人襲撃でドン引きしたか、以来最期まで黙りこくったくらいだったので、大変良かったのだと思う(笑)。
原作でもすべてが明らかにされていない世界観を構築するのは一苦労だったと思う。
原作通りの18世紀風のドイツあたりのヨーロッパは舞台にできないし、たぶん城も森も草原も無ければ、馬も調達できないという理由もあるだろうから、軍艦島をロケ地に車だって走っちゃう「その後」の世界に改変したことも認めよう。
「かつて文明があった世界」として不発弾やヘリコプターの残骸やジャングルジム、コンクリート製っぽい建物も見えるのも「別の世界観」として充分ありだと思うし(もっともそれが無くなって100年ってのはちょっと早すぎる気はする(笑))。
エレンやらアルミンやら絶対日本じゃあり得ない名前(あったらごめんよ)の登場人物を、「どーみたって日本人」が演ずるのも「進撃」ならぬ「新劇」だと思って無視しようと決めていたから気にならなかった(笑)。
それでも「リヴァイ」や「エルヴィン」、そもそもエレンの名字の「イェーガー」なんていうドイツ風そのまんまの名前は慎重に排除されて、その分日本風の名前の登場人物が増えていたし。
いつだったか外国のアニメファンがコスプレで調査兵団の格好で自主制作している映像をYouTubeで見たことあって、見事な出来にビックリしたけど、原作通りにするならまさにあの森、金髪の主人公でないとね。
んなわけで、主人公エレンとミカサの関係も原作と一番違うところでもあるが、原作よりプラス5歳以上年齢が上がっている登場人物たちで、
それぞれ「復讐」ではなく「経済的・家庭の事情」で志願してくるなんていう設定も含め
様々な事情を内包しつつ、原作者からも「別なものでOK」のお墨付きの元、リブートされた話としては良く頑張っていたと思う。
ラストの「駆逐してやる!」の巨人化エレン大暴れは原作同様ながら、これも思った以上のヴァイオレンス描写で何よりだったし。
難を言えば壁の中の閉塞感、巨人への恐怖など原作に近いニュアンスを残していてくれるのは良かったのだが
「壁の存在への疑問」にズタ袋男などの「壁内での何かの陰謀」が加わっての謎解きも決着つかず、
原作でもまだ残している「巨人とは何か?」「そもそもこの世界の成り立ちとは?」など前述の「かつて文明があった世界」描写も含め
ほとんどの「んんん?」って部分が後編でないとわからないってのがヤキモキするところ
もちろん細かいツッコミはいっぱいある。
前述の100年問題や、ラスト、巨人エレンがなぜ彼と解った?その姿も原作とは大きく異なっているなど、後編で回収されそうなセリフや設定もあるが
原作である「調査兵団」ではなく「壁補修作業員」で訓練の様子の描写が無いまま実戦ってのはどうよ、とかね。
何よりあのサイズの巨人を人間が投げちゃいかんだろ~ってのが一番かな(笑)。
娘たちは「シキシマいらねー」と言っていたが(笑)、あのキャラ造形もちょっとマンガっぽすぎるかな(笑)。
役者陣では原作イメージのまんまの石原さとみのハンジが最高(笑)。桜庭ななみのサシャも合ってたし(このこ、可愛いんだね)
あまり好きな顔じゃないこともあり、絶対合わねーと思っていたミカサ=水原希子は原作のまんまでなかった分OKだったな。
それより原作離れた分、いつ裏切るのかと不安だった本田奏多のアルミンは裏切らなくてホッとした(笑)
我らがオーズ渡部秀くんと期待した武田梨奈がパンフの設定に書いてあった「強さ」を感じることなく退場したのは残念。もっとも武田梨奈はマッドマックスかよってくらい暴走はしてましたが(笑)
まったくノーチェックだった水崎綾女は汚れ役ながら生々しくていい感じ。
この3人は年齢的にも原作から落ちている「性」の部分も体現していて、このあたり原作ファンからは嫌われそうで可哀相ではあるな。
まあ、どうせ原作から離れるなら女子供ファンは置いてけぼりでも、いっそのこともっとエログロ大暴走して、大ヒットのトラウマ映画として歴史に名を残しても俺としては良かったんだけどなー(笑)。
というわけで、巨人描写は大満足ながら、あまりに「秘密」が多すぎて、後編への長い予告編のような出来だったのは残念。
9月の後篇、伏線回収しながら原作とはまた違う決着をすっきりと付けてくれることを祈るのみ。
でも恐らく次は・・・俺と上の娘しか観ない気がするなあ(笑)