真昼の月 | B級パラダイス

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海街diary2 真昼の月 吉田秋生 小学館 フラワーコミックス

 

先日本屋でかみさんが見つけた一冊。

普段女性漫画家の作品はほとんど読まない自分が

唯一敬愛する吉田秋生の新作であります。

1年以上前に読んだ「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」の第2巻が発売になってました!!

その時も感動してブログしたためましたが

(拙稿はこちら→http://myhome.cururu.jp/django/blog/article/31001194154)

今回もじんわり感動させてもらいました。

 

前作は長女の幸(28歳看護師)、二女佳乃(22歳銀行員)、三女の千佳(19歳店員)の

三姉妹を鎌倉に置いて出て行った父親が、15年後の現在、遠く山形で亡くなった知らせが入り

その葬式で出会った、彼女たちと母親違いの妹すず(中学1年生)を

三人が引き取る表題作から話が始まりました(これが泣ける話なんだよなあ・・・)。

 

そして、二女佳乃と高校生藤井との恋と別れ(佐助の狐)や

すずが所属したサッカーチーム湘南オクトパスのチームメイトとの友情(二階堂の鬼)

と物語が広がり進みながら、すずと三姉妹の距離が狭まっていき

人が人を大切に想う気持ち、人が進もうとする道を見守る優しさ・・・

そんなものがぐっと胸に迫る、気持のよい読後感を与えてくれる傑作でした。

 

そして今回の「真昼の月」もまた・・・

すずが佳乃の元彼氏の藤井と接し、彼を理解する「花底蛇」、

すずとチームメイトたちの織りなす初恋と友情の二編「二人静」、「桜の花の満開の下」

幸と、彼女たちの母親(父親が去った後、同じく3姉妹を捨てて出て行った)との再会を

描いた表題作「真昼の月」の4編もまた、登場人物たちのさりげない思いやりや

誤解と軋轢を繰り返してもその人と向き合っていく様子などを通し

友人たちと、そして家族の絆を本当にさりげなく、そしてこの上なく優しく描いています。

 

本当にすぐ隣で起こっていそうなささいな気持のすれ違いや

うんうん・・・と思わず頷いてしまう、身に覚えのある苛立ち。

そして、それらを乗り越えたあとの「理解」。

 

そこに見えるのに気づかない・・・または見ようとしてなかった

まるで「真昼の月」のような様々な人の気持ち。

「(真昼の月が)夜だけじゃなく見えるなんて得した気分」というすずのまっすぐな台詞が

大人たち(幸)にしてみれば「おトクなのかわからない」けど

見ようとして見えるようになった、というのはとても大きいことなんだよね・・・。

 

すずが、幸たち姉妹から父親を奪ってしまった自分の母親のことを謝り

涙するシーンの苦く、痛いこと・・・。

しかし幸の意地がすずの涙で和らぎ、自分を、そして母親を理解していくことになります。
迷い悩み、怒りや憎しみを持っても、人のことをとやかく言えない自分もいる。

誰かに傷つけられたと思っても、いつの間にか他の誰かを傷つけてることもある。

幸だけじゃない。俺も生きていく限り、何度もこれから繰り返していくのでしょね、きっと。

それでも優しくだってなれるのです。負の感情を抑えて無理に「許す」のではなく、

ありのままの事実に向き合い、しっかりと「見る」ことで

「理解」はできるのだと、そっと教えてくれる物語でした。


聖人君子もいなければ極悪人も出てこない。

本当に日常的な、でもたまらなく愛おしい物語の数々。

ほんと素晴らしいです。ついでに言えば鎌倉に行ってみたくなること請け合いです(笑)。

 

吉田秋生の以前の「ラヴァーズ・キス」も登場人物が何人もかぶるので

思わず読み返してしまい、この時間になってしまいました。

(でもあの作品の彼女の画は嫌いだなあ(笑))

 

前作のブログで紹介したら何人もの人がご購入してくれたけど

この第2巻も、絶対後悔しないのは保証しますので

機会があったらぜひぜひ・・・であります。

 

(あ、書店でご注文の際は「よしだあきみ」でね、たまさん(笑))