出会いは偶然だった。
営業先から会社への帰り。静岡市内を走る車の中でその曲が始まった。
跳ねるようなギターリフから、ガツンガツンと音が重なり
無垢な少年のような、それでいてぶっきらぼうなボーカルが流れ出す。
俺の好きな疾走型とはちょっと違うが
好みのヘヴィな演奏に、何とも泣きのマイナーメロディ・・・
胸の奥で張り裂けそうな 想いはきっと真実だろう
という歌詞通り、彼らの言葉がまっすぐ届いてきた。
カッコイイじゃんか!誰だこれ?
今にして思えばプロモーションのラジオ局回りだったのだろう。
曲が終わったあとはメンバーが地元局のインタビューに答えていた。
曲の激しさとは打って変わった朴訥とした雰囲気、
変におちゃらけることもなく音楽に対し真摯に取り組んでいる姿勢が伺えて
何だか好感をもったのも覚えている。
曲名とバンド名を何度も口の中で唱えながら遠回りして帰社した。
そのバンド、THE BACK HORNの曲・・・シングル「涙がこぼれたら」を借りたのはその週末だった。
今夜生きる意味なんて知らねぇ/命がただ叫びだしてる…
俺が俺であるように胸は鳴る/想いを乗せて世界は回る
いつかみんな大人になってゆく/傷つくことに怯え言い訳をしてる
走れ 夜が明けてしまう前に/伝えなくちゃいけない お前の言葉で
サビの部分、そして終盤とグイグイと前に進みながらも、血を流しているが如き
まさに張り裂けそうな声で叫ぶような「歌」に改めて鳥肌が立った。
完全ノックアウト、俺の中の「男気カッコイイ曲」に即当確だった。
ただ、カップリング曲が今一つ気に入らなかったことが足を引っ張り
急いでアルバムを借りるまでには至らなかったが。
その後ベストアルバムだと思って借りてきたのがライブアルバム「産声チェーンソー」だった。
これまた何曲か拾い聴きしたのがあまり乗り切れずさっさとPCに取り込んだまま
俺にとってTHE BACK HORNは「涙がこぼれたら」のバンド止りとなっていたのだった。
月日が流れ、昨年から「男気カッコイイ曲」を集めてマイ・コンピレーションアルバムをよく作ったが
「涙がこぼれたら」は当然ながら、「産声チェーンソー」から「サニー」をピックアップした。
何度か聴いているうちに、その痛みを感じる詞の世界に「カチッ」とはまる瞬間があった。
スタジオバージョンも聴いてみたいと思った矢先にベスト盤が発売された。
その前後だろうか、何度か耳にしていた「静と動のコントラストがカッコいい」曲があった。
アニメ「ガンダム」の主題歌である「罠」でこれまたTHE BACK HORNだと知った。
期待に急きたてられてそれらが入った「 BEST OF THE BACK HORN」を借りてきた。
酷く後悔した。
「涙がこぼれたら」以外をチェックしてなかった自分を。
「産声チェーンソー」をしっかり聴きこんでなかったことを。
凄い。ほんと凄い曲のオンパレードの2枚組25曲だった。
どの曲も個性的で・・・ただひたすら圧倒された。
ベスト盤も、知らないバンドだとせいぜい1,2曲がお気に入りになって、
曲の半分が「まあまあ」ならいい方・・・なんてことはよくあるが
THE BACK HORNは違った。このベスト盤は掛け値なしに「ベスト」盤だった。
それからは近隣のレンタルショップにあるアルバムをすべて借りまくり
初期の何枚かを除き一気に揃えてしまった。
それ故、リリース順は関係なく、楽曲単位で聴くことが多いのだが
初期のアルバムの「哲学的」ともいえる歌詞とダークで激しい曲調と
「日常」をしっかりとらえながらも「作品」として聴きやすくなった最近の曲
どちらも一緒に楽しめている。
特にこの9月にリリースされた最新アルバム「パルス」は凄い!
またベスト盤を出したのかと思いうくらい捨て曲がないのだ。
「世界を撃て」「覚醒」「白夜」「さざめくハイウェイ」・・・
もはや盲目的なファンになった俺はタイトルだけで痺れてしまったりしているのだが(笑)
彼らの魅力は何といっても「曲」の良さ。それに尽きる。
重量級のヘヴィな曲、涙がでそうな泣きのメロディで疾走する曲での
何とも個性的で癖のあるカッコイイギターに、曲をグイグイひっぱるベース、
そして手数が多く、また引き出しも多い、様々ななリズムを奏でるドラムスの
どっしりとした演奏に乗ったボーカルが絶品なのだ。
哀しさや怒りを内包しつつ、まっすぐに進む、その狂おしいまでに野性的な声!
さりげなく、優しい曲、煌めくような青春を感じさせる曲では
泣きのメロディが一転し、痛み、苦さを乗り越えてささやかな希望に向かって進んでいく、
その切ない声にこちらの胸が張り裂けそうになってしまうのだ。
きっと、本当にメンバーが音楽を通し「生きることに真面目」なんだと思う。
実際彼らの歌には「命」「生きる」という言葉が何度も登場する。
愚直なまでに一生懸命なのだと勝手に想像してしまうが
生きていく中での痛みや不安、そして希望などの様々な感情が
曲に、歌に真っ直ぐでてくる。
声質も合わせて、それが「息苦しさ」に感じる人もいるかもしれない。
でも、魂を削り創り上げているかのような彼らの曲の数々に
本能的に大きなエネルギーを感じるのは確かだと思う。
それは太陽の暖かな光というより、月の蒼い光のような哀愁を帯び、
しかも多少狂気をはらんでいるような危うさもあるのだけれど
そこがまた魅力的なのだ。
真摯でエネルギッシュ、非常に日本的でもあり、かつ無国籍風でもある曲調が好まれるのか
前述の『機動戦士ガンダム00』の「罠」、『アカルイミライ』の主題歌「未来」や、
実写版『CASSHERN』では挿入曲「レクイエム」、同じく実写版『魁!男塾』では「刃」
映画『ZOO』主題歌「奇跡」と映画・映像の曲に取り上げられることが非常に多いバンドだ。
上に記したものをはじめ、彼らは頑ななまでに英語を使わないバンドだ。
曲名に横文字の言葉が出てくるときはすべてカタカナ(歌詞も確かそうだった)。
その反面、漢字一文字、或いは二文字の曲名の多いこと!
日本語にこだわりを持っているんだと思うし、無理なくリアルな詞を求めた結果なのだと思う。
変に「カッコつけ」だけで英語に逃げてないのだろう。
なんとも潔いじゃないか。
そしてそれ故「歌詞」の伝わり方が尋常じゃないのもまた確かなのだ。
歌詞カード見なくたってある程度わかるなんて素晴らしい!
っていうかこれが正しい日本のバンドだ!(笑)とも思ってしまう。
70年代歌謡曲に通じるようなセンチメンタリズム爆発の哀愁メロディに、
そのしっかりとした「歌詞」が乗った時の「歌」の強さは誰でも認めざるを得ないだろう。
耳を捉えて離さない、まるで手負いの獣の叫びのようなボーカルの魅力と共に
しっかり「歌」が伝わるからどんなにヘヴィな音でも邪魔にならないのだ。
というわけで、今年1番聴いてるバンドであることは間違いない。
自分で「MY BEST盤」を作り出したらもっと音源聴きたくなり
最近はシングルまであらかた借りまくってしまった。
そのアルバム未収録のシングルカップリング曲の、これまた個性的で素晴らしいこと!!
本当に溜息がでてしまうよ。
もう夏のロックフェスに何度も出たり、多くの方に認知はあるのだろうけれど
今年本格的に彼らに嵌れた歓びとともに
まだ触れてない方がいたらぜひとも…の思いを込めて
一度消えてしまって随分形が変わった気もするけど(苦笑)
長々としたためてみました。
興味があったら以下まで・・・・
http://jp.youtube.com/results?search_query=THE+BACK+HORN&search_type=&aq=f
前述の曲以外にも
歌詞をじっくり聴くと泣けてしまう「美しい名前」
http://jp.youtube.com/watch?v=rl71XFumXLo
特攻隊にインスパイアされた歌だと聞くとまた一段と切ない「コバルトブルー」
http://jp.youtube.com/watch?v=q7HssqyOO2g&feature=related
これもまた疾走する曲に歌詞が切ない「声」
http://jp.youtube.com/watch?v=xMQ72dVVXi8&feature=related
このあたり、是非聴いてみて欲しい。