どうも。M-1グランプリのワイルドカード枠で金属バットが復活しました。史上初となるワイルドカード枠からの決勝進出を果たして欲しいのです。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『現代好色伝 テロルの季節』です。
街では安保反対を叫ぶデモ隊と機動隊の激しい攻防が続く。とある団地で男が女2人と共同生活を送っている。男の居所を掴んだ公安警察は盗聴器を仕掛け監視する。しかし、男は寝て起きて、食べ、セックスするだけの怠惰な毎日を過ごすばかりでなんら行動を起こさない。刻々と佐藤栄作総理大臣が訪米する日が近づいてくる。男は政治活動を止めたのか、このまま動かないのか…(DVDジャケット説明より引用)。1969年公開作品。監督は若松孝二で、出演は吉沢健、江島裕子、佐原智美、須磨ひとみ、春田浩将、今泉洋、神田満。
若松孝二監督のピンク映画です。ピンク映画なのでエロはありますが、現代の基準によれば、それほど過激ではありません。若松映画らしく、エロよりも政治性や社会性が強く伝わってきます。
本作の大半では、元活動家のダラダラとした日常生活が描かれます。特殊な職業人の緩い日常生活を描く点で、鈴木清順監督の『殺しの烙印』に近いものがあります。
そのユルユル日常生活を公安警察の二人が監視します。公安警察の二人は正義感が強いタイプではなく、仕事と割り切って監視を続けます。緩い雰囲気であっても、市民の日常生活を監視する国家権力であることに変わりはありません。
元活動家と女二人の性交が日米の国旗とオーバーラップするシーンが象徴するように、性という最も深層的なプライベートにまで政治は及びます。どれほど政治に無関心を気取っても、市民生活を営む以上、政治と無関係ではいられないのです。
もう政治活動をする気がないと思われた元活動家は、最後にテロを決行します。この展開は放蕩三昧で世間を欺いておきながら、最後に吉良家討ち入りを決行した大石内蔵助に重なるものがあります。それを意図して脚本を書き、演出をしたならば、本作はピンク映画と侮れないほど知的であるのです。
★★☆☆☆(2022年11月7日(月)DVD鑑賞)
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