どうも。一人前の社会人にとって必要なのは、相互の意見を譲歩し合って最良の結論に至らせる能力です。一方的に屁理屈をこねて論破する能力は不要どころか害悪です。論破王とやらの言葉遊びをカッコいいと思うのは幼稚なバカです。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『その夜の妻』です。
子供の治療費のために犯罪に走った男と追う刑事、そして夫をかくまう妻と病床の娘の関係がサスペンス・タッチで描かれる(松竹・映画作品データベースより引用)。1930年公開作品。監督は小津安二郎で、出演は岡田時彦、八雲恵美子、市村美津子、山本冬郷、斎藤達雄。
小津安二郎が戦前に監督した白黒サイレント映画です。オスカー・シスゴールの小説『九時から九時まで』を原作にしています。外国小説を翻案して日本を舞台にしたということです。
戦前の小津はアメリカ映画への憧れが強かったことを知ることができます。洋室のセットで洋装の出演者が演じています(八雲恵美子が演じる妻は和装)。しかも男性出演者の顔は濃いめです。それでだけでなく、セットの壁に外国映画のポスターまで貼っています。これは不自然であるような気がしますけど。
夫(岡田時彦)の犯行シーンはフィルムノワールの雰囲気があり、刑事(山本冬郷)が夫を逮捕するまでのシーンは舞台劇のようです。小津は多彩なジャンルに対応できる職人監督でもあったのです。
そして、その小津が戦後になると日本的な庶民や家族の生活を描き、比較的狭いジャンルを追求していきました。それほど戦争が小津の映画人生に与えた影響は大きかったのです。
★★★☆☆(2022年9月3日(土)インターネット配信動画で鑑賞)
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