【映画評】シェイプ・オブ・ウォーター | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。安倍晋三の国葬は電通の提案だそうです。贔屓にしていた業者に屍を骨までしゃぶられる安倍の気持ちは如何に(死んでいるから何も感じないでしょうけど)。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『シェイプ・オブ・ウォーター』です。

 

1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る(映画.comより引用)。2018年日本公開作品。監督はギレルモ・デル・トロで、出演はサリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサー。

 

ギレルモ・デル・トロ監督のファンタジー映画です。子供向けの明るいファンタジーではなく、毒気のあるダークなファンタジーです。

 

主人公のイライザ役を撮影当時40代のサリー・ホーキンスが演じていることも、子供向けファンタジーとは異質です。イライザは唖者という設定なので、ホーキンスは表情と手話のみで表現します。そして、その演技力の高さゆえに達成しています。

 

イライザの外見は、デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』の主人公である少女オフィーリアに近く、彼女が成熟して大人になったようです。オフィーリアがファシスト政権下の過酷な現実から逃避するため、自分の中の幻想世界に浸ったように、イライザも自分の中の世界を持っています。その世界でのイライザは言葉を発することができ、ミュージカルを歌い踊ります。そのシーンの演出には喜びと悲しみが入り混じった美しさがあります。

 

不思議な生き物=半魚人のビジュアルはグロテスクでありながら、可愛らしさもあります。このセンスはデル・トロ監督ならではのものです。半魚人のスーツアクターであるダグ・ジョーンズはデル・トロ作品の常連俳優であり、『ヘルボーイ』と『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』で水棲人間のエイプ役を演じていました。同二作での演技が本作の予行演習であるかのようにも思われます。

 

1962年という本作の時代設定は、古き良きアメリカのノスタルジーをくすぐると共に、様々な差別が公然と行われていた負の歴史を見せていきます。女性差別、黒人差別、同性愛者差別が恥ずべきこととされていなかったアメリカ社会です。

 

イライザの同居人であるジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)は黒人差別撤廃を求める公民権運動に冷笑的な態度をとっていましたが、自分が同性愛者差別の当事者となることによって改心します。半魚人を生体解剖しようとするストリックランド(マイケル・シャノン)は女性差別も黒人差別も平気で行い、無自覚的・無意識的な差別の愚かさを露わにします。

 

そうした愚かな差別を超克するのがイライザと半魚人の種族を越えた愛であるという映画を、メキシコ人差別を公然と行ったトランプ政権下でメキシコ出身のデル・トロ監督が作って称賛されたという事実は、まだ現実世界が正気であるという希望を感じさせるのです。

 

★★★★★(2022年7月8日(金)DVD鑑賞)

 

 

 

 
 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)