どうも。「年寄りだからダメ」も「若いからイイ」も両極のエイジズム(年齢差別)です。年寄りでも有能な人も、若くても無能な人もいます。それは人間を見ようとしない怠惰の産物でしかありません。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『Broken Rage』です。
男たちの欲望渦巻く裏社会で、殺し屋としての並外れた能力を武器に暗躍する男・ねずみ。ある日、殺人容疑で警察に捕まった彼は罪を見逃してもらう代わりに、覆面捜査官として麻薬組織に潜入するよう命じられる(映画.comより引用)。2025年配信作品。監督は北野武で、出演はビートたけし、浅野忠信、大森南朋、仁科貴、宇野祥平、國本鐘建、馬場園梓、長谷川雅紀、矢野聖人、佳久創、前田志良、秋山準、鈴木もぐら、劇団ひとり、白竜、中村獅童。
北野武監督の実験的コメディー映画です。アマゾンプライムビデオ限定で配信されています。
前半部分はシリアスな潜入捜査物で、それを前フリにする後半部分はセルフパロディーになる二部構成です。前半部分は『アウトレイジ』以後の北野映画的な演出です。同じ暴力映画でも『ソナチネ』の頃のような先鋭さはなく、比較的ベタな演出です。後半部分の前フリだから、観客の理解を早めるためでしょう。
その前半部分を踏まえた後半部分が笑えません。いわゆる「緊張と緩和」理論から、笑いを生むためにはフリとボケに落差が必要であるにもかかわらず、前半部分をベタにしたので落差が小さいのです。前半部分を『ソナチネ』レベルで緊張感ある尖ったものにすれば、落差は大きくなったのでしょうけど。
後半部分では俳優もお笑い芸人も笑わせようとしますが、あまり功を奏していません。浅野忠信も大森南朋も中村獅童も笑いを取りに行く演技をしたところで意外性がありません。かつての大晦日名物「笑ってはいけない」シリーズで、大物俳優が笑いを取りに行くことに慣らされてしまったのかもしれません。
その中で面白かったのは白竜と劇団ひとりです。白竜は自分という素材で勝負する不器用なタイプなので、笑いを取りに行こうとするあざとさが出ません。白竜が他の出演者のボケで笑ってしまうのも素に見えてしまいます。また椅子取りゲームの司会者役で突然登場する劇団ひとりは、前後の文脈から浮いた状態でハイテンション演技を見せます。あってもなくてもいい役をハイテンションで演じれば演じるほど狂気を漂わせます。すなわち素に見える白竜と、やりすぎな劇団ひとりという両極端な過剰でなければ視聴者に刺さってきません。
本作は笑いの追求として『みんな~やってるか!』『監督・ばんざい!』に、二部構成として『TAKESHIS'』に近いものがあります。しかし焼直し感が否めず、前の方が良かったという感想です。もし本作がそれらの作品と同じ2時間近い上映時間であれば、苦痛の度合いは増したでしょう。66分という短い上映時間のおかげで傷は浅くて済みました。
結局明らかになったことは、本作のエグゼクティブプロデューサーの北野恵美子(おそらく北野監督の再婚相手)より、『アウトレイジ 最終章』まで北野映画をプロデュースしてきた元オフィス北野社長の森昌行の方が有能であるということなのです。
★★☆☆☆(2025年3月13日(木)インターネット配信動画で鑑賞)

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