ブロンソンの 映画の中では一番派手でもなく、それでいて
しっとりした無骨な男の、優しい眼差しが見れる映画。
http://www.youtube.com/watch?v=KeyF-Qwvov8
「雨の訪問者」 七十年公開作
監督 ルネ・クレマン 音楽 フランシス・レイ
「禁じられた遊び」「太陽がいっぱい」「パリは燃えているか」等、大ヒットした
映画の監督が、また「さらば友よ」のシナリオを書いたセバスチャン・ジャプリゾ
がブロンソンを想定して書いたシナリオがこの作品で、音楽を「ある愛の詩」「白
い恋人達」のレイとくれば、作品自体もそれなりにできはいいものであろうと予想
がつくが、ブロンソンにとって、この作品は無骨で無頼な男くささに、加えた優しさ
が光ったものとなった。
また共演のマルネール・ジョペールの暴漢に襲われ、それを撃退するか弱い演技
と、そこからの犯行隠避の身体を張った演技には、女性としての愛らしさが光り、
なかなかのものであった。
にしてもクレマンの仕立て上げるサスペンスは、時間の経過と共に観客をも緊迫
させる。その上に音楽の使い方を熟知しているから、効果的な音を被せていた。
で、ブロンソンの登場にも、一段と際立つ場面というか、目立つ登場の仕方を組ん
でいて、季節はずれの風光明媚な観光地の雨の惨劇というものと、犯行隠避に走
る女と、全く違った犯罪の犯人捜査のブロンソンが複雑に絡まり、演出が巧みにそ
れらを結び付けていく。
シナリオ自体がブロンソンを想定しているから、無骨で似合いそうもない結婚式の
白のイメージに髭面の場違いが、強烈なインパクトを与える。
だけに見ている観客は、最初から出ているでないブロンソンの存在感に圧倒され、
女性と取っていい奴か悪い奴かの判断が、結局はつかぬまま最後のボタンを、
女性に返す場面で、ああ、優しいいい男だったのだと完全に納得する。
これはもう「さらば友よ」の共犯を最後まで吐かず、煙草に火をつけてもらうも
知らん振りで押し通したブロンソンの男気そのままで、ブロンソンの魅力を最大限
に引き出していた秀作である。
惜しむらくは、ブロンソンは女に対する目がないのか、ここでもかぁちゃんを出演さ
せているが、大根はどこまでいっても大根で、ちっとも性悪女に見えない。
それでもジョベールのショートカットの小柄な体躯に可憐な心細さと、無骨な髭面の
そこはかとない優しさの対比は、「男とはこうあるべきだ」の見本的なもので、ブロン
ソンに対する印象が深まる作品ではある。
にしても、この七十年、一気にブレークしたブロンソンは、数多くの作品に出演してい
るが、この雨の訪問者のような、ドンパチも派手でなく見させる映画に出ていないのは
何とも惜しい・・・。やはりフランスとアメリカの娯楽作品に対する考えの違いなのか、
「さらば友よ」「雨の訪問者」は共に、フランス映画、そしてレオーネの映画「ウェスタン」
はアメリカ資本の、マカロニ・ウェスタン・・・。
陰のある無骨な恐いけど良い人を演じさせる、それもシリアスで・・・。
「今を生きる」の教師役をブロンソンがやったら、それこそ甘さはないがほろりとさせる
教師像が出来上がったかも・・・。今ではもう無理な注文になってしまうが・・・。
といったところで、またのお越しを・・・。
そうそう、この映画の音楽も秀逸である。
http://www.youtube.com/watch?v=FwF4nCI-wDI
こちらも今は、鬼籍にお入りになったポール・モーリアの「雨の訪問者」
フランシス・レイのストリングスもいいが、こちらのアレンジもいい味出している。