【映画評】タレンタイム~優しい歌 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。昨年の猛暑による米不足で米農家に「格安で米を売って欲しい」と取引を持ちかける消費者がいるそうです。日本の消費者はバカになったのですか。そこは「流通価格より高く買うから売って欲しい」でしょう。バカのくせに百姓をバカにするな!

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『タレンタイム~優しい歌』です。

 

音楽コンクール「タレンタイム」(才能の時間=タレントタイム)が開催される高校で、ピアノの上手な女子学生ムルーは、耳の聞こえないマヘシュと恋に落ち、二胡を演奏する優等生カーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転入生ハフィズを嫌っていた(映画.comより引用)。2009年製作のマレーシア映画で、2017年日本劇場公開作品。監督はヤスミン・アフマドで、出演はパメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール、モハマド・シャフィー・ナスウィップ、ハワード・ホン・カーホウ、アディバ・ヌール。

 

マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの遺作となった作品です。アフマド監督は長編映画6本のみという寡作の人です。

 

マレーシアは多民族国家です。それを忠実に反映して、出演者はマレー系、インド系、白人、中華系であり、使用言語はマレー語、タミル語、英語、広東語です。日本語字幕で観れば、不便さはありません。もし吹替えで観れば、使用言語の違いが伝わらず、損をするでしょう。

 

学校の音楽コンクールがストーリーの軸にあるのは『リンダリンダリンダ』に近いものがあります。両作品ともオフビートな雰囲気がある点も似ています。

 

しかし、『リンダリンダリンダ』が青春という一つのテーマを扱うのに対し、本作は恋愛、障害者、難病、民族差別、宗教対立など複数のテーマを扱うという違いがあります。凡百の作品では複数のテーマを扱うとストーリーが整理できなかったり、各々のテーマで感動の押し売りをしてウンザリしたりという散々な出来になることがありがちです。ところが本作では、各々のテーマがバランス良く調整され、押しつけがましい印象はありません。このバランスの良さが優しさです。

 

また登場人物が自分の心情を声高に主張することなく、BGMの歌詞でサラッと表現するのも優しさです。このような優しさは多民族国家であるマレーシアで異民族が共生するために醸成された知恵でしょう。本作に中華系差別をする人物がいても、微笑みながら「差別者ってクソよね♡」とばかりに嫌味を言います。声高に糾弾することはしないけれども、しっかりと釘を刺しておく優しさです。

 

こうした優しさは、過去に民族間で幾度も差別や衝突が繰り返されてきた歴史があったからです。日本は島国なので異民族が対立する歴史が少なく、国際交流が盛んである現在でも少数派の異民族に優しくない国に堕しています。少数派に優しくないのは偽物の強さです。本物の強さとは他者に優しいことだと本作のラストは静かに伝えてくれるのです。

 

★★★★★(2024年7月20日(土)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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