行け!トライポッド!「宇宙戦争」 | B級パラダイス

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。


宇宙戦争 (2005)  WAR OF THE WORLDS
監督:スティーヴン・スピルバーグ  製作:キャスリーン・ケネディ   コリン・ウィルソン 
脚本:デヴィッド・コープ   ジョシュ・フリードマン  撮影:ヤヌス・カミンスキー 
音楽:ジョン・ウィリアムズ  ナレーション:モーガン・フリーマン
出演:トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、 ティム・ロビンス、 ジャスティン・チャットウィン

運動会で疲れていたせいか、昨夜は家族全員居間でTV観てたら寝てしまいました。
かみさんと下の娘は途中で起きて一足先に布団に行って寝直したのに自分と上の娘は朝まで床で熟睡・・・。
アタタタ体が痛いと二人で起きてシャワー浴びたら目が覚めちゃったので、
朝6時から二人で早朝映画劇場と相成りました(笑)。

で、娘のリクエストで観た「宇宙戦争」(笑) おもしろかったなあ。
有名なH・G・ウェルズの同名原作を映画化した53年版「宇宙戦争」はその昔「ゴールデン洋画劇場」で手に汗握りながら観たものでしたが
今回のスピルバーグ版リメイクは9.11を踏まえて侵略されたことのないアメリカに「圧倒的な侵略」をつきつけてきます・・・
・・・なんて政治的見解は観てる間はまったく思い浮かばず(笑)、
ただひたすら破壊と殺戮を繰り返す宇宙人のマシン=「トライポッド」の「怪獣」的な存在感に
娘と一緒に手に汗握り(内心拍手喝采)でありました。すんません(笑)

空が突如不気味な黒い雲に覆われ、吹き荒れる強風、激しい稲光と落雷。
落雷であいた地面の穴。何事かと集まる群衆。ズズンと大地が震え、地割れが伸びて
アスファルト突き破り、地面からブオォォォォって出現する巨大な「何か」!

立ってみりゃ60m!ちょっと腰高なれど、前傾姿勢も物々しく戦闘的でよろしい。
あっけにとられてる人間を蹴散らし、街をこれでもかと破壊しつくす。
白熱光線は人間を文字通り塵と化す殺人光線!
一体こんなデカイのがいつから地中にいたんだ!道路工事のとき気づけよ!とか
トムだけ光線に当たらなすぎだぞ!とかいうツッコミが時々頭を過ぎるものの
このマシン登場までの緊迫感とマシン登場後の破壊&パニック描写は大興奮でした。

1体だけで「もうわかりました!勘弁してくれ~」ってくらい充分怖ろしいことこの上ないのに
火達磨暴走列車に、流れ行く死体。他でも惨事が起こっていることを暗示させつつ
その後も逃げる丘の上から、川の中から、何体も何体も登場してくる威圧感と恐怖。
ワラワラ逃げ惑う群集に容赦ない攻撃が俯瞰で描写される。
人間側の武器は歯が立たない!でもとにかくなんとかせねば・・・と虚しい攻撃を繰り返す軍。
次第に「絶望」の二文字がトムのみならず観ているこっちにも伝わってきます。

もうどっから観ても怪獣映画です。最高でした。
怪獣映画の中でもこれだけ圧倒的に破壊しつくしたのは珍しいのでは?
ガメラ3の渋谷破壊の90分拡大版のごとき壊しっぷり、殺しっぷり。
おまけに人間狩りして血は吸うわ、ちゃっかり籠にキープするわ・・・
もはや「戦争」などではありません。一方的にやり放題であります(笑)<

ここに軍部上層部の歯軋り、科学者の役に立たない考察や秘密兵器開発(笑)、
ヒステリックかつ絶望的になるマスコミと政府首脳のいがみ合い、または諦めがあったら
もっと俺の好きな「怪獣映画」のフォーマットっぽかったりするんですが
ここではその代わり労働者レイ=トム・クルーズの家族再生が平行して描かれます。
53年版はこんな主人公&展開じゃなかったと記憶しているけど
とにかくグエムル並みに局地的&個人視点でストーリーは進みます。

それにしてもスピルバーグ映画にいつもいない「父親」が全編に渡り登場&活躍するとは珍しいパターン。
考えてみれば友好的宇宙人の登場する「未知との遭遇」と何から何まで正反対でしたな。<

別れた妻との息子ロビーと娘レイチェルを守り、「ママのとこに連れて行く」ことだけを目的に
レイは彼らを守るため懸命に・・・正義を貫きながら・・・ではなく、
例え「人の道」を外れてさえ!奔走するってのもこの手の映画じゃ珍しいパターン。
スピルバーグの暗黒面が炸裂してました。

ロビーと生き別れた後(この時点では死んじゃったと思うよなあ・・・)レイとレイチェルは、
宇宙人になんとか抵抗したいと考えるハーランに助けられる。
彼に感謝しつつもレイチェルの安全を考えると相容れない彼の行動。
極限状態の閉鎖空間での二つの価値観のせめぎあい・・・
ここだけで1本映画ができそうなくらい、ティム・ロビンスとのこのシークエンスは
全体の中では浮いてるのだけど、共通の敵がいても尚、理解しあえない人間もいるという、
厳しい現実が浮かびあがり、なんともシニカルかつ残酷なシーンとなっております。

ラストはリメイク前と同じく「もうダメだ」って時に敵が自滅していくのだけど
原作知ってるだけに拍子抜けとはなりませんでしたな。
みんなで自決だ!または最後の勝負だ!って大統領自ら戦闘機に乗ったりしなくてよかった。
オープニングの静かな恐怖同様、静かな勝利の後には
レイの「家族再生」のドラマも決着を見るのだけど、押し付けがましくなくてよかったです。

それにしても子役のダコタ・ファニング、しっかり女優でしたなあ。凄いわ。
その代わりこの手の映画で一人はでてくる「お、いいな」オネーチャンが
まったく出てこないのも殺伐さに輪をかけてましたな。

いやあ、しかしトライポッド最高だなあ・・・(どっちの味方だ・・・笑)