昔の配給会社の人々は、日本語による宣伝効果と内容を端的に表現する
のに腐心して、なかなか気の利いた邦題を考え出したもので、「戦場に架ける橋」
など、観客の心をくすぐる題を考え付いて、本国よりも日本でヒットしたなんて作品
もある。
「夕陽のガンマン」は、その邦題の秀逸さでより観客にアピールしたし、内容の濃い
ものだったから、よりその邦題が後々まで残って語られるものとなった。
そんな映画でこの「名誉と栄光のためでなく」という邦題で公開されたものは、今では
原題をメインにされ、サブタイトルで付いていて、ディスクを見た時は、同じ映画だった
のかが分からなかった・・・。
もっともこの邦題も見事なのだが、内容が伴っては・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=uoFoyHHpw_c
「名誉と栄光のためでなく」 六十六年公開作
この映画は、暇を持て余していた学生の時、この邦題に惹かれてみたものだった。
フランス外人部隊というのにも惹かれていたし、何より戦闘に対する心持ちを邦題から
考えれば、人を殺して出世するあるいは階級が上がるのとは違う思いで軍隊に、兵士に
なる人も自分なりの正義感からとかだと、格好いいと見るからだったが、空挺部隊として
インドシナで窮地に陥り、そこを何とか潜り抜けて一旦退役した後、上官からの誘いに
再び部隊に参戦して着いたところが「アルジェリア」となり、独立を目指す民衆からそれを
阻止する側に回るという、このアラン・ドロン演じる副官にとっては、いささか違った戦いと
映り、上官のアンソニー・クィーンとの対立から隊を去る・・・。
と、アラン・ドロンを主役に据えれば、この邦題はそれなりの意味を持つのだが、この映画
においての立ち位置は、アンソニー・クィーンもいれば、ジョージ・シーゲルもいて、視点が
少々曖昧だから、これと「アルジェの戦い」を合わせて見ると、この邦題がドロン視点なのが
分かってくる。
開放する気概で望むインドシナと、抑制を旨とするアルジェリアと見て配給会社は日本で人気
のドロン視点が納得出来るものである。
しかし今では原題を付けて、それを先に付けて販売するということであれば、現代では陳腐な
言葉に成り下がった「私利他利」の功徳は、化石化したものかも・・・。
もっとも邦題が良すぎる「名前負け」した映画ともいえるかも・・・。
ベトナム兵のインドシナ戦などしょぼいし、アルジェリアも戦闘場面は今一だし、アラブ人のシー
ゲルはないし、あくの強いクィーンの上官は一応、権力に対する願望を垣間見せるのだが、なん
だか違っていて、刺身のつまの女優は印象が今一で、と、映画全体が今一だが、これに「アルジェ
の戦い」を加えれば、独立を希求する民衆の思いと、それを阻止するだけの戦いに対する気持ちが
良く理解出来て・・・。
と、この映画でそこまで描ければ、いくら甘っちろいドロンの、甘い苦悩の表情も客に訴え方ものにな
ったのではないのだろうか・・・。
まぁ、この映画を想いだしたのは、「竹島」の問題でフランス外人部隊の活躍という、軍ががんじがらめの
日本でなく、傭兵というものであれば・・・、という夢想のお陰です。
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- Amazon.co.jp といったところで、またのお越しを・・・。