【民話】屁たれあば | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

民話(他) 屁たれあば

 

 昔、あるどごに、夫(おど)ど妻(あば)どいだけど、てでぁ山さ行って、帰りに自分の家が見えるところまで来たら、家の前で和尚さんがよちゃよちゃ、よちゃよちゃ、とやっている、てでぁ不思議に思いながら近づいて見ると、たく鉢の和尚さんが門口(かどぐち)に立とうとすると、あばが家の中から門口の方に尻を向けて大きな屁をたれているので、和尚さんが立っておれないでいるのだ。

和尚さんが「ざいほうにせいくどく、むりょうだんばらあ」チリンチリンと門口でやれば、家の中から「ぶうーっ」とあばの屁の風が来るので、よちゃよちゃ、よちゃよちゃ、となるのだ。

また「ざいほうにせい」ぶうーっ、よちゃよちゃを繰返しておるのだった。

おどは和尚さんにあやまって、あばの無調法を許してもらったが、これまでも度々人様に迷惑をかけて来たのだし、あきれてしまって、あばに向って「あば、あば、こんなことではとてもおれのところにいてもらっては困る、出て行け」といった。

あばは「こんだから気をつけるからおいでけれ」と頼むが、おどはどうしても聞き入れないので、あばの方でも自分が悪いくせがあるので仕方がない、と別れることにして、おどに連れられて実家に行く途中、ある茶店で休んでいた。

そこへ殿様がお通りになって、やはり茶店に休んだ。

店の庭先には梨の木があって、たくさん実がなっていた、そこで殿様の家来たちが、その実をとって殿様に差し上げようと、石を投げるやら、木切れをぶっつけるなどしているが、何しろ高い木なので梨の木を落すことができない。

それを見ていた屁たれあばは「なあんだ、そぐなれ(能なし)ばり揃っている、おれだば屁で落せるどもなあ」と独り言をいった。それを聞きつけた家来たちは大変おこって、あばをどなりつけ唯でおかない権幕に、おどもあばもうろうろ、うろたえるばかり。

殿様は家来たちに「まあ待て、その者がほんとに屁で梨の実を落せるかどうかやらせて見よ、ほんとに落せるならほうびをやってもよいぞ」といわれた。

あばはつい独り言をいってしまって困ったことになったと思ったが、家来たちにおどかされてやって見る気になった。

梨の木の下に行って尻をまくり、天上に向けてぶうーっとやった、すると梨の実がばらばらと落ちて来た。

まさかと思っていた殿様も家来たちも、また見ていた人たちも、みなたまげてしまった。おどは恥しいやら何やらただおろおろするばかり。

殿様は約束だからと、ほうびにお金を下さった。そしていろいろと二人の身の上話など尋ねられ、今までのことを聞かれて、あばに、「このあとやたらに屁をたれるものではない、人々に迷惑にかけるようなことをするもんでないぞ」

おどには、「あばは改心してこのあとつつしむなら許してやって二人仲よく暮せ」といわれた。

二人は涙を流して殿様にお礼を申し上げ、家へ戻って仲よく暮したけど。   どっとはれ

 

【私なりの解説】

阿仁町伝承民話第一集にある萱草地区に伝わる民話です。屁だの尻だの下ネタですが、エロくない陽気な笑い話になっています。古の時代は大らかだったのでしょう。

 

 

 

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