【映画評】果しなき欲望 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。まとめサイトに頼ったり、動画を倍速で観たりするような堪え性がない「早漏文化」には抗っていこうと思っています。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『果しなき欲望』です。

 

終戦日に軍医が防空壕に大量のモルヒネを埋めた。時価6千万円にもなるモルヒネを掘り出すため、5人の男女が集まる。しかしかつて防空壕だった場所には肉屋が建っていた。5人はそこから20メートル先の空き家を借り受け、穴を掘り進めることに。裏切りと駆け引きが渦巻く中、商店街があと三日で取り壊されることが判明。穴はついに肉屋の真下まで掘り進められるが、内紛が表面化し、5人のメンバーが次々と命を落としていった(Yahoo!映画より引用)。1958年公開作品。監督は今村昌平で、出演は長門裕之、中原早苗、渡辺美佐子、西村晃、小沢昭一、加藤武、芦田伸介、殿山泰司、高品格。

 

今村昌平の監督第3作です。製作当時、今村監督は32歳であり、映画監督としては遅咲きの部類に入ります。

 

モルヒネを掘り出そうと企む5人(殿山泰司、渡辺美佐子、西村晃、加藤武、小沢昭一)のキャラクターが立っています。演じる5人の演技力が高いからこそ、為せる業です。キャラクターが立っているからと言って、この5人で戦隊特撮物をやらせても、内部分裂して台無しになるでしょう。

 

作品の舞台となる商店街は猥雑でエネルギッシュな土地柄です。これは今村監督の戦後闇市での体験に基づく感覚であり、後の監督作『豚と軍艦』でも感じられます。

 

地下に埋蔵された財物を掘り出して奪うというアイデアは、映画やテレビドラマで珍しくはありません。それらのうち、本作ほど犯罪者たちがカッコ悪く描かれたものはないでしょう。スマートさ皆無で欲の皮が突っ張ったあまり、裏切り合って自滅していきます。

 

本作のメインテーマは人間の欲望であり、これは他の今村作品にも通じます。犯罪者5人以外の登場人物も欲望に突き動かされて生きています。主人公である悟(長門裕之)がリュウ子(中原早苗)に抱く恋愛感情もまた欲望の一種です。

 

人間の欲望に善悪の基準を用いることなく、ありのままの人間を観察するのが今村映画であり、そのスタイルは既に本作で確立しているのです。

 

★★★★☆(2022年9月1日(木)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

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