【映画評】恋人たちは濡れた | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

どうも。国政選挙は指導者やリーダーを選ぶ制度ではありません。主権者である国民が自分の代わりに働ける有能な下僕を採用する制度です。それが分からなければ、国民主権がない独裁国家である中国や北朝鮮にでも移住してください。

 

それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『恋人たちは濡れた』です。

 

克は五年ぶりに故郷へ戻ってくる。海辺の映画館でフィルム運びの仕事に就くが、そこの女主人よしえとの情事にふける日々。街の人間たちは、五年前に街を出た「克」ではないのか?と疑問を抱くのだが、克は否定し続ける。同級生の光夫と洋子のセックスを見てしまった克に、光夫は幸子を紹介する。光夫たちは克の母親と対面させようとまでするのだが、克は母ではないと突き返す。光夫、洋子と奇妙な三角関係に陥っていく克の過去にあった事件とは…(Yahoo!映画より引用)。1973年公開の日活ロマンポルノ作品。監督は神代辰巳で、出演は大江徹、中川梨絵、絵沢萠子、薊千露、堀弘一、清水国雄、高橋明。

 

主人公の克(大江徹)は映画館で働いています。そこは1970年代の映画館で、その廃れ具合は斜陽産業と呼ばれた当時の映画業界を象徴しているかのようです。それでも本作の作り手は恥じることなく、その映画館を映しています。どの作品でも映画について描く時、映画人は活き活きとするものです。

 

克が情事にふける映画館の女主人よしえ役を絵沢萠子が演じています。野暮ったくて庶民的なおばちゃんを演じている印象が多い絵沢が、本作では色っぽくて品のあるマダムを演じています。これは意外です。

 

その絵沢のキャラクターだけでなく、長回し、引きの画、高揚感のないアンニュイな演出、唐突なラストによって、本作は日本映画的ではないヨーロッパ映画的、特にフランス映画的な要素のある作品になっています。

 

しかし、日本の田舎町の風景、BGMで流れる民謡や歌謡曲によって、本作は日本映画になっています。ヌーヴェル・ヴァーグ作品に代表されるヨーロッパ映画を高く評価する風潮に対し、その技法や雰囲気を模倣しながら日本映画として成立させた本作は、日本映画界からの静かな反論であるかのようです。そして、それがポルノ映画という日陰者的なジャンルから発せられたのが面白いのです。

 

★★★☆☆(2021年9月24日(金)インターネット配信動画で鑑賞)

 

 

にほんブログ村 映画評論・レビューに参加しています(よろしければクリックを!)