【映画評】麦の穂をゆらす風 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。会計検査院が国土交通省職員の書き換えや二重計上について把握していながら、国会への報告書で指摘しなかった理由は「国交省が書き換えを続けた経緯を行間に書き込んだつもりだ」です。行間を読めとでも言うのですか。会計検査院は税金を使って小説でも書いているのでしょうか。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『麦の穂をゆらす風』です。

 

英国による長年の支配から独立を求める声が出始めた1920年アイルランド。医者を志すデミアンと兄テディは武器を手に取り独立戦争に出征する。やがて勝利を収め、講和条約を締結させたアイルランド軍だったが、その条約の内容を巡って、今度は国内で争いが起こる……(映画.comより引用)。2006年日本公開作品。監督はケン・ローチで、出演はキリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー、リアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド。

 

英国人のケン・ローチがアイルランド側に立って監督した作品です。本作と同じアイルランド独立戦争を題材にした映画には、ニール・ジョーダン監督でリーアム・ニーソン主演の『マイケル・コリンズ』があります。ジョーダンはアイルランド出身で、ニーソンは北アイルランド出身です。

 

庶民の側に立って映画を撮り続けているローチ監督なので、アイルランド独立戦争の英雄であるマイケル・コリンズを主人公にすることはしません。アイルランド独立のために戦う一介の闘士であるデミアン(キリアン・マーフィー)が主人公です。

 

本作に登場する英国兵は、むかつくほど横暴に振る舞います。これは、医者を志していたデミアンが戦いに身を投じる決意をすることに説得力を持たせる効果があります。それだけでなく、ローチ監督が自国の歴史における恥部を受け入れる勇気を表明していることでもあります。自国の歴史の恥部から目を背け、修正して美化するのは狭量な小心者です。

 

作品全体は誇張の無いリアリズムを重視した演出で貫かれています。それはローチ監督がテレビのドキュメンタリー出身であることの影響でしょう。日本の監督では、テレビマンユニオン出身である是枝裕和の演出に近いものがあります。

 

デミアンや兄のテディ(ポードリック・ディレーニー)たちの奮闘によって、アイルランドは英国からの独立を勝ち取ります。しかし、北アイルランドの処遇などを巡ってアイルランド共和軍(IRA)で内部対立が起こり、デミアンとテディも対立していきます。

 

ローチ作品で描かれる庶民は、政治や社会のシステムによって人生を翻弄され、蹂躙される個人がほとんどです。この点で本作もまたローチの映画なのです。

 

★★★★☆(2021年12月3日(金)DVD鑑賞)

 

 

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