どうも。トランプ政権が他国に対して高い関税をかけまくれば、アメリカ以外の国は主たる取引先を中国に乗り換えるかもしれません。中国に対抗するつもりが、逆に中国を利する結果になるのはアメリカの悲劇であり喜劇でもあります。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『恐るべき遺産 裸の影』です。
バレー部のレギュラーとして活躍するのりこは、明るい性格の少女だった。しかし誕生日に両親から、本当の母親の遺品である指輪をプレゼントされる。実はのりこの父親は広島の原爆で即死、母親は被爆し、のりこを出産するとすぐ死んでしまっていた。のりこは戸惑いながらも、義理の両親とともに前向きに生きようとするが、これまで経験したことのないめまいに襲われる……(キネマ旬報WEBより引用)。1964年公開作品。監督は若松孝二で、出演は美田芳江、細川直也、明日香実、三浦光子、花ノ木寿、寺島幹男。
ピンク映画の巨匠である若松孝二監督の初期作品でありながら、ピンク映画ではなく、一般映画の社会派ドラマです。長らく所在不明であったフィルムが発見され、デジタル修復されました。それでも劣化は酷いものですが。
『黒い雨』に通じるストーリーで、広島の原爆被爆者問題について真面目に取り組んでいます。それなのにバレー部合宿の入浴シーンが児童福祉法に抵触することで話題になってしまいました。若松がピンク映画監督だから、色眼鏡で見られたのでしょうか。
勝ち目の無くなった戦争を止められず、その結果の原爆投下によって多くの被爆者を生み出しました。その責任は戦争に関わった大人たちにあります。しかし、その苦しみや悲しみを一人の女子高生のりこが背負ってしまいます。彼女一人が背負うには重過ぎる悲劇です。
内ゲバ殺人を犯した連合赤軍の若者たちが世間から叩かれた時、「それでも俺は若い者を信じる」と擁護したのが若松監督です。本作でも若者であるのりこの側に寄り添う若松監督の立場は、ずっとぶれることがなかったのです。
★★★☆☆(2024年12月30日(月)インターネット配信動画で鑑賞)

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