どうも。すべての外国人観光客を好きになれとは言いませんが、「日本から出ていけ!」と排外主義をSNSで叫んで「いいね!」数を稼ぐバカより、観光客の財布からどれほど多く金を吐き出させてやろうかと知恵を絞ってサービスを工夫する商売人の方が有能で金儲け上手いですよね。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『生きてゐる孫六』です。
かつて武田信玄軍と徳川家康軍が激突した三方ヶ原の土地を所有する名家・小名木家に、村の若者たちが食糧増産のための開墾を求めてきた。しかしこの地には祟りがあるから決して鍬を入れてはならないという先祖代々の掟があり、一家は困惑。そんな折、小名木家の家宝でもある名刀“関の孫六”を譲ってほしいと、ひとりの軍医がやってきた……(松竹映画データベースより引用)。1943年公開作品。監督は木下恵介で、出演は上原謙、原保美、葛木文子、吉川満子、山鳩くるみ、細川俊夫、河村黎吉、宮子徳三郎、河野敏子、坂本武、岡村文子。
木下恵介が戦時中に監督した群像喜劇です。戦時中でありながら、三方ヶ原の合戦シーンは大掛かりで贅沢な作りです。
戦時中の映画なので国威発揚を目的としているのは明らかです。軍隊の訓練のシーンで上原謙が演じる軍人は如何にもそれっぽい訓示を垂れます。そうしないと当時の検閲を通らなかったからでしょう。
しかし、その軍人の自慢の名刀が偽物であったことは、偉ぶっている軍人を馬鹿にしているようでもあります。また小名木家の長男(原保美)が迷信や因習に囚われているのは、非科学的な精神論を重んじる軍部の愚かさに対する皮肉のようでもあります。
戦後に『大曽根家の朝』で軍部批判をした木下監督が、戦時中に戦争賛成であったはずがありません。検閲制度を潜り抜けるように軍部批判を巧妙に忍ばせた、木下監督の面従腹背な姿勢が見られる本作なのです。
★★★☆☆(2024年12月26日(木)インターネット配信動画で鑑賞)
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