どうも。当ブログのアクセス解析によれば、昨年末あたりから「【映画評】猟奇エロチカ肉だるま」がアクセス数ぶっちぎりのトップ独走中です。何やら複雑な心境です。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『ホームワーク』です。
イランの子どもたちはいつも多くの宿題に追われていると感じたキアロスタミ監督は、自らインタビュアーを務め、小学校の児童たちやその親に「宿題」について次々と質問を投げかける。インタビューを通してそれぞれの複雑な家庭事情が浮かび上がり、イランの教育制度が抱える問題点が明らかになっていく。キアロスタミ監督は子どもたちの多彩な表情や言葉を生き生きと捉えながら、社会への警鐘を鳴らす(映画.comより引用)。1989年製作のイラン映画で、1995年日本公開作品。監督はアッバス・キアロスタミで、出演はババク・アハマッドプール、ファルハング・アクハバン、モハンマド・レザ・ネマツァデェ。
アッバス・キアロスタミがイランを活動拠点としていた頃に監督したドキュメンタリー映画です。
キアロスタミ監督がインタビュアーとなり、基本的に関係者がカメラに対面して話す画で構成されています。これはキアロスタミ監督が影響を受けた小津安二郎が用いた構図です。
「宿題」についてのインタビューが、イランの教育制度の実態を明らかにしていきます。学校ではイスラム教の教義に基づく厳格な宗教教育で子供たちを抑圧し、時には体罰という名の暴力まで加えられます。これらの事実が関係者の口から断片的に語られます。
冒頭でキアロスタミ監督は本作を劇映画にするかドキュメンタリー映画にするか決めていないと言いました。もし劇映画にすれば、劇中の台詞内容についてキアロスタミ監督が責任を負います。当時のイラン映画には検閲制度があり、政府やイスラム教に批判的なメッセージがあれば、上映禁止になることもあります。
本作はドキュメンタリー映画であり、関係者へのインタビューを映しただけで、キアロスタミ監督からのメッセージではないという体裁を取っています。それによって映画でイランの体制批判をすることに成功しています(本当のところ、インタビュアーであるキアロスタミ監督は誘導尋問的な質問をしており、また編集によってイメージ操作もしているので、監督自身の意図は反映されています)。
本作は理不尽で傲慢な権力との戦い方を示唆する意欲作です。当時のキアロスタミ監督に比べたら、今の日本で業界内外からの圧力に屈して、撮りたいものが撮れないと言い訳をする映画人はヘタレにしか見えないのです。
★★★☆☆(2025年8月21日(木)インターネット配信動画で鑑賞)
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