【映画評】殺し屋人別帳 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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どうも。この国で一番偉いのは日々地道に働き、自他の生活を支えている一般市民(主権者)です。議員は偉くありません。彼らはパシリ(代理人)です。大臣は偉くありません。彼らは下僕(奉仕者)です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『殺し屋人別帳』です。

 

黒岩組と竜神一家が対立する長崎に流れ者の真一が訪れ、抗争に加わっていく。1970年公開作品。監督は石井輝男で、出演は渡瀬恒彦、伊吹吾郎、吉田輝雄、賀川雪絵、太田ナオミ、小川ローザ、荒木一郎、由利徹、田崎潤、小池朝雄、中谷一郎、嵐寛寿郎、佐藤允。

 

渡瀬恒彦の主演デビュー作です。監督を石井輝男にしたのは期待の表れでしょうか。伊吹吾郎、吉田輝雄、由利徹、小池朝雄、中谷一郎、嵐寛寿郎という石井作品出演経験者を揃え、監督が仕事をしやすい配慮までなされています。

 

作品のプロットは『網走番外地』シリーズの一作という感じです。長崎が舞台なのは『網走番外地 望郷編』ですが、他のシリーズ作の要素も取り入れているようです。何しろ主人公の名前が同じ「真一」であり、嵐が演じる役はシリーズそのままですから、無関係というのはあり得ません。

 

『網走番外地』シリーズ作のような本作から、渡瀬を高倉健レベルのスター俳優にしたかった東映の思惑が見えてきます。後の渡瀬は素晴らしい俳優に成長しましたが、高倉ほどの国民的俳優にはなれませんでした。

 

そもそも石井監督が『網走番外地』シリーズの頃から変化したので、高倉と同じ道を歩むのは無理でした。異常性愛路線を経た石井監督は、元ヤクザ(中谷一郎)がカタギになったことを示すため、背中の刺青をライターで炙らせるシーンを必要以上に長く撮る「責め」の演出に力を注いでいます。

 

変態度と狂気がパワーアップした石井演出は当時のカルトなファンを喜ばせたでしょうが、一般層にはウケが悪かったであろうことは想像できるのです。

 

★★★☆☆(2022年11月15日(火)DVD鑑賞)

 

 

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