【民話】さん子と猿 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

民話(動物) さん子と猿

 

 むかしある所に妻に先き立たれ、三人の娘と暮している木こりがありました。

ある日人里離れた山奥で木を切っていると、大きな雄の猿が出て来ました。

そして、「てで、てで、んがどごの娘コ俺の嫁にけれ」というのでした。木こりがびっくりして、「とんでもない、めごい娘だば猿にけれねゃ」とことわると、猿は白いきばをむいて怒りました。

「そせば、んが(お前)ば、こちょがして(くすぐる)殺すぞ」といって、長い毛むじゃらの手を出して木こりのそばへ来てくすぐる真似をするのです。

木こりは恐ろしくなって後ずさりしました。猿にくすぐられて涙を流し、小便をたれて死かと思うと、おっかなくなりました。

「こちょがすのだばごめんしてけれ、娘をけるがら」と猿と約束して家に帰りました。

娘たちは元気のない父親を見て三人共心配して、「てで、どごがえぐねゃ(悪い)が」といいますと、木こりは猿との約束をすっかり話して、一番目の娘に頼みました。「あねコんが、えてけれ」と、すると、あね娘は「だぁれゃ猿さえぐて」とことわりました。

「したら、んばコ、んがどだべゃ」と二番目のんばコに頼みました。すると、んばコも「おれだばえらねゃでゃ」といいます。仕方なく今度は、一番若い三番目のさん子に頼みました。さん子は姉妹中で一番りこう者で優しい娘でした。

「てで、おれ猿さ嫁にえぐんて心配しな」といいました。木こりは涙をのんで、さん子を山奥の雄猿の所へ連れて行きました。

そして「猿、猿出てこい、さん子ば連れてきたんて」と呼ぶと、猿は大喜びで大きな手で胸をたたくて現われました。

さん子は「てで、何も心配するな」、小さい声でささやきましたが、木こりはもう情なくなって、すごすごと家へ帰って行きました。

てでの後姿を見送ってから、猿はさん子にいいました。「さん子、おれ、んがの好きなものなんでもとてける」と、いいました。

さん子は可愛いい声で「したらしゃ、あの桜の枝コほし」というと、猿は喜んで桜の木に登りました。その桜の木は大木で川のそばにあったのです。猿はするすると登って行くと、「これなぁ」と枝に手をかけると、さん子は「もっと上の枝コやー」とこたえました。又猿はするすると登り桜の枝に手をかけて「これなぁー」と、さん子にいいました。さん子は「それでねゃぐもっと上の方のきれいだ枝コやー」というと、猿は又上に登ってきれいに咲いている枝に手をかけ「これだべー」とさけんでいます。

するとさん子は、にっこり笑って「それでねゃぐゃーもっともっと上のしんこのこごった枝コやー」と、上に向いていいました。

猿は又するすると上へ登りてっぺんの枝のこごった花に手をかけて折ろうとするはずみに、猿の全身の重身で、枝はがりがりっと音を立ててさけ、猿は桜の枝を持ったまま、ざぶーんと川に落ちて水に流され、死んでしまったということです。

そして親孝行娘のさん子は無事に家へ帰りましたとさ。

 

【私なりの解説】

阿仁町伝承民話第一集にある三枚地区に伝わる民話です。猿の「こちょがして殺す」というのは怖いです。最凶の拷問かもしれません。

 

 

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