【映画評】水で書かれた物語 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。野党共闘路線(共産党の候補者取り下げ、社民党の合流)で立憲民主党の候補者が自民党の候補者を破った秋田2区の有権者である私から言わせれば、他の選挙区で野党の候補者が負けたのは野党共闘の不徹底が原因です。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『水で書かれた物語』です。

 

平凡なサラリーマンである松谷静雄は、美しい母との二人暮らし。病弱な父は入院がちで家を空けることが多い。母は町の権力者である橋本伝蔵と不倫関係にあるが、静雄は母を憎むことができない。静雄は伝蔵と母から、伝蔵の娘ゆみ子との結婚を勧められる。しかし静雄は、ゆみ子と自分が異母兄妹なのではないかと思い始めていた(Yahoo!映画より引用)。1965年公開作品。監督は吉田喜重で、出演は岡田茉莉子、浅丘ルリ子、弓恵子、入川保則、桑山正一、岸田森、山形勲。

 

吉田喜重が松竹を退社してからの監督第一作です。日活配給なので、当時の日活スター女優である浅丘ルリ子と、夫である吉田の退社と共に松竹との専属契約を解除した岡田茉莉子の共演が実現しています。

 

吉田監督は妻である岡田を美しく撮ることに強くこだわっています。松竹ヌーヴェルヴァーグで括られた同世代の大島渚は妻である小山明子を、篠田正浩は妻である岩下志麻を美しく撮りました。夫婦関係になくても山田洋次は倍賞千恵子を、小津安二郎は原節子を美しく撮ったことから、このこだわりは松竹の伝統なのかもしれません。

 

女優を美しく撮ることだけでなく、カットごとの構図へのこだわりも小津以来の松竹の伝統と言えます。構図がしっかりしているから、カメラを固定したカットを繋ぐことによって物語が流れていきます。カメラを固定したカット=写真を繋いで「生命」を与えるのは映画=活動写真の原点です。その原点に忠実な映画の作り方をしています。

 

その美しく撮られた画で不倫、性的虐待、マザコン、近親相姦というドロドロした人間関係が描かれています。しかし、画が美しいので不快感はありません。今時の映画やテレビドラマはドロドロした人間関係をリアルかつショッキングに描こうとして、ただ不快感を与えるだけの結果になることがあります。それは芸がありません。

 

石坂洋次郎の原作に沿っているか不明ですが、本作は水のイメージで貫かれています。映画はフィルムに光を当てスクリーンに映すという乾燥した仕組みになっています(ブルーレイやDVDで観る場合もそうです)。それに水のイメージを与えることで、あたかも湿り気を帯び、「生命」を与えられたようになります。こうした映画の作り方は芸があるのです。

 

★★★☆☆(2021年10月20日(水)DVD鑑賞)

 

 

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